4月??日
二人の話ではないです。
世紀の怪奇事件とやらで幾つかの取材があったが、曖昧に流していたら興味がなくなったのか潮が引くようにいなくなった。
清々するが、同時に事件も忘れられてしまうだろう。
――いらいらする
地震があった。
とおもう。
がどうでもいい話だ。
何度も脱走したせいで看護師が常に傍らにいる。
地震があったので手を引かれ避難する。
――こっちこっち
呼ばれたので行くために看護師を殴った。
呆然としているのでもっともっと殴った。
――もっともっと
しばらくしたらろくに反応を返さなくなった。
わたしもこうだったんだろう。
と客観的な目で見ている。
――ざまあみろ
まだ生きているので、近くにあった石を持ち上げて、やめた。
手にかけるならあいつだと決めている。
――よかったね
腹の底から笑える。
――じゆうだ
混乱した状況の中、フワフワした足取りで呼ばれるままに歩く。
誰もが手いっぱいで、だれもわたしを見ていない。
――あのときもね
うん。
誰もわたしたちを助けてくれなかった。
――これからもね
思考が支離滅裂だ。
仕方のないの事だと割り切っていることなのに、今まさに理不尽にさらされているようないら立ちがわき続ける。
この感覚は忘れられない。
時系列が無茶苦茶になったあの時だ。
――おいしかった?
吐き気がする。
だから吐き出した。
――きれいだね!!
胃液に混じって見覚えのある指輪が転がり出る。
中身もまたぐちゃぐちゃになっているようだ。
ズグズグとおなかの中が暴れている気がする。
いや、正確には下腹部だ。
――きひひひひ
それが意味することに気づいた瞬間、走り回る緊急車両に飛び込んだ。
死にたくなって、ついでに遅れろ。
――やったやった
大騒ぎになっている場所を少し離れた場所からみている。
わたしが世を儚んで自殺したらしい。
だから私はよくとがったガラス破片を拾う。
手に持ったらちょうどいい感じだったので、首を掻き切った。
――いたい?いたい?
血でぬれたわたしが眼前で寝転がっている。
なので踏んで乗り越えて、火がくすぶっている家がある。
だから入り込んで、ガスの元栓があったので開いてライターをつけた。
――はではで!!
ガス爆発で四散したわたしの死体が飛び散った。
蹴ってどかして歩き続ける。
確信した。
わたしは自殺できなくなっている。
自殺したわたしは、どれも正真正銘のわたしだその確信がある。
吐き気がする。
――あはははは!!
うるさい!!
腹を殴る。
芯に響く鈍痛が走る。
がそれでも殴る。
――むだむだ
声が脳裏から離れない。
殴った場所を見るとひどいうっ血ができている。
その痛みを抱えたままあてどなく――いや、行く場所は知っている。
――あとすこし
ビル一つ分ほどの空白がつい最近できた場所へとたどり着いた。
瓦礫の山を登り、まっすぐ進む。
そしていくつかのごみをひっくり返す。
あった
何らかの果実のように見えるものだ。
大きさはリンゴほどだが、灰を固めたような質感と色だ。
重さはズシリとくるほど重い。
――たべてたべてよ
うるさい!!
いわれなくてもわかっている!!
拾ったものを口にするなんて以前は思いつきもしなかったが、ごく自然に行う。
「ぅげ」
一口目は焦げた料理――炭を噛んだようにじゃりじゃりした。
味もまたそれに従い、胃袋の奥から突き上げるような異物感がある。
二口目は味は感じず、痛みを感じた。
口の中がかきむしられ、喉がつねられ、胃袋が突き刺される。
三口目は――家族の味がした。
「ぅ」
吐き出そうとする。
でも吐くことができない。
指を喉に押し込み吐き出そうとする。
――おいしいね
「どこが!!」
吐き出せないので残りを無理やり食べきった。
と、そこで誰かに取り押さえられる。
目を向けると病院の看護師たちだ。
「ようやく見つけた!!」
「ひどいせん妄状態です!! 拘束する準備を!!」
どこかに連絡をしている。
だが、目的は達成できた。
――たのしみだね
吐き捨てる。
「どこが!! みんなみんな!!」
力の限り暴れる。
世の中気に入らないことばかりだ!!
「みんな死ね!!」
――まっててね、もうすこしもうすこし
夜にまた投稿できるようがんばります。