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97話 お姫様とデート

前回のあらすじ「周りの圧が強い!!」

―ユノと付き合う事が決まって1週間後の朝「車内」―


 6月……まだまだ梅雨の時期だが、前日の雨は止んで今日は珍しく晴れている。ただ車のラジオから流れる天気予報では午後から雲行きが怪しくなり、雨が降り始めるらしい。


「薫さん?今、このらじお?から人の声が聞こえるのですが何を言ってるのですか?」


「この後、天気が悪くなるって言ってるんだ。今は梅雨の時期だからね」


「つゆ?」


「この時期は雨が降り続ける時期なんだ。それを梅雨っていうんだ。言葉の由来はお隣の国である中国からきたらしいんだけどね。他には五月雨とか言うね。こっちは5月に降る雨だからっていう理由なんだ」


「あれ?確か泉さんと話してた時、こっちでは今の時期は6月、5月は前の月になるんですよね?」


「昔、日本では今の暦とは違う暦で旧暦っていうのが使われていたんだ。それだと今の時期はまだ5月なんだ」


「へえ~。薫さんって物知りなんですね」


「小説を書いてるからね。言葉の意味とか由来とか調べたりすることが多いんだ」


 僕は目的地へと車を走らせながら、ユノの質問を答えていく。


 なんで今、僕とユノが一緒にいるかというと、ユノと付き合う事が決まったその日に僕の両親は仕事の関係で帰っていった。今度はお盆に遊びに行くから!と母さんは言っていたけど……。そして次の日、ひだまりでいつも通り仕事をしているとハリルさんたちがやって来て、ユノがこの日は空いているという事をわざわざ伝えに来てくれた。それを聞いた昌姉は、デートしに行ってらっしゃい!と言って、マスターもそれに同意して今日のひだまりの仕事はオフとなった。また、デートの邪魔になるからとレイスも泉たちと一緒にグージャンパマへ行ってしまった……。


「まさか……こんなに周りから応援されるなんて……」


「ご迷惑でしたか?」


「うんうん。ただ周りからのプレッシャーというか気迫というのに大分押されているなと思って……。そもそもなんだけど。僕で本当にいいの?歳だって大分離れているし……」


 30歳と17歳。親子ほど年が離れている訳では無いが、しかし世間的には少々離れ過ぎじゃないかと言われてもおかしくはない。


「問題ありません!かわいいは正義ですから!」


「かわいい……男として見られていない気がしてならないんだけど……」


「でも、私としては女性を恋愛対象として見ることは出来ないんですよね……何故か。見た目は女性のようにかわいいいとか美しい男性がいいとは思っていましたけど」


「カーターやシーエさんのように男性としての美しさとかカッコいいとか身長が高いとか、後は少し筋肉質とか……」


「うーん……あまり……やっぱり、薫さんみたいな人が私にとっては一番……えーと、どストライクみたいです」


「どストライクって。その言葉……泉が教えてくれたの?」


「はい!」


「そうか……そういえば泉とはどこでお喋りをしてるの?」


「フロリアンです。学校が終わった後に時々ですが立ち寄ってるんです。それに服を作ってもらったりしてますから。この服も作ってもらったんです」


 信号機が赤になったので車を停止させてユノの服を確認する。白のオフショルブラウスに中には黒のノースリーブトップス、そしてデニムという動きやすい服装で、こっちの世界でも見かける服装になっている。ちなみにトップスでしっかり隠れているはずなのだが、その…ユノの胸の大きさが分かってしまう。男としてはどうしてもそういう所に目が一度は行ってしまうのは定めなのだろうか。


「あ、薫さん。前のアレ色が変わりましたよ」


 ユノに言われて、車を再び走らせる。


「それで……この服、似合ってます?」


「うん。似合ってるよ。誰もあっちの世界の住人とは思えないし、今どきの流行を取り入れた女性にしか見えないよ」


「よかった!」


 助手席に座っているユノを見ると、ニコニコという表現がふさわしい笑顔をしている。


「それで……どこに向かってるんですか?」


「遊園地。色々、考えたんだけど、こっちの世界をあまり知らなくても楽しめるかなって」


「ゆうえんちですか?どんなとこか分からないですけど楽しみです♪」


 今日のデートを考えた際に、美術館や温泉地もあるのでそこも考えたのだが、娯楽の少ないグージャンパマで暮らすユノの事を考えるとこっちの方がいいかと思って決めた。その後、他愛のない事をお喋りしながら僕は車を走らせるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「地方某遊園地」―


 朝早く家を出たため、難無く遊園地に近い駐車場に車を停めることが出来た。僕たちは車から降りて園内のゲートへと歩いて向かう。


「いや~よかったー……ここ専用の駐車場が無いから心配したんだよね」


「えーと……どういう意味ですか?」


「ああ、そうか。ゴメンゴメン。僕の言っている事が良く分からなかったよね。今、車を停めた場所ってね。今、左に見えるこの遊園地の専用の駐車場じゃなくて、ここに隣接している公園や運動施設の駐車場なんだ。それだから時と場合によっては大分遠くに停めないといけなかったりするから大変なんだよね」


