20190420-3
間に合いました。
出る、とは言っても結局警察内では別組織の人間でしかなく、いろんなとこに顔を出していてフットワークが軽いのを武器にのらりくらりとくっついているだけだ。
というわけで実はメインは警察だ。
まぁその前にこそっといくつかの場所に連絡したが。
「やーありがとね、待っててくれてさ」
パトカーにいそいそ乗り込んで針山刑事に話しかける。
眉間にしわが寄っていて実は炸裂寸前だったみたい。
僕がシートベルトを締めた瞬間ドライバーはサイレンを鳴らしながら、アクセルを目いっぱい踏み込んで加速する。
「で、お前の読みだとどこから来るんだ?」
と、単刀直入に言われる。
その検討はもう終了している。
「ぶっちゃけ秋葉原事件以降はナイフの規制強化とレンタカーの監視が強化されてるってのはしってるでしょ?」
「まぁな」
「で、それに引っかかった」
と言って紙束を針山警部に渡す。
「は? 印刷された情報じゃリアルタイムで追えないと思うんだがな」
「普通ならそうだね」
でも――
「相手しようとしている化け物は違う」
「……過去改変か」
「そういうこと!!」
あらかじめ周囲のレンタカー店のリストをコピーしておいた。
かなりりょうがおおかったから苦労したけど、どの店が誰に貸して、どこで使われているかを調べ上げて不審なレンタルはなかった。
あとは変わってしまった項目を探せばいいだけだ。
という内容の事を伝える。
「そうは言うけど、よく見つけたな」
「それ、地道な準備って大切だね」
といって赤ペンを見せる。
「これでなにかわかるのか?」
「これで全部なぞった」
「はぁ!?」
予想できる事件を察知する準備はだいぶ前からしていたから何とかなった。
紙の束をめくっていくと、ほとんどが赤が少しにじんでいるだけで読める文字だ。
だけどある一項目は完全に赤と黒がまじりあって文字が判別できない。
つまりここが書き換わった可能性がある場所だ。
「何というかまめだなぁ」
「それほどでもない、人手も使ったしね」
「でも運よく以前に借りたことになったが、今借りられていたらどうしたんだ?」
実はそれが一番怖かったことだ。
普通の人間のふりをしてトラックと凶器が必要な理由を過去改変で作られて普通に行動されたら素早く発見というわけにはいかなかっただろう。
「そこは、あの化け物はある意味でとても単純だからね、そこまでこじつけて動く可能性は低いと思っていたからね」
「なるほどな、でここからはどうするんだ? 襲ってくるのはわかったがどうやって対策するんだ?」
そこで一本指を上げる。
「そこはそれ、事件になぞらえて襲うなら、トラックでの突撃から行うはずだよね」
「まぁな」
でもな。
針山警部は続ける。
「当たり前だがあそこは交通量が多いぞ、さっきの資料でナンバーは抑えられるが一つ一つ確認するのは現実的じゃねーぞ」
「まぁ、普通はあそこを封鎖するのは無理だよね――」
だから。
と言っていると、ドライバーが慌てた声で叫ぶ。
「うわっ!! なんで信号がいきなり!?」
は?
と言いながら針山警部は進行方向に視線を、向けたようだ。
そうすると、信号の電源が落ちたのかすべて真っ暗だ。
「いやぁ、まさかこんなテロが同時に起きるなんてね、物騒なはなしだねぇ」
「てめぇ、まさか」
視線をそらしてごまかす。
なんだかんだで四角四面に交通ルールを守っている人間ばかりではないが、いきなり信号が消えたらほぼすべての人はその場で止まり様子を見始めるはずだ。
特に今みたいにサイレンを鳴らしたパトカーが近づいているときは。
「そして偶然にもその付近にはおまわりさんが多めにいてすぐさま交通整理に移る、同時に不審車両の臨検も兼ねてね」
「……おめぇ頭おかしいだろ」
変な話だが、秋葉原で事件が起きるなら、その手前は安全だ。
「経済的な被害はどれくらいかわからないひどいテロをする奴もいるものだね」
肩をすくめ話す。
頼んだ通りの時間に電源を物理的に落としてくれた。
「これであとは件のトラックを見つけて中の化け物を確保するだけだね」
「ただ、めちゃくちゃ強いんだろ? 犠牲前提ならとてもじゃねーが許せねーぞ」
「そこのところは考えがあるから大丈夫。」
それに命を張るのは頼み込んだ僕が一番張らなきゃいけないからね。
と胸の内で呟きながら祈るような気持ちで現場に向かった。
明日も頑張ります。




