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94話 子も子なら親も親

前回のあらすじ「やっと魔王が出て来た」

―午後「カフェひだまり・店内」―


ざあざあ……


「今日も雨か……」


「そうだな……」


 色々あった5月が過ぎて今は6月、梅雨の時期である。昨日から降り続いている雨は少しだけ弱くはなっているが、それでも傘は必須な天気である。そんな天気のためか店に来るお客さんがいない。ということで、ただいまお店は開店休業中である。


「先月は色々あったな……」


「だな。この前のあれには驚いたが……」


「昌姉……大喜びだったもんね……」


「二人共どうかしたのです?」


 声のする方を見るとレイスと昌姉が厨房から出て来た。


「うん?いや。先月は色々あったな~……って話していただけだよ」


「そうね……ユニコーンとか生で見れて良かったわ♪」


「流石にこっちの世界は無理だろうって思ってたんだけどな……」


 紋章を使えばユニコーンが呼べるということでビシャータテア王国でも問題無く呼べた。ここまでは想定内だった。そして僕も含めた皆の疑問はこっちでも呼べるかという事になった……。ということでお店の裏で試したところ無事に呼び出すことが出来たのだった。その後は言うまでも無く、昌姉が目をキラキラさせながらユニコーンと触れ合っていた。


「それで乗馬の練習してるんだっけ?」


「うん。とはいっても意思疎通が出来ちゃうから、ハミっていう馬の頭に取り付ける馬具が簡単に取り付けられちゃうし、普通の乗馬とは別物かも」


「でもすごいわよね。ユニコーンに跨って黒き刀剣を振るう妖狸ってなったら……」


「カッコいいのです!!」


「ただ……和風と洋風って……」


「和洋折衷って言葉があるぐらいだ。問題無いだろ」


「うーん。そうかな……って、そもそもこっちでユニコーンを走らせる予定は無いから!」


「はいはい……フラグ回収お疲れ様♪」


「も~う!からかうのはよしてよ!」


「そうは言っても、今まで回収してるじゃねえのかお前?」


 そう言って厨房から今度はシーエさんたちが出て来た。会議や魔族の対策などで忙しい中なのだが気分転換も兼ねてこちらへ来ている。


「ユニコーンに乗れるなんて普通は無いですからね。薫さんには驚かされることばかりですね……」


「で、次は何をやらかすんだ?」


「そんな予定は無いから!」


~♪~~♪


 入口から鈴の音がする。お客が来たようだ。レイスとマーバが素早く隠れる。


「いらっしゃ……え?」


 入口を見ると傘をちょうど閉じたタイミングだったようで、そこには僕が良く知る少しだけ年老いた男性と粟色のロングヘアーをした小学生か中学生くらいの可愛い女の子がいた。


「は~い!!来ちゃった!!」


「皆、元気にしているようだね」


「お久しぶりです」


「父さん……」


「あらあら。どうしたの?」


「うん?この前のゴールデンウイークに会えなかったからね。ちょうど時間が出来てそれで明菜と様子を見に来たんだ。ってそちらの方は?」


「アルバイトのシーエさん」


「こちらのお店でお世話になっています。シーエ・トリストロです」


「私は成島 茂。昌達の父です。こちらこそよろしく。この二人といると何かしらハプニングがあって大変なんじゃないかな?」


「はは……。まあ、そうですね」


「ふわ~ぁ……何このイケメン!?カッコいい!!出身は!どこの国!?」


「明菜。落ち着きなさい」


「でも~!」


「薫さんって、三人姉弟だったんですね。この子とはかなり歳が離れているようですが?」


「あら?私達は二人姉弟よ?ねえ。お母さん?」


 そう言って、昌姉が外見が女の子にしか見えない何かに尋ねる。


「………え?」


「うん?そうだよ。あたしがお腹を痛めて産んだのはあんた達二人だけだって!不倫とかしたことなんて一度も無いよ!ねえ~茂♪」


「うんうん。そうだね」


「…………いや…え?」


「シーエさん……ゴメン。あの人、僕の母親」


「成島 明菜で~す!今年で65歳になりました!よろしくね♪」


「………………」


「シーエさん!?しっかり!?」


 シーエさんが立ったまま動かなくなった!僕は体を揺さぶって起こそうとする。


「まあ、俺も昌と一緒に挨拶しに行った時はああなったな……」


「懐かしいわね~♪」


「そんなに驚く事かな?」


「シーエさんしっかり!!……ダメだ意識が戻らない!だ、誰か救急車!!」


 僕はシーエさんの頬っぺたを叩きながらそう言うのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―シーエさん復帰まで十数分後―


「す、すいません。薫さんで慣れていたと思っていましたが……」


 そう言って、マスターから出されたコーヒーを飲む。


「同情するな……俺もシーエさんと同じように困っちまったもんだ」


「そんな驚くことじゃないと思うんだけどねー。少し位、他の人より若いからって……」


 どこが少しなのかが分からない。あれで制服を着たら普通に中学校に行っても違和感はないだろう。


「母さん……少しは自分がどれだけ変か自覚してよ……」


「そんなの美少女なのに男性のあんたに言われたくないって。近頃じゃあ何か変な事をやってるし……」


「うん?変な事って?」


「妖狸なんて妖怪を名乗って世間をさわがせているじゃないかい」


ぶふーー!!


