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95話 町探索からの乗馬

前回のあらすじ「フィーロ…死す!(注:息は吹き返してます)」

―翌日「ビシャータテア王国・王都商業地区メインストリート」―


「うわー……凄い。え、あの犬耳モノホンなの?」


「本物だよ。あとあそこのエルフも……」


「うわ。長身で細身……しかも美形……デルモみたい」


 翌朝、僕たちは泉たちそして両親と一緒にビシャータテア王国の街中を歩いている。初めての異世界の探索で両親はさっきから驚きしっぱなしだ。


「精霊も行きかってるんだね……こんな歳でこれほどの体験が出来るなんて……いい冥途の土産だね」


「何言ってるんだい?まだまだ、生きてもらわないと、まだ孫の顔もみてないんだからね」


「そうだったね。明菜」


 そう言ってイチャイチャし始める。もう60過ぎたのに……。


「あれ?そこの女性……キトンを着ている……異世界にもあるんだね」


「ソウダネ……」


「どうしてカタコトなんだい?」


「だって、流行らせたの薫兄だもん」


 一緒にいる泉が母さんの疑問について答えた。……言わないで欲しいんだけど。


「あんた……」


「違うから、訳があって着ることになっただけだから」


「分かってるって……手術の費用は出してあげるからさ」


「分かってないよね!!」


「あ。着いたのですよ」


「ここが泉ちゃんが働いているお店?」


「うん。フロリアンっていうんだ」


「へえーー……」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「フロリアン・店内」―


「いらっしゃい……ああ、泉さんにフィーロさん」


「おはようございます!」


「おはようッス!」


「おはようございます……今日は勇者様たちもご一緒なんですね」


「え?勇者?この子が?」


「はい……こちらのお子さんは?」


「薫兄のお母さんだよ?」


「え?勇者様の?だって……え?」


 店員さんがキョトンとした顔で僕と母さんを交互に見る。


「おやおや、ようこそ薫さん。ご無沙汰ですね」


「シークさん。おはようございます」


「ええ。おはようございます。それで聞こえていたのですが、そちらの女性がお母様という事で?となると、そちらはお父様ですか?」


「はい」


「息子がお世話になっています。成島 茂です」


「茂の妻の明菜です」


「この店の店長をしています。シーク・アストルです。以後お見知りおきを。それで今日はこのお店に何用で?」


「この子達にこの町の案内をしてもらっている最中でして、このお店って洋服屋さんですよね」


「その通りでございます」


「二人共、何か欲しい服とかある?」


「うーん。まあ、そろそろ季節ものが欲しいな~って思っていたけど……買えるの?」


「うん。こっちの金貨を持ってるから」


「それなら……」


 そう言って、母さんが服を見ていく。父さんもその後を付いていく。


「で、シークさん驚かないんですね……」


「ええ、まあ。長年生きていると驚くというのに鈍感になるといいますか。そんな所ですよ」


 凄いな……僕もシークさんみたいな渋くてカッコイイ男性になりたいな。


「シークさん。アレを持っていきたいんですけど」


「アレですね。専門の者にチェックを入れてもらってオッケーが出たので大丈夫ですよ」


「ありがとうございます!行こう!フィーロ!」


「ういッス!」


 二人が店の奥の方にいってしまった。この後の予定に必要なアレを持って来るのだろう。


「あ!これいいかも!どうかな!?」


「いいんじゃないかな?」


 この後、両親へのプレゼントとして洋服を購入、店を後にした。ちなみに洋服の効果は暑い季節でも服内の温度は適温を保ち、超速乾性で汗染みの心配いらずという物だった。


~♪~~♪♪


 母さんが鼻歌を機嫌よく口ずさみながら、僕たちは次の目的地へと向かうのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「ビシャータテア王国・庭」―


 その後、魔石を売っているお店や食べ物とかを売っている屋台とかに寄りながら今回の目的地である王宮に着いた。そして門番の人に挨拶をしてそのまま門をくぐっていく。ただ今回、向かうのは王宮ではなく気球の時に使用した広い庭へと向かう。


「ここって王宮の庭だろう?いいのかい勝手に入って?」


「王様には許可をもらってるから大丈夫なのです」


「へー……」


「ここでは何をするんだい?」


「乗馬だよ。基本的な事はカーターやシーエさんに教えてもらってるんだけどね」


 アイテムボックスから先ほどフロリアンから持ってきた馬術用の道具を出す。


「馬術?にしては馬がいないけど?」


 母さんが辺りを見回すが、当然ながらここには馬なんていない。


「今、呼ぶ」


「呼ぶ?」


「うん。おいで……ユニコーン」


 手を前にかざして念じる。すると地面に紋章が浮き上がり、そこからユニコーンが飛び出す。ユニコーンはそのまま僕に近づいて頭で僕をこすりつけてくる。取れた角はまだ完全には治っておらず、頭部に少しばかりのでっぱりがあるだけだ。


