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4月22日-1

間に合いました。

「というわけで新しく協力してくれる人ができました、自己紹介よろしく」


 場所はいつもの警察署。

 針山さんはもうあきらめたのか少し遠い目ををしている。


 といつも通りのどこかゆるい言い方で一人の女性を連れてきた。

 その女性はにこにこと笑っており、高校の若い教師くらいに見える。

 がその背筋は芯が通っているようにまっすぐ伸びている。


「よろしくお願いしますね、穂高 はるかです」


 と一つ敬礼をする。


「もしかして自衛隊の方ですか?」


「ええ、自衛隊の諜報の情報部よ、これでもそれなりに偉いんですよ」


 そこで針山さんが思い出したように聞く。


「そういえば階級はいくつなんだ?」


「二佐です」


「は!?」


 針山さんと青木さんが目を剥いて驚く。


「おいおい、防衛大でて何年目だよ」


「ええっと博士課程まで収めたので今年で二年目ですね」


「ぶっ!?」


「はぁっ!?」


 二人はちょっとありえないくらい取り乱して部屋の隅に向かう。


「いやいや、どこぞの秘蔵っ子だと思ってたがあの年で二佐ってあり得るか? 三十手前ってお前」


「かるーく経歴漁ったら、そもそも生まれが背広組のお偉いさんの孫娘で、博士号も複数所持してるかなりの才媛で非の打ちどころがないんだよね」


「えぇ、なんでこんなとこ来てるんだよ、経歴傷つくぞ」


「未来の技術の解析ができればさらに箔がつくとかじゃない? 最悪死体確保して尻尾斬りってのも充分できるし、その場合残るのはすねに傷もつ二人だから大して問題じゃないし」


「住む世界の差ってやつか、性格がもっと悪そうだったらそれなりの対応できるんだがなぁ」


 そこで話し合いは終わったのか二人は穂高さんに向く。


「頼むぞ」


「全部聞こえてましたからね、自衛隊が腰を上げるころに解決していたのは気にしていたんですよ」


「まぁ、そこらへんは小さい集団だったからねぇ」


 しみじみと青木さんが答えて、穂高さんは早速という様子で話を切り出してくる。


「青木さんから大体の話を聞いていますが、ノスタルジストを名乗る集団の襲撃もアジトも察知できていないという話ですよね」


「ええ、その通りです、時間を見つけて監視カメラや様々な電子情報の流れを見ているのですが」


 と少し暗い口調で淡雪が返した。


「死体からアジトを示す情報は得られましたか?」


「なかったです」


 すると穂高さんは表情を変えずに言い切った。


「ならば今は忘れましょう、というのも隠れている相手の周りで騒ぎ立てたら逆にこっちの動きを知らせることになります、狙うなら相手が動くときそこは絶対にわきが甘くなります」


 そして、と指を一本立てながら言葉を続ける。


「何が起きるかわからないから山上君と淡雪ちゃんの二人一緒に出ていたのがほとんどだったけど、これからは必要がない限り山上君一人で事に当たってほしいの」


「それは、危なくないですか?」


 と淡雪が考えを話す。

 その言葉に穂高さんはあっさりうなずく。


「そう、現場でマルチに活躍できる淡雪ちゃんが抜けるのは被害を抑えることを考えるならリスクはかなり高くなるわね」


 でも、と首を横に振って話を続ける。


「だからこそノスタルジストを追い切れていないと私は考えているの」


 水を打ったような静寂が満ちる。

 確かに今まで戦闘力として引っ張り出していたから後手に回っていた可能性はあるだろう。


「さて忌憚ない意見を聞かせてもらえるかしら?」


 俺から出せる話なんて、不安だということしかない。


 すると針山さんが――


「おれは反対だ、少なくない被害が出る可能性がある、直近なら航空機の墜落は二人いないと全員死亡していただろうな」


 そこで穂高さんは表情を引き締めて――


「過去から学ぶのは大切だけど、過去を理由にするのはよくないわね」


 そしてゆっくりと話し始める。


「人命最優先のその考えはものすごく尊いことだし大切にしてほしい、でも先手を打たれ続けているこの状況を打破しないといけないの」


 じっとこちらを見つめる目は真剣だ。


「選べ、なんて酷なことは言わない、()()()()()と命令するわ」


 言い切られたその言葉は冷酷ともいえるものだし、その命令を聞く理由はない。

 だが、その言葉はきっと強い覚悟から来ている。


 穂高さんはそのままじっくりとこちらの言葉を待っている。


「穂高二佐、急ぐ気持ちはわかるけど話が急すぎだよ」


「本当にそう思うの?」


 青木さんに返した言葉は問いかける形式だが、中身は厳しい。

 今まで先延ばしにしただけであると突きつけている。


 ここで穂高さんに対してたった一つだけ確認したいことがあるので問いかける。


「わざとたくさんの人を見捨てることはしないですよね」


「確約できないわ」


 即断で答えが返ってくる。


「でも努力を怠るつもりはないわ、この言葉は信じてほしいの」


 見つめる目は決してそらしていない。


 だから――


「淡雪、お願い」


「わかりました」


 決断を下した。

 これがどのような結果を出すかはわからない。


 でも全力を尽くすという目的は変わらないので頭を下げてお願いすることにした。

明日も頑張ります。

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