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4月20日-5

間に合いました。

「よかった、生きている人がいます!!」


 喜びと安堵に満ちた淡雪の声が聞こえる。

 俺も口にこそ出さないがうれしい。


 映像と音声を青木さんが受け取ったのか――


「ふぅ、なんにせよ良かったね、できるだけ時間は引き延ばすから早めにね」


 本当はとてつもない苦労があるのだろうけどそんなことはおくびにも出さず青木さんは通信を切った。

 その期待に応えるために機体に飛び乗った。


 よく見ると搭乗口が解放されているのでそこに向かうと――


「なんだこの切断面?」


 とても滑らかだが、何かにかじられたような切断面だ。

 それで扉をロックしている場所を噛み取ったようになっている。

 しかし今は一刻を争う事態だ。

 疑問は振り払い――


「よし!!」


 覚悟を決めて中に入る。


 その瞬間――


「山上ぃぃっ!!」


 聞きなれた声が俺への恨みを満載にして叩きつけられる。

 同時にこちらに飛び掛かってきた。


 それは赤い金属で作られた獣のように見える。

 その獣を必死に押しとどめる。


「橘ぁ!!」


 襲ってきている相手の名前を叫ぶ

 そのことへの返事は行われず、飛んで距離を取られただ喉をうならせるような声を発している。


 ついでもう一人いる。


 両腕が金属製の義手に変えられた、妖艶な女だ。

 彫像のような立ち姿にその武骨な腕はいびつだ。


「お久しぶり、というにはいささか短いかしら?」


 そこで思わず返す。


「俺は前に一度しか会ってない、しかもいきなり攻撃されたから、な」


 と言って踏み込み斬りかかる。


「そうだったかしら?」


 などと言い放ちながら、両手の手に平をこちらに向けて――


 轟音を発した。


 床すらも揺れるほどの音量は一瞬だが足元がおぼつかなくなる。


 そこに――


「しゃぁ!!」


 かいくぐるようにして橘が地面スレスレを伝って飛び掛かってきた。


「させません」


 真横から金属球が三つ連続で橘に直撃した。

 そのおかげで直線からずれた。

 そして脳震盪で起こしたのかふらついて、脇の壁にかみついた。


「っ!?」


 橘がかみついた場所がスプーンでえぐり取られたように歯型にえぐり取られた。


 直感でわかる。

 あれは俺の装甲を無視して攻撃できる方法だということを。


「迷ってる暇なんてないですよ!!」


 言うが早いか、淡雪が金属球でディープスロートを強襲する。

 それに合わせてダッシュする。


「ふん、手ぬるいわね」


 義手で殴り飛ばす。

 そして逆の手で俺に殴りかかってくる。


 殴られる瞬間腰を落とすようにして、頭一つ分下げる。


「なに――」


 その瞬間、頭の真上を五個目の金属球が高速で通り過ぎる。

 なんでも一緒に戦ったり、すごしたのだ何となくタイミングは合わせられる。


 そして変形した金属球が杭のように変形しディープスロートを貫く。


「か、ふ、やるわねぇ」


 杭を握り溶かすようにして破壊して抜けた。


 そして軽くだが体勢を崩した俺に橘が遅いかかってきたので、頭を押さえるようにして必死に止める。

 橘は獣じみた動きとパワーで周りの壁やらを苦も無く破壊ている。

 機内で戦っていたら余計な被害が出るだろう。


 淡雪にめくばせをして――


「すぐ戻る!!」


 と残して橘ごと機外にとびだした。


====================〇===========


「しぃぃぃ!!」


 怪鳥音じみた叫びをしながら、襲いかかってくる。

 身体の構造は機内では四足歩行の獣のようだったが、今は人のようだ。


 だがその動きの技術は異質に見える。

 人が体を動かして攻撃を行う場合は手足で打撃をするかつかんで極めるか投げることがメインになる。

 しかし、今の橘は手はあくまでつかんでくるもので、噛みつきが攻撃動作の中心に見える。


「くっ」


 その噛みつきをまともに受けるわけにはいかないとなると、武器で受けるしかないが――


「絶対即死する!!」


 切れ味がよすぎて、受けるどころか一太刀で上あごから上がなくなることになる。

 だから避けるしかない。


「だけど――」


 動きには慣れてきた。


 あとはタイミングと覚悟だ。


「大丈夫だ」


 自分にそう言い聞かせる。

 うまくいけば無傷で橘を取り押さえることができる。


「死ぃぃねぇ!! 山上ぃ!!」


 掴みかかってきたので、両手を抑え込むようにしてつかむ。


 そのまま、関節を鳴らすようにして首を伸ばして噛みついてくる。


「装甲の意味がないのなら――」


 強化外骨格を脱ぐ(・・・・・・・・)


「はっ!?」


 橘は驚愕の声を上げる。

 ありえない判断だろう。


 このままだとそれこそ殴られただけで致命傷になりかねない。


 しかし、一つだけ利点がある


 それは――


「左腕は抜けたぞ」


 俺は左腕がない。

 だから強化外骨格を脱げばつかまれていた左腕は拘束がなくなる。

 右手を曲げるようにして体をずらす。


 噛みつきの目測がずれて空ぶった。


 そうすると目の前には、無防備な橘の顎がある。


「ちょっと頭を冷やせ!!」


 左の義手を呼び出し、アッパーカットを顎にぶち込んだ。


 自動車同士がぶつかったような音が響く。

 そして完全に橘はのけぞった。


「俺ならおそらく一瞬以下で復帰できるが――」


 思い出すのは機内で金属球を撃ち込まれたとき、橘は軽くだが脳震盪を起こした(・・・・・・・・)


 それではまだ決め手には足りない。

 だからふらついている間に強化外骨格を呼び出し、橘を羽交い絞めにするようにして真後ろから組み付く。


 そしてわざと聞こえるように話しかける。


「ブラック・アウトってあるらしいな」


「な!?」


 その叫びをあげさせるよりも早く、真下に向かって全力で加速する。

 それはあっという間に音速を超える。


 橘の強化外骨格のスペックは正直なところ分からない。

 だが、俺の方が確実に勝っているスペックの一つは着用者を保護する能力だ。

 だから急激な加速度をかけると――


「……」


 ほんの一瞬前まで抵抗していた橘の手足から力がなくなった。

 ブラック・アウト――急激な加速度によって脳へ血液が送られなくなり気絶する現象だ。


「これで完了っと」


 拘束をどうしようかと考えていると、人工頭脳が勝手にハッキングを始めてくれた様子で、すぐに橘の強化外骨格をロックした。

 着ている相手の意識がないとハッキングしやすいとかあるのだろうか?

 と、少しずれたことを考えるが――


「さて、早くもどらないと」


 頭を切り替える。


 そのあと、橘をその場に離すわけにはいかないので橘を連れて飛行機に向かう。

明日も頑張ります。

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