4月22日-11
間に合いました。
ウォーモンガーを逃がさないように殴り合い――ほぼ殴られ続けるだけだがそれでも役目は果たした。
「ちぃぃ!! 覚えてやがれよ!!」
そんなありきたりな捨て台詞を吐いて去って行った。
時間はもうそろそろ深夜。
とっくの昔に列車は目的地についていた。
だけど、自由にしてはいけないためにここまで粘った。
「穂高さん、ウォーモンガーを追いかける事ってできますか?」
「それはやるだけやってみますが、うーん」
と、相手からの返事はどうにも精彩がない。
不思議に思ったので質問する。
「何かあったのですか?」
「……こっちに来てもらった方が早いですね」
なんのことかはわからないが呼ばれたので取り合ず向かうことにした。
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「な――」
指定された部屋に入ると居てはいけない者がいる。
「なん――で」
相手は手首に手錠らしきものをつけているが、くるぶしまで届く青みがかった銀髪とワンピース。
優し気とまで言えるほどの柔和な顔立ち。
「リーパー」
「ええ、数日ぶりですね」
そうしてひらひらと手を振って挨拶をしてくる。
そのすぐわきには淡雪がいて、ハッキングを行い動きを制限している様子だ。
青木さんもここにいる。
「なんでここに二人も?」
すると青木さんが非常に説明しずらそうな顔をする。
「何といえばいいのか――」
とリーパーが朗らかともいえる口調で言い放つ。
「協力を申し入れました。 明日のためにね。」
その言葉は黙りこんでいるほか四人の間を通り抜けた。
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ともかく話を整理するために大きめのテーブルを囲んで話し合うことにする。
本来なら凶悪なテロリストであるリーパーは即なんらかの施設に収監され死刑に処せられるそうだが、穂高さんが苦虫噛んだあとで飲み込んだような顔で切り出した。
「結論から言いますが、明日平成二十三年の大災害、日本が揺れた日である三・一一東日本大震災のために今は動いてもらいます」
「落ち着いているようで何よりですね」
おかれたコーヒーに手を付けた後で話始める。
「具体的に言いますと、|メルトダウンを起こした炉心の処理ですね」
「わかっているならその通りです、あなたの鎌を使えばほぼ外部に影響を出さずに処理できる、違いますか?」
穂高さんは鋭い視線で射貫くようにして問いただす。
それに対してリーパーは笑顔のままうなずき。
「余裕です」
「ならばいいです、正直決死隊よりもひどい扱いを覚悟してください」
その言葉にクスクスとリーパーは笑う。
「あなたはやさしいわね、穂高二佐、そんなこと言わずとも使い捨てることもできるでしょうに」
「そうありたいと自身に課していますので」
とりあえずの話は終わった模様だ。
そして尾高さんは淡雪に視線を向けて。
「それでハッキングの調子はどうですか?」
「それがほぼ中心近くまでの領域は制圧できたのですが、人格を形作る本当の中心部分がお手上げです」
その言葉に疑問に思う。
「あれ? 淡雪はそっち方面が専門じゃなかったっけ?」
「そうなのですが、まず構成する技術が何世代も前なので手間取るのです、光ファイバーの通信を行っている世界にモールス信号がやってきたようなものです、情報の取得がまず大きなボトルネックです」
そして、と続ける。
「ありえないほど膨大、その二点が問題ですがシンプルすぎてほぼどうしようもないです、なので話してもらわなければ情報の取得もままなりません」
その言葉にリーパーは傷ついた顔をする。
「ふ、古い女と面と向かって言われるのは堪えますね」
俺を含む男性陣は口をつぐみ、女性陣も何とも言えない顔をする。
そんな微妙な空気の中、穂高さんが話を切り出す。
「と、とにかくまずは情報交換を始めましょう」
そして次は日本の半分が大打撃を受ける大災害への対処のための話し合いを始めた。
明日も頑張ります。




