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20190420-2

何とか間に合いました。

「それは良かった、うまくいきそうで」


 墜落という最悪の事故は避けられたようで胸をなでおろす。

 場所はいつものように針山警部が詰めている署だ。


 しかもディープスロートは自殺、橘君は確保したと想定以上の戦果だ。


「はいはい、気を付けてね」


 なんだかんだで二人とも緊張の連続だったようで声だけでも疲れ切っていることがわかる。

 そのままおやすみさせたいけど、聞かなければいけないことがあるので会話を続ける。


「それでその場に居たのはディープスロートと橘君だけなんだね?」


「はい、そうですけど」


 少し戸惑いながらの言葉が返ってくる。


 まぁ、いきなりこんなこと聞かれたら不安だよねぇ。

 などと胸の内で納得しながら


「なるほど、それでさ平成二十年の出来事でけっこー大きい事件があるんだけど、ピンとくる?」


「ええと……」


 言葉に詰まっている。

 知らないわけではないだろうけど、ピンと来ていないのだろう。


「秋葉原通り魔事件」


「あ――」


 そこでようやくピンときたらしい。


「本当はこっちが来るんじゃないかと思ってできるだけ準備してたんだよねぇ」


 まぁ、杞憂に終わったからいいけど。

 とつなげてそろそろ通信を切ろうとすると不自然に静かなことに気付く。


「ん? どうしたの」


 疑問に思ったので聞いてみると、震えた声でこんな答えが返ってきた。


「いま、この瞬間に出ました」


「ぁあ、なるほどね」


 そこでいろいろなことが腑に落ちた。


「はめられたねぇ」


「陽動だったということでしょうか?」


「十中八九そうだろうねぇ」


 しかしこれは仕方のない事だ。

 どこから仕込んでいたのかは今から調べても意味がない。


「で、一応聞くけどどこなのさ?」


「……秋葉原(・・・)です」


 予想通りとはいえ、事件が起きるというのは気分が悪い。

 というわけでもうすでに秋葉原近くに展開してもらっていた部隊に指示を出す。


「あと……来てくれたら嬉しいけど――」


 少し考えるて、結果を出す。


「いや、そこから急行してもらえればもしかしたら、くらいだよねぇ」


「が、頑張ります」


 山上君と淡雪ちゃんの二人ならほぼ連戦のこの状況でも必死に来るだろうけど、精神的にはヘトヘトになっているだろうし、――


「ディープスロートの死体と橘君の監視をちゃんとしてて、そっちをちゃんとせずに逃げられたら元の木阿弥だしね」


「でも――」


 まぁ、心配なのはわかる。

 実際、ぼくも来てくれた方が安心できる。


 ノスタルジストのクリーチャーは規格外の能力を持っている可能性が高いし、航空機の方が陽動ならほぼ確実に残りの四人も来るだろう。

 そしてその四人はアメリカ軍と事を構えて、苦も無く退けた。

 見栄を張れる状況かと言われたら首をひねる。


「そのために準備をしていたからだいじょーぶだいじょーぶ」


 でも、動かす事には嫌な予感を感じる。

 動かす理由が秋葉原の事件なら、動かさない理由は橘君の逃走の防止がある。

 となるともう好みの問題なので、動かさないと決めた。


「ほら、大人もたまにはいいとこ見せないとね」


「そんな目立ちたがりの子供じゃないんですから」


 と半ば以上呆れられた声が返ってきた。

 その気持ちはわからないでもないが――


「いやぁ、そういう気持ちは大切だよぉ、大人――いいや、歳を重ねるとドンドン省エネになってなかなか本気になれなくなる」


 僕も号令を出した側として現場に向かう必要がある。

 だから軽く関節のコリをほぐして立ち上がる。


「でもね、仕事に対して本気になれなくなったらもう駄目だね、だから大人は本気を出すべき時を見据えたら本気になる、でもそれを面と向かって言うと少し気恥ずかしいんだよね」


 苦笑しながら話す。

 そんなことを話すことはどうなんだと思うが、それでも言っておきたい。


「だからこういうのさ、『たまにはいいとこ見せないと』ってね」


 僕自身が思っている以上に体に力がこもっているらしく、動かす関節が少しきしんだ気がする。


「大人は毎日そうやってかっこつけて生きているんだよね、でもそういうかっこつけってのできっと社会は回ってるんだよ」


 とそこまで言って――


「ま、こんなクサーい話もかっこつけないとできないってね、そんなわけで二人は監視よろしくねー」


 そこで今度こそ通信を切る。


「さーて、大見え切ったしやりますか!!」


 せっかくなので駆け足気味部屋を出て現場に向かう。

明日も頑張ります。

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