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俺達は恍惚とした表情のまま気を失った隊長をベンチに寝かせ、服を上に掛けてアクアと名乗った精霊の元へと向かった。
これで落ち着いて話し合いが出来るのだが、俺を含めた隊員達の表情は暗い。
「・・・・・流石魔王の部下だな・・・容赦ない・・・・・・・」
「あ、ああ・・・あれが自分だったらと思うと・・・・・全身の震えが止まらん・・・・・」
「・・・・・隊長・・・大丈夫ですよね・・・・・新たな扉開いたりしてないっすよね?」
駒田の言葉に振り返り隊長の表情を見た俺は・・・・・その問いに答える事が出来なかった。
「それでは皆様改めまして、ようこそ御出で下さいました。各機関にはご主人様から知らせが行っている筈ですが、皆様はどの程度まで御存知なのでしょうか?」
「ああ、俺達はネットに上がっている物も閲覧しているので全て知っています。まぁ上の頭の固い奴等は信じていないと言うか、何か有った時に責任を取りたくないから害が無いなら封鎖しておけと」
「副隊長、それはぶっちゃけ過ぎでしょ・・・・・まぁ俺達が派遣されたのも国民に対するアピール的な所も有るんだけど」
「要するに一般公開するためには政府等が納得出来るだけの交渉材料が必要だと言う訳ですね?」
「ええ、そう言う事です。例えば・・・・・あの木の実とかを一定量且つ定期的に出荷するとか・・・まぁそう言った物があれば話が早いんですが」
「迷宮産の物は基本的に魔力の無い外に出すと消えてしまいますが例外が有ります。どうぞ此方をお持ち帰り下さい」
突然俺達の目の前に装飾の施された箱、宝箱が現れた。
「こ、これは・・・中を改めても良いですか?」
「箱自体は中身を出しても、迷宮から外に出しても消えてしまいます。ですからここで中身を移し替えて行かれた方が良いと思いますよ」
宝箱を見て一瞬罠の存在が頭を過ぎったが、隊長と同じ目には遭いたくないと頭を振り、意を決して宝箱の蓋を開いた。
するとそこには試験管の様なコルクの栓がされたビンが三本入っていた。
「そちらは治癒薬だそうです。先天性のものや部位欠損は無理ですが、大抵の怪我や病気は治せるそうです」
「なっ!・・・・・それが本当ならばどれ程の人が助かるか・・・・・これはどれだけ用意出来るんだ?」
「幾らでも・・・と、言いたい所ですが、それでは既存の製薬会社等が潰れてしまうでしょう。ですから一本5000円で初回は五百本でどうでしょうか?以降は月に三百本で支払いは銀行振り込み。受け取りは毎月決まった日時と同じ方が来る事。別の方に代わる時には事前に顔合わせをする事。契約書の作成はそちらの方でお願いします。取り敢えずはこんな所でしょうか」
「あ、ああ・・・契約に関しては私に何とも言えないが、確かに伝えよう。それで、この薬は自衛隊・・・防衛省に卸してくれると言う事で良いのか?」
「ご主人様は、ここが一般開放されるのであれば取引先は何処でも良いと言っておりますが、おそらくは揉めるでしょうし、取引先は日本国政府とさせて頂きます」
「・・・・・そうだな・・・一省庁や個人で独占して良い物ではない・・・か・・・・・・・」
「今日の事も含めて契約後もSNS等で情報を流す事で政治の取引等に使われる事の無い様にしたいとも仰っております。先ずは日本国民で本当に困っている方達から利用出来る事を望んでおります」
「・・・解った、その旨も確かに伝えよう。それでなんだが、他の2フロアも視察したいのだが構わないか?」
「勿論です。さあどうぞ、先にお進み下さい」
隊長と小谷を放置して俺達は先へと進み、2階への階段を上った。
* * * * * * * * * *
「・・・・・暑いな・・・いや、地下10階も寒くは無かったが、ここはまるで夏の様だ・・・・・・・」
「・・・・・・・水着持って来れば良かったっすね」
「・・・いや、任務だし、泳ぐ訳に行かないだろ」
地下9階はまんま大型遊泳施設だった。
足元は石畳で更衣室だけでなくイルカやシャチの形をした浮き輪までも用意されていたのには驚きを通り越して呆れてしまった。
「あ、あれっすよ春、夏と来て地下8階は秋がコンセプトなんじゃないですかね?こう・・・果物とか秋の実り的な?」
「ああ・・・成る程な。まぁ行って見れば解る事だ、先に進むぞ」
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地下8階は予想とはちょっと違っていて釣堀がメインだった。
幾つかの池の周囲には木の実が実った木々とその根元には茸が生えており、調理する為の施設も用意されていた。
「釣りなんて子供の頃以来やった記憶が無いな・・・・・」
「俺は実家の近くが海だから帰省した時にはやってますよ」
「魚に茸か・・・・・他の野菜と肉が欲しいっすね。BBQ出来そうじゃないっすか」
「「それだ!」」
調査と言うか視察を終えて地下10階に戻って来たが隊長は気を失ったままで、小谷は動物達に囲まれて至福の笑みを浮かべていた。
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