4月20日-4
なんとか間に合いました。
すぐさま青木さんに連絡を取る。
淡雪に視線を送るとすでに何かを調べている様子だ。
数コールもしないうちに青木さんにつながる。
越えはいつも通りだがどことなく疲れが見える。
「はーい、このタイミングで電話ってことは――」
「はい、ノスタルジストの化け物が出ました。」
一呼吸、深呼吸ともため息ともいえない物が聞こえ。
「よっし、もう大丈夫!! で、どこにでたの?」
それに淡雪が割り込んで話始める。
「旅客機です、場所は首都圏」
「……いや、おかしい、平成二十年には空の大事故はヘリくらいで旅客機はニアミスくらいしかないはず……」
「これからおこしに行くのでは?」
そう話しながらも淡雪を抱き上げて空を飛び始める。
「とにかく今は問題の旅客機に向かいます」
「そうだね、それが良い、僕の方から管制の方を探ってみるね」
「お願いします」
なぜかは知らないが胸騒ぎがする。
それを表に出さないように全速力で空を飛ぶ。
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現場に向かうと明らかに飛び方がおかしい旅客機があった。
フラフラと高度を下げるがあるときグッと高度を上げている。
「青木さん、問題の場所につきました」
「さすが足が速いねえ、頼もしい」
言葉はそこまでで、早速状況をこちらに伝え始める。
「まず、あの旅客機は中との連絡が取れない」
「中の状況がわからないのは困りますね」
淡雪が何とかして中と連絡を取ろうとしている様子だが――
「うーん、通信機器の電源自体が切られているみたいですね……」
となるといなな想像が頭に浮かぶ。
「もしかして機内はすでに化け物に制圧済みの可能性がある?」
「十中八九制圧済みだねぇ、最悪の状況を考える必要はあるかもねぇ」
「最悪……」
話ではそれなりに人が乗った旅客機だ。
機内が真っ赤になっている光景を思い浮かべる。
「山上さん」
淡雪から少し鋭い声が来る。
少し疑問に思って聞き返す。
「どうした淡雪?」
「その、たくさんの死体を見る事っていままでなかったと思うので、フィルターっていりますか?」
考えてみれば確かに死体を見たのはそれほど多くない。
でも――
「いや、いい、それで見落としちゃいけない物を見落としたら大変だし」
「……分かりました、ただ無理はしないでくださいね」
「わかっている」
気を引き締めて、不安定な飛び方をしている飛行機に近づく。
「あ、お二人さん、申し訳ないんだけど中の様子おしりの方から映像とってこっちに送ってくれる?」
「何故ですか?」
一呼吸だけおいて、はっきりと言い切られる。
「それは言えないよー、まぁまぁこれくらいの頼みはいいじゃない」
誤魔化した。
だから少し考えて――
「生きている人がいないようなら、撃墜命令が下るんですね」
「……」
無言が返ってくる。
今、目の前でフラフラ飛んでいる旅客機はこのままではどこに落ちるかわからない。
しかもここは世界有数の空の過密地帯と言える。
だから理解はできるが――
と、青木さんが言葉を再開する。
同時に淡雪が一つ耳打ちしてくる。
青木さんが録音装置らしき物の電源を落としました。
と。
「なーんでそれ言っちゃうかなぁ」
少しだけ悲しそうな響きが入ったセリフだ。
おそらく知らなかったと言い訳させるためだったのだろう。
でもだからと言って目を背けるわけにはいかない。
「知らなかったで済むほど無邪気じゃないんです」
「せめてできるだけ遺体を回収したいというのは――」
「そういうわけにはいかない、少しでも早く空けてほしいらしい」
そこで何か考え込んで――
「もし、生存者が一人でもいたら、そして空港に安全に着陸させることができるなら、話はかわるね」
その言葉を聞いて淡雪と顔を見合わせて頷きあう。
望みはゼロではない。
淡雪なら自動操縦システムくらいならたやすく模倣して着陸までこなすだろう。
となると問題は――
「頑張って生存者を探そう」
「えぇ」
期待を込めて中がまだ覗き込めない旅客機へ近づいていく。
明日も頑張ります。
そしてふと気づけばこの話で100話目です。
なんとか令和にたどり着くまで頑張ります。