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4月21日-3

間に合いました。

「あとはひたすら救命胴衣を着けた人を抱えて上から海へ移動させ続けて大変でした」


 一応淡雪が簡単なビーコンを量産し続けてくれたので、海におろしたら行方不明になったというのはなかったのが幸いだったが――


「小さい子の相手がなかなか骨が折れました」


 力の限り泣くのは親御さんと一緒におろして何とかなった場合は多いが――


「見た目けっこう変身ヒーローっぽいので小さい子を勇気づけるのに、ノリノリでそれっぽいことを言ったのが運の尽きでしたね」


 思い出すのはおろすのは比較的スムーズになった部分はあるが、今度は抱き上げたら離れなくなった子がそこそこ現れたことで苦労した。

 キラキラした目があっという間に曇っていく光景はあんまり気分がよくない物だった。


「ただ、何とかなって良かったです」


 そうして救出活動を進めるうちにあることが分かった。


「それにしてもリーパーが普通にあらかじめあの飛行機に乗客として乗っていたのは流石に盲点でした」


 それについては淡雪が発見した。


「乗客リストに記載されていても救助されるときにどうしても見つからない人がいて、飛び立った空港の情報を漁ったら見つけました」


 しみじみとそのまま続ける。


「あのままでしたらかなり時間をロスするところでしたね」


「外に吸い貨物室も探そうとしていたしな」


 そこまで話したら針山さんがおもむろに口を開く。


「すまんな手間を取らせて、墜落に関して運輸安全委員会から出頭の要請が出ているらしくてな、でも事故原因が外から来た奴が壁をぶち破って、砲撃して逃げたとかどう考えてもおかしいだろ、そんなわけで証拠探しをしているわけだが――」


「まさか俺たちが犯人と疑われているんですか?」


 そこで針山さんは何とも形容しづらい表情をしている。


「助けられた人間はかばっている奴もいるが、ほとんどずっと気絶していた奴もそれなりいるし、荒唐無稽すぎる証言を信じることができるやつがいなくて、手っ取り早く犯人を確保するって方向に動く可能性があるってだけだ」


「……」


 ひとつ息を吐く。


「わざわざ針山さんが話をしに来たってことは何か策があるんですね?」


「策ってわけじゃないが、普通はお前ら二人までたどり着くことはできない、途中搭乗なんていうあるはずがないことだからな」


「ということはこのまま逃げればいいんですか?」


 素直に聞くが、針山さんは否定した。


「航空機事故に巻き込まれた奴がすぐに退院したら怪しまれる、転院する手続きはとってあるからそのあとでバックレる」


 といって、全然違う名前の書かれた書類を渡してくる。


「警察が良いんですか?」


「横車を先に押そうとしたのあっちだ、テロリスト扱いしようとしていた奴が本当にテロリストだったかもってだけだ」


 その紙を手に取って――


「やめておきます、考えなしなのは確かですが、やましいことはないもないので」


 そしてその書類を返す。


「くく、良い答えだ」


 針山さんはかすかな笑みを浮かべて書類を破り捨てて懐に収めた。


「じゃあ、早速さしあたった問題だが――金だな」


「え?」


 続いて出されたのは大雑把な計算だが入院も含む治療費のようだが、見たこともない値段だった。


「なんでこんなに高額なんですか?」


「保険制度って優秀だなって話でな、このままいくとエライ額を払うことになる」


「あ、私が立て替えますよ、後で払い戻しもあるんですよね?」


 といって軽い調子で請求書を手に取った。


「そういえば忘れかけていたけど淡雪って結構な額が入った口座とか持っていたんだっけ?」


「そうです、普段そこまで使わないのでここが使い時ですね」


「ならいいが、医療費を全額負担したら一部払い戻しが受けることができるからちゃんとこの申請書を出しておくんだぞ」


 といって一つの封筒を渡してきた。

 中には払い戻しを受けるための申請書とその手順がまとめられた紙が入っている。


「なんというか、いきなり現実に引き戻されたような気がしますね」


 その言葉に対して針山さんは苦笑しながら。


「ま、そんなもんさ、どんなことがあっても結局そういうことを積み重ねて人生ってのは進むもんさ」

明日も頑張ります。

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