「よーしよし……」


 僕はユニコーンの頭を撫でてあげる。


「……ユニコーンってあんた」


「明菜おばさんもそう思うよね……乙女認定だよねこれは」


「泉?ここのユニコーンは処女設定は無いから」


「それでも女性限定なのです」


「男性は触れられないッスよ?」


「薫……費用は……」


「しないから!」


 僕は両親の意見に反対しつつ乗馬に必要な道具をユニコーンに取り付けていく。今までは王宮にある物をお借りしていたが、今回はフロリアンから持ってきた専用のを使う。


「私も……と」


 泉も呼び出し乗る準備をする。それからしばらくしてお互いの準備が整う。


「はっ!」


 僕の呼びかけに応えて、ユニコーンが走り出す。手綱を使って右や左。スピードの上げ下げは言えば伝わるので、テレパシーで調整する。泉たちの方も庭を自由に走っている。ちなみに専用の馬具を使っているせいか座り心地がいい。


「すげぇことするよな。お前達は」


「これがユニコーンなのですね……感動です」


 声のする方を見ると、そこにはサルディア王に王妃、ユノが見ていた。僕は王様達の方へユニコーンを走らせて、近くで止まる。


「王様!王宮のお庭お借りしています!」


「分かってるって」


「うん?王様?」


 両親がこっちへ近づいてくる。


「うん?こちらの子連れの親子は……?」


「あ、僕の両親です」


「はじめまして。成島 茂です」


「母の成島 明菜です」


「…………聞いていたが子が子なら親もか」


「薫のお母さま……私と同年代か年下にしか見えないんですが?」


「そ、そうね……てっきりユノと同年代かと」


「いや~私もつい最近65歳になって……すっかり老人の仲間入りだね……」


「いやいや!え?俺より年上?このなりでか?いくらなんでも人間離れしすぎだろ!」


 王様のその意見にはごもっともである。というかカーター、母さんの年齢を伝えてなかったのかな?


「それで王様?僕たちに何か用ですか?」


「あ?……ああ。今、ユニコーンに乗馬してるって聞いたからよ。ユニコーンがどんな物かこの目で確認したくてよ」


「夫がユニコーンを見に行くということなので、ちょうど用事も無かったので私達も一緒に見に来たってわけです」


「そうでしたか……」


「ねえ薫?それって私も乗せてもらえたり出来るの?」


「えーと。どう?」


「(いいよー)」


「大丈夫だって」


「そうか…じゃあ、乗せてもらおうかな。私は泉ちゃんたちに乗せてもらうから……ユノちゃんは薫に乗せてもらってね♪」


「え?母さん?」


「いいのですか!?」


「乗りたそうな表情だったしね。薫いいよね?」


「う、うん。それじゃあ……」


 ユニコーンがその場に座り、ユノが乗りやすい姿勢になる。


「し、失礼します」


 そして、ユノが僕の前に潜り込んでくる。……ユノから微かに花の甘い香りがする。まだ二十歳を迎えていないとはいえ、その大人びた姿は男性として異性を感じるものがあって……この状況に少しドキドキしている。


「じゃ、じゃあいくよ」


「お願いします!」


 そして、僕はユニコーンの頼んで走ってもらうのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「王宮・庭」明菜視点―


 息子がユノちゃんを乗せてユニコーンで走っている。よく子供の頃から美少女として周りの人達からちやほやされていたけど、まさかユニコーンに認められるとは……。


「それに……」


 今のユノちゃんの表情、そして薫を見る目……間違いないね……。


「どうしたんだい明菜?」


「どうした?ってあれよ。あれ」


 私は親指を使って薫達を差す。


「あの子の孫も見れるかもね」


「なるほどね……君が見てありそうなのかい?」


「なんとなくだけどね……まあ、それは後にして私も乗って来なくちゃ!茂!写真しっかり撮ってね!」


「分かったよ」


 私はそのまま泉ちゃんに近づいてユニコーンに乗せてもらう。薫のユニコーンに乗らなかった理由に角が無かったからというのもあったんだよね……この歳で、こんなにワクワクするなんて夢にも思わなかった。


「おばさん。いくよ?」


「オッケー!いっちゃって!」


「はいよー!シルバー!ッス!」


 ユニコーンが走り始める。見た感じだが、どうやら手綱とかで指示をしてるのではなく、もっと違う何かで指示を出しているようだ。


「泉ちゃん?どうやってユニコーンに指示してるの?」


「えーっと……テレパシー?」


「超能力ってか……あのユリゲラーもびっくりだよ」


「エスパータイプの?」


「私が若い頃の有名人だよ」


 泉ちゃんとそんな話をしながら、薫が住んでいる実家に同居しようか、私は真剣に考えるのだった。

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