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アクアが捜索を開始した頃、嬉しそうな笑顔でデミスの少し前を歩く惟河に少し俯きながらデミスが問いかけた。


「・・・・・なぁ何であたいなんだよ・・・今のお前の見た目なら態々こんな所まで来なくたって幾らでも相手は見付かるだろ」


「・・・正直理由なんて無いですよ。一目惚れってそう言うものでしょ?」


「解んねぇよ・・・恋とか愛とか柄じゃねぇし・・・・・それに・・・あたいは悪魔であんたは人間だ・・・寿命だって違うし・・・・・あたいは!・・・ここから出る事さえ出来ないんだぞ!良いのかよそれで!」


「解ってますよ。さっき言ったじゃないですか・・・魔王様に雇って貰うつもりだって・・・・・魔王様なら出来るんじゃないですか?僕を悪魔にする事が」


「馬鹿かお前!自分が何言ってんのか解ってんかよ!!軽々しくそんな事言うんじゃねぇ!!」


「だから解ってるって言ってるじゃないですか。それに・・・軽くなんてありませんから。惚れた女の為に全てを賭ける事が軽い事である筈ありません。貴方が魔王様の為に命を賭けられる様に、僕も貴方の為なら命位賭けて見せますよ」


「・・・そ、そんなの・・・・・・・」


「今は・・・信じて貰えなくても構いません・・・・・デミス様、僕は貴方が好きです。これから貴方に信じて頂く為にも御傍にいる事をお許し下さい」


「狡ぃよ・・・そんな言い方されたら・・・・・へっ?!」


会話の途中で突然惟河がデミスに飛びついて押し倒した。


「ッ・・・てめぇ行き成り何しや・・・・・え?・・・何だよこれ・・・・・」


惟河を引き剥がし、上半身を起こしたデミスの掌に惟河の脇腹から流れた血液が付着していた。


「チッ・・・邪魔しやがって、色ボケして警戒心失ってる内なら喰えると思ったんだがなぁ」


声のした方へとデミスが振り向くと、そこには長さ50cm程のバールを右手にぶら下げた十代半ばの男性が不敵な笑みを浮かべて立っていた。


「てめぇ!行き成りふざけた真似しやがって!何者だ!」


「ははははは!何者だじゃねぇだろ『堅牢のデミス』様よぉ」


「なっ!貴様、勇者かぁ!!来い!魔装・黒耀!!」


デミスの身体を闇が包み込み、闇が漆黒の鎧を象っていく。


「おいおい、俺の事よりそいつの治療した方が良いんじゃねぇの?そいつが死のうが俺の知ったこっちゃねぇけど」


「ふざけんな!こいつは何もしちゃいねぇだろうが!!」


「ハッ!ぬるい事言ってんじゃねぇよ、魔王に与する奴は全て敵だ・・・おっと、厄介な奴が来やがったな」


勇者を睨むデミスの背後からアクアがやって来た。


「デミス様!ここは私にお任せを!至急彼を城へお運び下さい!」


「・・・アクア、そいつに手を出すな・・・そいつはあたいがやる」


「ククク・・・知ってんだぜ、魔王の命令で俺に手ぇ出せねぇんだろ?奴に言っとけ『どんな手を使ってでも貴様の首を取ってやる』ってな」


デミスは横目で勇者を睨みながら無言で惟河を抱き上げると転移した。


「さて、今日の所はこれで帰らせて貰うぜ。ここで出来る強化はもう終えたし、他は兎も角あんただけは如何しようも無いんでな・・・俺は鈴木隆だ覚えとけ」


勇者は地面に置かれたバックパックにバールを仕舞い、歩きながらそれを背負うとそのまま迷宮を出て行った。

アクアは俺に勇者の捕縛を進言したが、聖女と勇者が揃うのは拙いと言われ彼が出て行くのを見ている事しか出来なかった。

四天王達は惟河の残した荷物を城に運ぶ以外に出番は無かったが、勇者と対峙する事で俺の様に精神的な影響が無いとも限らないので、これで良かったのかも知れない。


俺はこの件に関して全員に口外しない様に言い含めた。

傷害罪なのだが勇者が未成年と言うのも有るが警察・・・と言うか政府に抑えられる事で彼がどの様に扱われるか解らないからだ。

政府を信用していない訳じゃないが、彼とその家族の事を思うと俺に表沙汰にする事は出来なかった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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