4月22日-3
間に合いました。
「サンプルの確保は? そう、ならいいわ――口蹄疫に備えて農林水産省の職員はいますね? 国立感染症研究所からの人を手配するまでその人に人間の隔離の指示を仰いで、ええ、そうやらないよりましですし責任は私がとります、よろしくお願います――あ、久しぶりですね? 厚生労働省でいまどんな仕事を――ああ、耳が早いですね、ええ、そうです――」
様々なところに連絡を取りながら矢継ぎ早に指示と協力を取り付けていく。
今いる場所は輸送ヘリの中だ。
穂高さんはノイズが入るとかで喉の振動を拾うマイクを使っている。
そしてこの場に淡雪はいない。
なんでも別の場所でしてほしい事があるとの話だ。
この場には青木さんも針山さんもいない。
ほぼ初対面同士しかいないというは少し不安だ。
「二人だけで大丈夫なんですかね? それに急ぐなら俺が抱えて運ぶ方が早かった気がするんですが」
連絡が一段落したのかまず一本指を立てる。
「人数の方はあちらの三人はやってもらことがあるので、宮崎の感染症の大流行にはわたしと山上君の二人しか割けないというのが正しいですね」
そして二本目を立てて。
すこしだけ悪戯っぽく笑い。
「この輸送ヘリ大きいですよね?」
「え? そうですね」
確かにこのヘリはたった二人が使うにはあまりに広い。
「向こうではおそらく移動手段はありすぎて困ることはないです、県全域が対象ですから」
そこで教師が授業をするように丁寧に話し始める。
「さて、宮崎県に出動している隊員全員も山上君が運びきれる? このヘリなら四十人以上を一度に運べます、『お願い』を言って動かしてもらった意味は分かりますね?」
「なるほど」
でも『お願い』をされていた人がかわいそうになるくらい泣きそうな顔をしていたのは気のせいではないだろう。
思い出したら気の毒になってきた。
「では簡単に向かう先でどのようなことが起きているかをまとめましょうか」
といって一つ手を叩く。
「まず分かっていることは牛豚鶏の様々な家畜が伝染病で倒れています」
話を聞くだけでもかなり深刻な状況なのはわかる。
大損害なんて一言では済まないほどの事態になっているだろう。
「そして次々世話をしていた方が倒れています、詳しい分析結果は出てないけど想定していた中でかなりまずい状況ね」
「ところで最悪の状況って一体どれくらいなんですか?」
するとなんでもない事のように――
「最初はなんでもないようにほぼ症状が出ないけど感染だけは進んで時間を合わせて時限爆弾のように一気に発症して感染した生物が死んでいくような病気が最悪だったわね」
「なんですかその悪意があるとしか思えない病気は……」
そこで少しだが肩をすくめるようにして話し始める。
「それを想定してもまだ足りない、それくらい出鱈目な相手なのですよ、それこそ感染した家畜が化け物になったというB級映画展開でもおかしくないので」
「さすがにそれは――」
ない。
と、言おうとして思い直す。
「どこまでできるかわからないですしね」
「想定できる上限値がよくわからないのが問題なのですよね、淡雪ちゃんに聞いてもできないこともない、くらいの話だったのよね」
とため息をつく。
「ともかくそろそろ現地よ、淡雪ちゃんの話だと外装は常にクリーンな状態に保てるのよね?」
「淡雪がそう言ったのならそうだとおもいます、この強化外骨格の装甲は本当に出鱈目な性能なので」
「分かったわ、現地ではその情報を信じて感染しないし感染させもしない人員として動いてもらうわね、倒れないでくださいね」
といって浮かべる笑顔はにこやかともいえる。
がその笑顔で『お願い』をしていたのを見ていたのでげんなりする。
本当に倒れることになるかもしれない。
と思いながら。
明日も頑張ります。




