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2019年4月22日

間に合いました。

「けほっ」


 春うららかなというには晴と曇りの中間のパッとしない天気で、気温も高く蒸し暑い。

 喉の調子が少しおかしいがまぁすぐよくなるだろう。


 そんな天気の中、仕事場である豚舎に向かう。

 目的は日課の掃除と飼料等の消費、そして体調の確認など毎日が変化に富んでいる。


「おーう、高座さんとこの精が出ちょりますな」


 と少し離れた農家の柳田さんとこのおじいちゃんが来ている。


 手には籠いっぱいのトマトが積まれている。


「あーおはようございます」


「これから仕事かい?」


「そうですよ、チビどもがいるんで早く見てあげないと」


 すると、カカッっとからりとした笑い声をあげ。


「ならトマトがよーけとれたから玄関とこおいとくでな」


「おおきんね」


 軽く言葉を交わして、豚舎の前で足の消毒をして戸に手をかけると違和感に気付く。


「あん? なーんか静かと?」


 鳴き声が外まで聞こえることが多いのに今日に限って静まりかえっている。


 嫌な予感がして中に飛び込むと――


「なんよーー!? こいは!?」


 ()()している。


 多くの豚がすべてぐったりと横たわっている。


 思わずその場に崩れ落ちる。

 その時まず頭に浮かんだのは悔しいという思いだった。


======================〇=========


「けほっ」


 小さく咳が出て、周りの人間がこっちを見た。


 が、それに気を割けるような状況ではない。


 豚が全滅。

 それは保険が降りるとはいえかなり絶望的な状況だ。

 原因の究明と対策そして、軌道に再度載せるまでの資金繰りなどお先真っ暗だ。


「高座さんとこだけじゃなく、むかいのカシワと森さんとこの牛もやられたらしいの」


 と気になる言葉が出たので立ちあがり詰め寄るように問いかける。


「その話詳しくお願いできんか?」


「ああ、なんでもほかんとも同じようにバタバタいっちょるそうよ」


 脳裏に浮かぶのはここまで急速でなかったがほぼ県全域で家畜がほぼ全滅した過去の事件だ。


 この場にいる全員があの悪夢を思い出したかのように口をつぐむ。


「ちゃんと対策したから問題ない問題ない」


 それは自分自身で言い聞かせているような声だ。


「けほっ」


 なんでだか今日はひどくせき込む。


「大丈夫――」


 なんとか安心させようと声を出そうとして思わず。


「げほ!! ごほっ!!」


 肺の奥からたたかれるような咳が止まらない。

 頭もクラクラして立っていることすらできずに崩れ落ちる。


「ひ   ぃ   ぁあ」


 うまく息が吸えない。


「けほっ」


 自分以外の人間も咳をしだす。

 それがだんだん連続する。


 これはまずい。


 家畜の伝染病と人の伝染病。

 それが同時に発生したという地獄のようなことが起き始めている。


「連絡を――はやく!!」


 まだ比較的元気がある人間も事態が飲み込めてき始めたのか顔が真っ青になって役場に連絡を入れる。


 その様子をぼんやりとし始めた頭で眺めてただ祈るのは、できるだけ被害が広がらないようにということだった。

旅行中なので明日の更新は難しいかもしれません。

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