4月23日-3
間に合いました。
結局飛び起きた後はあわただしく朝食を取らされて福島の方に飛んでいる。
隣にはなぜかリーパーが飛んでいる。
裏切る心配がないとのことでもう手錠のような高速具はつけていない。
口元にもかすかな笑みを浮かべており、元敵だったとは思えないほど落ち着いている。
淡雪は現地入りせず、関東と東北の中間あたりで通信の中継と予備の戦力らしい。
「では現地に向かってもらっている間に大まかな配置の説明にうつりましょう」
と、穂高さんの落ち着いた声が聞こえる。
視界の端には大まかな地図が映る。
日本地図だ。
「さて今それぞれのメンバーの位置はこうです」
といって地図にそれぞれのアイコンが映る。
俺と思われる銀色の鎧とリーパーらしき死神が北上中。
そしてずっと南に輸送機に青い髪の天使と階級章がついた帽子をかぶった女性とサングラスをかけたピースマークが乗っており。
東京にハリセンボンがある。
それぞれなかなかディフォルメされておりなかなかかわいい。
「……アイコンに突っ込んでいいか?」
すると穂高さんが、少しだけ困惑しながら
「いやぁ、名前の頭文字でやっていたら味気ないので手すきの物に相談したら、あっという間にこれを書き上げまして、針山さんの方は苗字しか伝えてないのでこうなりました」
「人材厚いですね」
なかばあきれ気味に言うと、困った様な溜息一つで流された。
「本人は私か伝えておきます」
さて。
と前置きをして画面内のアイコンが移動していく。
「東日本大震災で私がポイントだと思う事柄は大まかに六つ、福島第一原発のメルトダウン、地震そのもの、そして津波、関東一円で発生した混乱、東北地方一円での通信網の途絶、最後に忘れられた大地震です」
「忘れられた大地震?」
ええ。
と穂高さんはうなずいて。
「長野県栄村この名前に覚えは?」
思い出してみるがほとんど記憶にない名前だ。
「全くありません」
「震度六強の揺れが発生した大地震ですが、これは知っている人が少数派ともいえるほどです」
ここで一つ呼吸を挟み。
「というのも発生した日付のせいです、三月十二日、運が悪いことに東日本大震災の翌日に日本の中心近くの大震災、報道も支援も後手に回り続けた大地震それは今になってもほとんど周知されていません、だから忘れられた大地震」
おもい沈黙が流れる。
「でさー、そこに誰送るの?」
と青木さんのいつも通りの声が割り込まれる。
「……俺は無理だ、東京が職場だぞ」
と、今までほとんど言葉を発していなかった針山さんが口に出す。
「そもそも来るのが化け物の可能性があるんだろ? その場所が六か所に対してこっちは三人だ、そもそもどこかを捨てる必要があるだろうな」
「正確には違いますが、とにかく人の配置は最終的にはこうです」
と言ってアイコンが移動した。
すると俺とリーパーが福島の海岸――原発。
淡雪が変わらず中間地点。
残りの三人が関東というかなり偏った配置になる。
「えっと、栄村はどうするのですか?」
さっきの話では大切な要素のように語っていたのにまさか無視するとは思わなかったので聞き返す。
「ええっと、実はすでに避難を開始素ています」
「え?」
意外過ぎる話に妙な声が出た。
「起きる可能性がありますし、さっきほどのように化け物に対処できる人が割けないので被害を最小限にするため避難を開始してもらっています、正直そこまで大きな集落ではないので少し前から頻発している異常現象を理由に避難を開始してもらってます」
「よく通ったね、そんな無茶な話」
と、穂高さんは明らかに不穏な空気を醸し出して。
「通信障害って変な事起きるんですね」
と妙なこと言いだした。
「ええっと――」
ふと気になって淡雪に声をかける。
「淡雪……もしかして」
「すいません」
その言葉で察した。
おそらく昨日の段階で手を回していたのだろう。
「とにかくこの配置で対処し始めます」
そしてそれぞれの目的と役割について穂高さんから説明が始まった。
明日も頑張ります。




