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某月某日都内某所。


休日に表通りが歩行者天国になる事で有名なサブカルチャーの街の路地裏のコインパーキングに一台の車が止まっていた。

車の中にはサングラスにトレンチコートの男が運転席からまもなく歩行者天国になる表通りを身動きせずに睨んでいた。


「・・・もう直ぐだ・・・・・もう直ぐ時がやってくる・・・・・全てを解き放つその時が・・・・・・・・ククク・・・ハハハハハ!」


男は一頻り笑った後に時計を確認し、表通りに人が増えた事を確認すると車を降り、サングラスとトレンチコートを脱ぎ捨てて表通りへと駆け出した。


歩行者天国となった表通りを行き交う人々の間を縫う様に走る男に皆驚き、悲鳴を上げ、罵声と怒号を投げかけたが、男は唯ひたすら歩行者天国の中心に有る巨大な交差点を目指した。


交差点が近づくにつれ男の口元が怪しく釣り上がり笑みが零れた。


「・・・ハァハァ・・・ハァハァ・・・ククク・・・ハハハ・・・・・フハハハハハ!!」


高笑いをしなが交差点の中央に達した男は両手を広げ天を仰ぎ見、その鍛え抜かれた肉体を見せ付ける様にその場で笑いながら廻り続けた。


「ハハハハハ!さぁこの俺を見ろ!!フハハハハ!皆ぁ!俺を見てくれえええぇぇぇぇ!!」


男は全裸だった。


「ハハハハハ!最高だあ!アハハハハハハハハハ!!お前等最高だよおおおぉぉぉぉ・・・・・!!」


やがて男は集まった人達によって掛けられた様々な言葉と、向けられた携帯やカメラから発せられるフラッシュとシャッター音に包まれ、恍惚の表情を浮かべてその場に崩れ落ちる様に気を失った。

そして通報を請け駆け付けた警察官達は、時折ビクビクと痙攣する気絶した男を毛布で包み、野次馬達を掻き分けて連行して行った。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *



ネットのニュース速報を見ていた俺は、PCモニターにコーヒーを噴き出し咽てしまった。


「・・・ブハッ!・・・ゴホッ!ゲホッ!・・・『元自衛隊特殊部隊隊長ご乱心』って・・・犯人は『最早思い残す事は何も無い』等と供述しており・・・・・誰だよ、動画サイトにアップした奴・・・拡散しまくりじゃねぇか・・・・・・・アクア・・・今後全身洗浄は禁止な」




迷宮を明け渡してから十日経ったが、俺はメールやSNSへの返事は一切行わなかった。と言うかする気は無い。


先ず政府や市議会からの謝罪メールが気に食わない。

本気で謝罪する気が有るなら直接ここまで来いって話だ。


俺が直接的な危害を加えないからと言って舐め過ぎだろ。


更には三日前から市役所の職員が謝罪と称してやって来たのが気に入らない。

来るなら市長や市議会議員達が来るのが筋だし、市議会に参加した全員が謝罪に来ない限り遭う気も無いし、謝罪だけで済ます気も無いからだ。


その為、今は城の1階の入り口に鍵を掛けた上に、四天王達が交代で見張っていて、徹底抗戦の構えである。ちゃんと死守するって宣言したしな。

まぁ四天王達はノリノリで『此処を通りたくば我等を倒してみせよ』とかやってて遊ぶ時間が減ったわりに楽しそうだが。


そんな訳で暇になった俺はネットやTVを見ながらのんびり情報収集していると言う訳である。


そして二回目の治癒薬の引渡しの日が来たが、当然引渡しは行われなかった。何も無い迷宮で何時間も待たされた自衛隊の皆さんご苦労様です。

外で待ち構えていた報道陣に「私の楽園が―」とか涙目で訴えていた小谷さん、大丈夫?後で怒られるんじゃないですか?

榊さんも心配だ・・・元隊長さんの事がショックだったのか、なんかやつれてたし・・・・・


それから更に三日後、俺達はTVのニュースに驚かされる事となった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。


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