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勇者の初来襲から数日が経った。

迷宮は忙しくも平穏な日々が訪れていたが、魔王の与り知らぬ所ではマサトと勇者による激しい攻防(マサトによる一方的な嫌がらせ)が起こっていた。

スパムメールに始まり、巨大掲示板にメールアドレスや携帯番号を晒されたためにアドレスや番号を変えたり、変える度に同じ事を繰り返したりと、かなり地味だが勇者は反撃出来ないために効果覿面で、精神的ストレスで心がささくれ立っていった。

そして嫌がらせをしながらも迷宮をつくろうのシステムの解析は徐々に進んでいた。


そんな或る日の事、八畳間にボイスチャットの着信音が鳴り響いた。


「参ったな・・・予想よりちょっと早いが・・・・・マサト、逆探知出来るか試してくれ」


「え・・・流石に拙くないですか?ばれる可能性の方が高いと思いますよ」


「ああ、解ってる。だがルール上直接手を出すのは天神が許すとは思えないんだよ。だから多少無茶でもやってみる価値は有ると思う。頼めるか?」


「・・・・・解りました。でも、少しでもやばそうなら直ぐに手を引きますからね」


マサトを601号室へと送り出し、椅子に座って深呼吸しつつ時間を稼いでいると、前回同様待ち切れなくなったのかスピーカーから邪神の怒鳴り声が響いて来た。


『ちょっと!あんた何で出ないのよ!』


「あ~・・・それは前回勝負が決まるまで干渉出来ないって言ってたじゃないですか。だから悪戯の類かと思いまして、こちらから出なければ諦めるかなと」


『・・・・・まぁ良いわ、そう言う事にしといてあげるわよ。で、あんた何で勇者達殺さないのよ、この間やっとけば勝てたじゃないの!』


「あはは・・・ばれました?いやぁ俺にもちょっと思う所が有りましてね。倒す前に色々やって置きたい事とか有るんですよ」


念の為に言い訳を用意していたが、少し緊張してしまい言葉遣いがおかしくなってしまった。だが、このまま行くしかないと開き直って話し続けた。


『何よそれ・・・何企んでるのか知らないけど、舐めた真似したら唯じゃおかないわよ』


「やだなぁ企むとか人聞きの悪い・・・いえね、ちょっとお願いが有りましてですね、そのための下準備をしているんですよ」


『・・・・・お願い?勝負が着くまで介入出来ないのは知ってる筈だけど?』


「いやいや、勝負はもう着いてる様なもんじゃないですか。お願いって言うのはその後の事なんですよ」


『その後ね・・・成る程、報酬が欲しいとか、そう言う話かしら?』


「お~流石邪神様、話が早い。お願いって言うのはですね、報酬としてこの世界・・・銀河系とは言いませんから、せめて太陽系を俺に貰えないかと思いまして」


『ふぅん・・・・・まぁ人界全体からしたら微々たるもんだし、報酬としては安い位だけど、それと勇者達を倒さない事が繋がらないんだけど?』


「いやいや、俺達ここから出られないでしょ?迷宮の入り口塞がれちゃったら収入が無くなって買い物出来なくなっちゃうじゃないですか。だから人間達とは仲良くしておく必要が有るんですよ。最近になって人間達に受け入れられる様になってきた所なんで、今勇者や聖女を殺した事がばれるとやっぱり魔王は危険だって事になりかねないんです」


『それならその星でも自由に活動出来る様に魔力で満たしても良いけど?』


「それだとこの星が他の星みたいに魔物が生まれたりして変わっちゃうでしょ?ここは魔力が無い分科学が発展して独自の文化を形成してるじゃないですか、俺はそれを無くしたくないんですよ」


『・・・・・成る程ね。それで人間から支持を得て共存したいと。そう言う事?』


「ですです、今まで一万回もやって来たんだし、一年や二年位誤差の範囲でしょ?だからもう少し待って貰えませんか?信用を得るって言うのは時間が掛かるものですし」


『そうね・・・言いたい事は良く解ったけど、天ちゃんが気が付いて文句言って来ると思うのよね。余りにもあっちに不利過ぎるからさ。待てても一年かしら・・・・・場合によってはやり直す事になるかもしれないけど、それが嫌なら早いとこ勝負を決める事ね』


「いやぁ寛大な措置有難う御座います。出来得る限り最善を尽くしますので、今暫くお待ち下さい」


通信を終え、これで最低でも地球は守れるし時間も稼げたと、胸を撫で下ろした。

ここまで読んで頂き有難う御座いました。

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