「よくは分からないですけど……とりあえず近くに車を停められてラッキーってことですか?」


「それでオッケーだよ。あそこのゲートを超えると園内だよ」


 ここの遊園地には入場料が無いので、そのままゲートを越える。


「これって全て遊ぶための施設なんですよね……この回っている物も」


「これは観覧車。あの小さな箱に人が乗って外の景色を楽しむ乗り物なんだ。それで、ユノが気になる乗り物とかある?」


「えーと……あれ。あれも向きは違いますけど小さな箱が回転していますよね?」


「案内板だとヘリタワーっていう名前みたい。乗る?」


「はい!」


 僕はのりもの券を購入して係員に必要枚数を渡す。これが一人140円は大分安いと思う。6つあるうちの青のヘリを模した箱に僕たちは乗り込む。しばらくすると乗り物が動き出して地上より少し高い所を回り出す。他に似たような乗り物が二つ程あるのだが、これはスピードが速いわけでも、また乗り物が傾斜することも無いので安心して乗れる。まあ、ユノにとってはそうもいかないみたいだけど……。


「高い所をこんな風に回るなんて、面白いですけど……少し恐いですね」


「まあ、今までそんな経験無かったもんね」


「そうですね。こんな感覚初めてです」


「次は……そうだな。遊園地って言えばこれっていうオーソドックスな乗り物に乗ってみる?」


「どんな乗り物ですか」


「あそこにあるメリーゴーランド」


「馬とか馬車を模している乗り物ですか?」


「そうだよ。まあ、ユノの場合は本物に良く乗ってるから、あまり新鮮味が無いかもしれないけど」


「でも、あれらとは全く違うものですから乗ってみたいです」


「それじゃあ、行こうか」


 乗り物から降りた僕たちは、次に乗るメリーゴーランドへと移動する。僕が馬に乗ると、ユノも同じく馬に乗る。


「動いている間はこの棒を掴んでね。これもそんなに激しくないから落ちることは無いと思うけど」


「はい」


 ユノが棒を掴み準備が整うとほぼ同時にメリーゴーランドが動き始める。


「あ、これ。クルクル回りながら上下に動くんですね」


「うん。馬の騎乗をイメージして作られてるんだ」


「でも、この前のユニコーンちゃんの方が乗り心地がよかったですね」


「ふふ。そうだね」


 ユニコーンと契約してから頻繁に騎乗の練習をしているが、かなり乗り心地はいい。まあ、意思疎通が出来るので普通の馬と違ってかなり細かい指示を出せるとか、水属性の魔法を使って衝撃を抑えながら走れるとか……馬と比較してはいけない気がしてきた。そんなことも思いつつ、ユノと楽しくお喋りしながら乗っているとあっという間に終わってしまう。僕たちはメリーゴーランドから降りて次に何に乗るか話をしながら移動を始める。


「面白いですね!」


「気に入ってもらえて何よりです。お姫様」


「姫じゃなくてユノで呼んで下さい!」


「ゴメンゴメンって……それで次はどうする?」


「うーん……あれは?」


 ユノが指差したのは、特大エアー遊具だった。


「あ~……あれは止めとこう。あれ。小さい子供用だから」


「え?そ、そうなんですね……」


「じゃあ、あれはどうかな?園内をグルっと一周できるんだけど」


「乗ってみたいです!」


「じゃあ……」


 その後、色々な乗り物で遊んでいく。とはいっても数がたくさんある訳では無いので、2,3時間もあれば全て回ることが出来た。そして最後の乗り物、観覧車に一緒に乗る。


「ジェットコースターと急流すべり……すごかったです」


「絶叫系マシーンだからね。ここには無いけど垂直に落下するフリーフォールっていう乗り物もあるよ」


「垂直に落ちるんですか!?な、何か恐そうですね……」


「まあ、悲鳴は出ちゃうね……あ、外を見て」


「うわ~……すごいです!この辺りを一望できます!」


「この辺りだと、一番高いからね。これが桜の季節だったらお花見も楽しめるよ」


「桜?」


「日本を代表する花だよ。花は桜の種類によって白色や薄いピンク色から濃いピンク色なんかがあって、花びらの数も変わってくるんだ。特に日本に多く普及しているソメイヨシノは見頃がだいたい一週間ほどで、その一斉に咲き一斉に花が散るという優雅とはかなさが人々を魅了させている。春の開花時期になるとテレビやラジオではよくニュースになるよ。ここの桜もそのソメイヨシノだよ」


「そうなんですね。もっと早く来れたらよかったのに……」


「それだったらこの後、この時期の日本を代表する他の花を見に行ってみる?近くに名所になっている場所があるからさ」


「いきます!」


 この後の行先が決まった後、僕たちは観覧車の窓から見える景色を僕が説明しつつ楽しむのだった。


「あそこの山々はそれぞれ名前があってね。軍艦の名前にも使われているんだ。中には一航戦にも…」


「あの~?言ってることが分からないんですが……?」

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