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一般開放三日目からは平日の為、入場者もぐっと減りアクアと警官達だけで問題なく回せる様になった。
午前から夕方までは小さな子供を連れた母親や年寄り達が地下10階を訪れ、地下9階はダイエット目当てのおば・・・お姉様達が流れるプールを逆走したり、地下8階は何かのサークルの会合等が行われている。
夕方になると近所の小中学生達がメインで、地下10階で動物と戯れたり地下9階で泳いだり果物を食べまくったりしていたので、夕飯食べられなくなるから程ほどにとアクアに注意して貰った。
夜になると仕事帰りの社会人達がメインでスポーツクラブ代わりに地下9階のプールに来る者が多かった。プール大人気である。
一週間の流れは大体こんな感じで、二度目の週末は四天王達の出番も殆んどなく終った。
そして俺は仕事に、四天王達は遊びにと、解放以前の日常が帰って来た或る日、俺の携帯にクライアントから着信が。
「はい、伊竹です。何時もお世話に・・・・・は?・・・今月分も含めて依頼が無かった事になってるって何です?!」
『いや・・・伊竹さん、貴方魔王なんでしょ?貴方を含めて迷宮の有った場所に元々住んでた人がどう為ったか知ってますよね?・・・その・・・言い難いんですけど社内で私以外に貴方の事覚えている人も居ないし・・・・・今月分から別の者が担当になってて私にはどうしようもなくて、ほんとすみません』
「い、いえ、態々知らせてくれて有難う御座います・・・・・それじゃ、失礼します」
色々な事が同時に起こり過ぎて俺の戸籍等が無かった事になっている可能性を完全に失念していた。
俺は椅子の背凭れに体を預け暫くの間呆けていた。
小さな頃から絵を描くのが好きで、中学に入ってこの道に進む事を決めた。
高校入学祝に買って貰ったPCとグラフィックツールで基礎を学び、そこそこの物が作れる様になった時に両親が事故で他界。
身近な親戚なども居らず、高校を中退して思い出の詰まった住み慣れた家を売り、役所に紹介してもらった安いアパートに引越して親の遺産とアルバイトで生活をした。
慣れない家事と仕事に一度は諦めかけたが、学歴の無い俺にはこれしかないとアルバイトの合間にこつこつと積み上げ、単発の仕事を取れる様になり、漸く一人前になれたと、これからだと言う時にこれかよ・・・・・・・
目の前が紅く染まっていき、言い様の無い怒りが沸々と込み上げて来た。
「オォアァァァ!!」
俺は目の前に有ったコップを壁に叩きつけて粉々にすると、椅子から立ち上がり資料棚を引き倒し壁を殴りつけた。
「ガアアアアァァァァァ!!」
「陛下!如何なさいました!!リトラ!一体何が有った!!」
「皆様は部屋にお戻りを、私が宥めますから」
魔王と化して強化された俺の拳で殴られた壁は凹み、直ぐに修復され元へと戻るが、それでもお構い無しにやり場の無い怒りをぶつけ続けた。
「ふざっけんなっ!!くそっ!くそっ!くそがあああぁぁぁぁ!!」
打ち付けた拳から血飛沫が舞い散り、裂けた拳の怪我も直ぐに治り痛みすら感じない。
今更ながら自分がもう人では無く、化け物なのだと思い知らされた。
あの日、抵抗などせずに魔王に飲まれてしまえばこんな思いをしなくて済んだのか、消えてしまえば良かったと思った時、背後から優しく抱き止められた。
「・・・もう御止め下さい・・・私では代わりには為れませんが、ずっと御傍に居りますから・・・・・ですから・・・もうそれ以上は・・・・・・・」
リトラの温もりが、俺を気遣う言葉が荒れた心を優しく包み癒してくれた。
(ああ・・・そうか・・・・・あの時とは違うんだ・・・・・・俺はもう一人じゃないんだ・・・・・リトラが居てくれる・・・・・四天王達も・・・・・・・・)
「・・・すまん、リトラ・・・有難う・・・もう、大丈夫だ・・・・・・・」
俺を抱き止めるリトラの腕にそっと手を添えた。
「・・・それに、今なら仕事など選び放題ではないのですか?此方から頭を下げなくとも幾らでも言い寄ってくる者が居る筈です。先ずは迷宮のモンスター達の著作権の申請を致しましょう。かならず商品化したいと言って来る企業がやってきます」
迷宮に居るモンスターの内スライム以外は俺のデザインで名前等の設定なんかも有る。
「今やこの国にご主人様を知らぬ者など殆んど居りません、モンスターだけでなくアクアや四天王達のフィギュア化も有り得るでしょうね。これだけ有名に為ったのです、ご主人様はお好きな絵を描いてお待ちになれば良いのです」
いや、言われて見れば確かにそうなんだろうけど、釈然とし無いと言うか俺の感動を返せと言うか・・・まったく、リトラには敵わないな。
この日から俺は締め切りに追われる事の無い生活を送る事と為った。
ここまで読んで頂き有難う御座いました。




