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自衛隊の調査から二日が経った。
政府からの返答はまだ無いが、一日や二日で結果が出るなんて思っちゃ居ない。
まぁ気長に待とうと何時もの様に四天王達とTVを見ながら朝食を取っていると、ニュースで自衛隊に渡した治癒薬の事が話題になっていた。
因みに全員が座って食事の出来る円卓・・・と言う名の卓袱台はリトラの部屋から持って来た物だ。
まぁTVじゃ案の定『誰でも簡単に手に入れられる様にすべき』とか『世界中の重病者を助ける為に配るべき』とか『諸外国に対して有用な政治カードになる』等と勝手な事を言っていたが、そんなつもりは無い。
実際問題、俺達は食料が無くなっても死ぬ事は無いし、一般開放されなくても困る事は無いのだ。
治癒薬と言う有用なカードを一枚切った事で、こちらの方が圧倒的に有利な条件で交渉出来ると思っている。
無理難題や契約違反をしてくれば二度と相手にしなければいいのだから。
ピンポーン
そんな事を考えていると玄関のチャイムが鳴った。
「私が出ますので皆様は御食事の続きを」
リトラがそう言って立ち上がり玄関へと向かった。
四天王達の事をぶん殴ったりするけれど、こうして基本的には皆を立ててくれるし、自分から仕事を探して動き回る本当に良い子だと思う。
「あ、聖女だろうけど喧嘩しないようにね。って言うか他に来られる奴居ないし」
暫くして聖女を連れてリトラが戻って来ると部屋中に緊張感が漂い、四天王達の顔が険しくなる。
「ご主人様、聖女が食料を恵んで欲しいとの事ですが如何致しますか?」
「おお、思ったよりも持ったな。良いよリトラ、彼女にも食事を用意してやってくれ」
買い物出来る所も無いし、俺以外の携帯も繋がらない。もしネット通販等が出来るとしても、ここまで届けられる業者なんて居る筈も無いのだ。直ぐに食糧不足になって家に来るだろう事は解っていた。
「陛下!そこまでしてやる事は無いでしょう!生かして置くだけならスポーツドリンクでも与えて置けば良いのです!」
「そうっす!兄貴の言う通りですよ!こいつ等天神の僕に情けなんて掛けてやる必要はねぇ!」
「五月蝿いわね!私だって来たくて来た訳じゃないわよ!こいつを利用してでも生き延びなきゃならないんだから!仕方なくよ!仕方なく!」
「粋がるなよ小娘が・・・・・陛下の慈悲によって生かされているのだと自覚せよ。貴様なんぞ許しが有れば四肢を切り落とし臓物を引きずり出してやる所だ」
「あ、食事中だからグロ表現は止めてね?まぁ、前にも言ったけどこいつは操られてるだけだからさ。俺達と同じ被害者でしかないから多少の事は目を瞑ってやって」
一触即発と言った感じの皆を諭していると、リトラが聖女の分の食事を持って来た。
「ふん!別に感謝なんてしないわ。あんただって私が死んだら困るんでしょうしね!」
「あ~はいはい、困る困る。だから飯食って部屋で大人しくしててくれ。後で食材部屋に送っとくからさ。料理位出来るんだろ?」
その後聖女は黙々と食事を平らげ『ご馳走様でした!』と捨て台詞?を残して去って行った。
食後にお茶を飲みながらまったりしつつ、ちょっと気になった事を聞いてみた。
「そう言やデミスとリトラは聖女に絡まなかったな、何でだ?」
「ああ、あたいは嫌いな奴とは出来るだけ口利かない事にしてんだ。歴代の聖女なんて勇者に媚売って守って貰うだけの屑ばっかだったじゃん。口利く暇が有ったらサクッと殺っちゃうって」
デミスが四天王の中で一番ヤバかった。
「お、おう・・・そ、そうか・・・・・それじゃリトラは?」
「私ですか?私はご主人様の食事の邪魔をしたくなかったと言うのが一番の理由ですが・・・・・あの女の食事に一服盛ってやりましたので・・・ククク・・・・・アハハハハ!暫くしたら大変な事になるのでしょうね・・・クックックッ・・・敵地で出されたものを疑いも無く口にするなんて・・・フッ・・・何と愚かな女でしょう!アハハハハハハハハ!」
「・・・・・え~っと・・・俺にはしないで・・・ね?」
「ご主人様に盛るとしたら精力剤でしょうか・・・・・残念ながら持ってませんが・・・・・・・」
その後聖女は半日程トイレの住人になったと言う。
俺はリトラを怒らせない様にしようと誓い、ネット通販で食料と一緒にお詫びとして医薬品を聖女の部屋へ送った。
その日の夜は一服盛られない為にも頑張りました。
黄金龍怖えぇ・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座いました。