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4月23日-1

間に合いました。

 アラームが響き日をまたいだことが伝えられる。


 やり玉に挙げられるはずのリーパーは全員の視線などどこ吹く風とばかりに笑みを浮かべている。

 それどころかこちらにひらひらと手を振るくらいの余裕がある。


「とりあえず逮捕できた状況から話すねー」


 青木さんはそんな緩い口調で話し始める。


「といっても穂高二佐に言われた国内線を張っていたらビンゴだったんだよね」


 言いつつ穂高さんに視線を向ける。


「でも()()()()()()()()


 そういって一つの報告書を机の上に投げた。


「国内線をハイジャックされた、要求もなかったから自動操縦装置の誤作動ってことでけりをつけるけど、リーダー格が囮になるなんて思い切ったことするねぇ」


「いやぁ、それほどでも」


 照れているが絶対に褒めてないと思う。

 そこでクスクスと笑い始める。


「さすがに冗談ですよ」


「……」


 全員で緊張感を一切持っていないリーパーに怪訝な視線を送るが、青木さんが首を振って。


「でさ、穂高二佐はなんでドンピシャで当てれたのさ?」


「昭和に起きた事件で今日起こすであろう予想しただけです」


 その事件は――

 と少しだけもったいぶって。


()()()()()()()()()()()


「……」


 青木さんはいつにない真剣な表情している。


「まぁね、昭和を考えるなら確かに選ばれるだろうね、でもなんで今日それが行われるってわかったの?」


「ノスタルジストが起こしたと思われる事件を調べたら、今の日付足す一を二倍にした年かもしくはその前の年の可能性が高いからですね、はっきりとどの事件か言われたのは多くないですが、立て続けに起きたのが大きいですね、十六日に昭和三十四年の伊勢湾台風、十七日に昭和三十五年のチリ地震、十八日にサンパチ豪雪、そしてよど号ハイジャック事件が昭和四十五年、つまり二十二日に起きれば予想が正しいことになります」


 そこでリーパーが手を叩く。


「その通りです、大変だったんですよ太平洋戦争時とか大事件と同時にメリカ軍に働きかけて海上封鎖の情報規制掛けたり」


「その時は――」


 阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件による情報の氾濫。

 とどめにネット上にはびこっていた悪意あるAIとの攻防。


「大変でしたけど、起きた事件が事件でしたからナードとディープスロートが頑張って大きな騒ぎにならなかったのは幸いですね」


 その言葉を聞いてぞっとする。

 一体どれほどの印を見逃してきたのか。


 そこで穂高さんがリーパーを見据えながら。


「本題に入るわ、今のあなたは嘘がつけないのよね?」


「ええ、そのような反応があったら淡雪ちゃんが私を機能停止にもっていくでしょうし、東日本大震災への対処に手を貸したいのは本当ですよ」


 淡雪ははっきりとうなずいた。

 その言葉は信用してもいいらしい。


「あなたたちの目的は?」


()()()()()()()()()()()()


 はっきりと言い切った。

 その言葉にも淡雪はうなずく。


「方法は?」


「知っていると思いますが、クリーチャーはかかわる相手を役にはめ込む性質があります、それの対象を()()()()()()()


 淡雪はかすかにうなずき。

 つぶやいた。


「可能かもしれないですが――それはコップでプールに水を張るようなものです、どうやって……」


「エネルギーの問題でしかないのなら私たちは持っているので、莫大なエネルギー源を」


 あ。

 と淡雪は声を上げ。


「時間軸がめちゃくちゃになった存在が結晶化したアレですか?」


「そうよ、あれなら莫大なエネルギーを担保できる」


 その言葉に対して疑問をぶつける。


「じゃあなんで今すぐにでも行わない?」


「規模が規模よ、手順が必要なの、それは少なく見積もっても四月いっぱいかかるわね、過去の事件を日ごとに一つずつこなさなきゃいけないからまだまだかかります」


 ということはそれまでに壊滅させれば問題ないということか。

 と思い淡雪に確認を取る。


「今までで嘘の類はついている?」


「いいえ、()()()()()()()


 起こしたいけど、今回協力を申し出たのは日本を滅ぼすつもりがないからということだろうか?

 確かにメルトダウンが起きて放射線などがばらまかれたら何人死ぬか見当もつかないほど死ぬ。


 続いて穂高さんは――


「他のメンバーへの命令は? できるんでしょ?」


「やめた方がベターね、私はあくまで現地の指揮役、ノスタルジストによってこの時代に送り込まれた理由を否定するような指揮を出したらそれこそ制御不能になるわね、そうしたら核ミサイルサイロを占拠いきなり全弾発射も否定できないわ、そして今なら以前に私が出した指示に従っている最中だからかなり細かい事まで教えられますよ」


 ただ――

 とつなげる。


「私が捕まったことは知っているからセーフハウスは引き払い済みで、その次どこに潜伏するかは私にもわからないのですよね、潜伏することをあきらめたかもしれませんし」


「なるほど、その内容は後ほど詳しく聞きます」


 その後穂高さんは少しだけ考えて、淡雪に問いかける。


「いまハッキングをかけて自由を奪っているけど、自由を奪っただけなの?」


「違います、ええとですね、パーソナリティーを形作る核はお手上げですが、生命維持などを含む行動のすべては私が自由にできます」


 そこで一度言葉を区切り。


「裏切ったらそこに居るだけの存在になります、思考も行動も何もできなくなるでしょう」


「それの解除は可能なの?」


 すこしだけ淡雪は考えて。


「ひたとつだけあります、核の周りの情報群――ペルソナとでも言っておきましょうか? 今のペルソナを破棄して、新しいものをコピーして持って来れば解除できるでしょう」


「……ということは仲間と接触させたらだめってことね」


 その言葉に淡雪は否定する。


「不可能です、リーパーは指揮官ですから戦闘員用のペルソナをコピーしても機能不全を起こすだけです」


 そこで二本の指を立てる。


「そのペルソナを持っているのはたった二人、ハイエンドタイプの私か――“()()()()()()()()”だけです」


 そこで困ったようにリーパーは頬に手を当てる。


「そうなのよね、圧倒的な性能差がある淡雪ちゃんからコピーなんてできないし、“ディープスロート”の脳は機能停止しているでしょ?」


「ということです」


 二つとも手詰まりなのでどうやっても裏切れない。

 それがリーパーの現状らしい。


「それなら良かった」


 と穂高さんは胸をなでおろす。


「じゃ、私はリーパーから情報を聞き出すから二人はもう上がってね、慣れているかもしれないけれど深夜も深夜だもの」


 と、少しだけ申し訳なさが混ざった表情で言われた。


 なのでその言葉に甘えて淡雪と一緒に部屋を出ることにした。

明日も頑張ります。

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