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その日・・・私は、俺は・・・聖女に、勇者になった・・・・・・・






私はその日の早朝、地震と共に目が覚め慌ててベッドから転げ落ちた後、天井から降り注ぐ光に包まれて気を失った。

そして気が付いた時には聖女としての行動を強制された。


何故私が選ばれたのかは解らない。魔王城の一室となったマンションに住んで居たからなのかも知れないが、それこそ神のみぞ知ると言う奴だと思う。


私は服を着替えて台所から包丁を持ち出し、最上階に住む魔王の所へ向かった。

勝てないのは解っていた。それでも行かなければならないと言う使命感が身体を動かした。


私は何度も魔王に切りかかったが駆けつけたメイドに気絶させられた。


暫くして気が付いた私は気絶した振りを続け機会を伺っていたが、魔王は四天王達に最後となる今回は私と勇者を含めた人類と敵対する気は無いと言う。

魔王の言う事は理解出来る。でも私には与えられた使命から逃げる事は許されていないのだ。


だから捨て台詞を残し自室へと戻り、勇者と合流すべく最低限の食料と水を持って迷宮の出口を探した。

数時間掛けて迷宮の外周部に到達したが出口は見付からず、夜が訪れ闇に脅えながら疲れ果てて眠った。

翌日、当て所なく彷徨い続けても成果は無く、精魂尽き果てて魔王城の自室へと戻り倒れる様に眠った。


翌日は部屋中を漁り、長期間移動する為に必要な装備を探したが懐中電灯位しか見付からずに断念。勇者が来てくれる事を祈って待つ事に決めたのだった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *



その日の朝は何時もと違って母親に起こされて始まった。


「タカシ・・・起きなさいタカシ・・・・・おはようタカシ、今日は貴方の十六歳の誕生日。今日から貴方は勇者として行動するのです。さぁ私達の主で有る神の為に魔王を倒すのです・・・・・・・・・・・・・・朝ご飯出来てるから早く食べちゃってね、片付かないから」


「・・・ああ、解ってるよ・・・・・・・」


正直言って何で俺が勇者に選ばれたのか理解出来ない。

中学二年の時の虐めが原因で引き篭もった俺が何故勇者なのかと。

もしかしたら某有名RPGの様な台詞を母に言わせたいが為に今日が誕生日の俺が選ばれたのでは無いかとさえ思う。

台詞の後半は素に戻ってたし。


部屋を出て階段を下りTVを見ながら朝食を取っていると、ニュースで豪い騒ぎになっていて俺も驚いた。

過去の勇者の記憶では魔王城と迷宮が街中に出現した事など無かったからだ。

だがそれ以上に困った事になった。


「・・・なぁ母ちゃん・・・・・一番近い空港って何処だっけ?」


「馬鹿な事言ってないで早く食べちゃってよ、片付かないでしょ」


交通機関に関しては後で調べるとしても問題はお金だ。

俺は今まで働いた事が無い。年齢的にもだが引き篭もっていたのだから当たり前だ。


俺の住んでいる所は本州の西の端のY県で、魔王城は関東のC県だと言う・・・・・


取り合えず親父が仕事から帰ってから相談してみたがヤバイ薬でもやっているんじゃないかと疑われた・・・・・・・


正直歩いて行けるとは思えない。ならヒッチハイクか?いや、それでも俺の貰っている小遣いでは滞在費と言うか食費ですら数日しか持たない。

聖女を探して合流しなければならないと言うのにだ。


色々考えた末、支援して貰うしかないと結論付けたのだが・・・・・


誰に?と言うか何処に?取り合えず市役所に行ってみたが該当窓口など有る筈が無い。

次に警察署に行って見たのだが・・・・・薬物検査をさせられた上に親を呼び出され、精神科へ行く事を進められた・・・・・・


俺は無力だ。勇者だと言うのに何も出来ないと、心は折れ掛かっていたが神から与えられた使命がそれを許さなかった。


その日の夕方のニュースでは魔王のSNS等が話題になっていると言っていたが、俺はPCはおろか携帯すら持っていない。

引き篭もっていた弊害で世事に疎く、SNSの意味さえ解らなかった。


翌日、俺は日払いの仕事を求めて派遣会社に登録をした。


両親は喜んでいたが長く続けるつもりは無い。

申し訳無いとは思うが、俺には魔王を倒すと言う神から与えられた使命が有るのだから。


俺の名は鈴木隆。魔王を倒すために戦う勇者だ。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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