 その言葉に、僕は口に含んでいたコーヒーを吹き出す。


「お父さんは、違うんじゃないかな?っていうけど、見た目もそっくり。声もそっくり。しかも妖狐なんて泉ちゃんだし……」


「いや!?何を言ってるのかな!?」


「さっきコーヒーを吹き出してナイスなリアクションを取った時点でアウトだと思うけど?で、昌。そこどうなの?知ってるんでしょ?」


「ええ。そうよ」


「昌姉!?」


「お母さんとお父さんにいつまでも黙っていられないでしょう?もしかしたら事情を知らない警察の人が連絡する可能性もあるし」


「それじゃあ……すでに警察に捕まったのかい?」


「捕まったというか……正体がバレてはいます……はい」


「ったく。となるとあの強盗犯をぶっ飛ばしたのは薫ってことか……何?強盗犯にセクハラされてついカッとなったってところ?」


「あの殴った奴とは別の奴に……」


 僕は両手の人差し指同士をツンツンさせながら答える。


「呆れるねぇ~~……それで大変な事になったのに……」


「あ、あの~」


 レイスとマーバが隠れていたカウンターから、こちらへと飛んでくる。


「薫は悪くないのです。強盗犯が部屋に連れて、暴行をされて……」


「分かってるって。一応、電話で事件に巻き込まれたってことは聞いてるからさ。まあ、妖狸として強盗犯をぶっ飛ばしたってのは聞いてなかったけどね」


「ご、ごめんなさい」


「それで?警察にバレたのに大丈夫なのかい?」


「うん。お手伝いを頼まれたけど……」


「はあ~…まあ、それならいいさ。それで……妖精?」


「ううん。精霊だってこっちのレイスが僕のパートナーで、そっちのマーバはシーエさんのパートナーだよ」


「へえ~……って茂?どうしたの?」


「テレビで見ていたけど、こう生を見ると本当にいるんだなと……少しだけ驚いているだけだよ」


「そういえばそうだね……って薫。それでアレは何だい?」


「ファンタジーお馴染みの魔法だよ」


「魔法って……いや、そこの精霊がいるくらいだから当然か」


「うん。レイス」


「はいなのです」


 僕たちは飲み干したコーヒーカップに魔法を使って、何も無い所から氷を出して入れていく。


「お、おお……」


「へえ~~……」


「私達もやった方がいいんじゃないかシーエ?」


「そうですね」


 すると、シーエさんたちは掌に大きな氷のボールを作りだす。それを2個、3個、4個と。


「凄いね。明菜……」


「そうだね。茂……」


 そう言って二人がカップに入ったコーヒーを飲み干した。


「あんたが童貞の果てに魔法使いになったのは分かった」


「いや。童貞って言わないでくれない?」


「そんなのはどうでもいいよ。それで、どうやったらそんな力が手に入るんだい?」


「う~ん……家で?」


「家って、え?実家?実家にあるの?」


「うん。ほら前に蔵で変な模様を見つけたって……」


「何だいそれを使って、悪魔と契約したのかい?」


「いや。こいつ悪魔を焼き殺してたぞ」


「……あんた何やってるんだい?」


「説明するよ……大分、ぶっ飛んでるけどね。マスター?」


「いいぞ。どうせ、この調子だとお客もそんなに来ないだろうしな。シーエさんたちは俺が送っていく」


「うん。ありがとう。じゃあ、いってくるね」


 僕たちは店を後にして、両親を連れて家に帰るのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「カーターの屋敷・庭園」―


「こっちは晴れてるんだね…」


「なのです」


 異世界の門でいつものカーターの家の庭園に着く。空を見上げると雲一つない快晴だった。


「うっそーーーー!!!!」


「はあーー……これって夢かな?」


「夢じゃないよ。グージャンパマっていう異世界なんだ」


「異世界って……」


「あれ?薫兄に……おばさんにおじさん?」


 門のある方を見ると、こっちへ向かってくる泉たちとカーターたちがいた。


「え?おばさん?」


「泉。誰を言ってるんだ?」


「え?茂おじさんの横にいる女性。あの人が明菜おばさんで薫兄のお母さん」


「成島 明菜。65歳でーす!!よろしくね!!しかし、こんなイケメンに連続で……」


「「ええええーーーー!!!!」」


 すると、カーターたちが大声を出す。あまりの内容に頭の処理が追い付かなくなったようだ。


「明菜おばさんを見た人。必ずこうなるよね」


「そうだね……シーエさんなんて立ったまま気絶してたし……ってフィーロは?」


「え?」


 フィーロが見当たらないのでどこにいるのかと探すと………地面に転がっていた。顔はあの顔文字の、すやぁー。にどことなく似ていた……え?


「フィーロ!!」


「しっかりするのです!!」


「い、息してない!救急車!ってここには無いから衛生兵!衛生兵はいないの!!」


 その後、無事に息を吹き返したフィーロと一緒に両親を連れて一度、僕たちの世界に戻るのだった。


「カーター……明日また来るから……王様に伝えといて…」


「ああ。驚きのあまりそれだけで死にかねないからな……」

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