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93話 紋章術

前回のあらすじ「吸引力が変わらないただ一つの魔法」

―ゴリラチンパンジーモンキー討伐から次の日「ソーナ王国・王都」―


「これで大丈夫ですね」


「ヒヒン♪」


 エルフの女医さんによって最後の一頭の手当てが終わる。ユニコーンと共に帰ってきた僕たちはそのままこっちで一泊。そして朝からユニコーンのケガの手当てのお手伝いをしていた。


「これでよしと!」


 また、ケガの手当てをしている人たち以外にもユニコーンから毛を取る女性たちもいて、その人たちによって無事に素材が回収された。


「ありがとうございます皆さん!素材の回収だけでは無くて、シルバーバックの討伐までして頂き本当にありがとうございました!」


 シーニャ女王からお礼の言葉が述べられる。すると一人の兵士がシーニャ女王へ近づいてくる。


「シーニャ女王!ゴリラチンパンジーモンキー、それとナイトウルフの死骸を回収しました!」


「お疲れさまでした。そうしたらギルドの方にも来てもらって素材と魔石の回収をして下さい」


「了解しました!失礼します!」


 兵士さんが右手を左胸に当てて敬礼をして、その場を後にした。


「それで、お二人への報酬は……」


「ヒヒーン」


 いつの間にか近くにいたユニコーンが鳴いて僕たちを呼ぶ。何かあったのかな?


「どうしたの?」


 僕が問いかけると、ユニコーンが角を前に出す。するとその角がポロリと落ちてしまった。


「……もしかしてお礼?」


 ユニコーンが首を縦に振る。僕はその角を手に取った。


「え!嘘!?ユニコーンの角って……」


「どうかしたんですか?」


「あら。とんでもない物を手に入れたわね」


 カシーさんたちがお城のある方からこっちへ近づいてくる。その目は少し眠そうだ。


「眠そうですけど?」


「一晩中、確認してたから……ね。ふぁ~あ~~~」


「それで、このユニコーンの角って凄い物なんですか?」


「ええ。なんせ聖剣の素材ですもの。ユニコーンから力づくで切り取ったらその瞬間に砕けるし、それなら死骸から回収とか考えた人達がそれを実行しようとしたら、そもそもユニコーンは死んだ瞬間に角が砕けるし……だから、今のようにユニコーン自身がくれないとダメなのよね」


「聖剣!そんなのがあるんですか!!」


「ああ。とはいっても文献も少なくて謎の多い武器って謂われているけどな。しかし……俺もユニコーンの角をその状態で見たのは初めてだ」


 ワブーの話からすると、グージャンパマでの聖剣はどうやらクラフトしないといけないタイプのようだ。僕としては有名ゲームのように台座に刺さっている状態から、聖剣を抜き取るという行為をしてみたかったけど……残念だ。


「その聖剣の名前は?」


「特にないな……もしくはあったけど魔族達の情報操作で消されてしまったのか……」


「作り方も……?」


「無いぞ。それと幾つかの材料の名前とかもな、だから聖剣の作成はほぼ不可能だろう」


「残念だな~……薫兄がセーブ・ザ・クイーンを持って戦闘するとか絵になっただろうし」


「その武器名は止めようか?」


「そして、衣装は花嫁をイメージした衣装で!!」


「女主人公が物語の最終回時の最強フォームみたいな格好をさせないでくれないかな!?」


「そして、最後は光の剣で一刀両断ッスね!」


「その時は私の服もそれに合わせてかわいい物にして欲しいのです!」


 そのまま、レイスたち女性陣がキャッキャッとお喋りタイムに入る。もう……このままにしとこう……。


「それで……この角はとにかく貴重な物ってことでいいんですよね?」


「ええ」


「そうか……ありがとうね君」


 僕はそう言って角をくれたユニコーンの頭を撫でてあげる。


「この角ってまた生えるのかな……」


「大丈夫ですよ。ユニコーンはその角を武器として使ってるくらいですから」


「それならよかった」


 このまま一生、角無しというのは可哀想でならない。


「ヒヒン」


 僕が頭を撫でているとユニコーンが鳴く。すると撫でてる腕の甲に模様が浮き出て……消えた……。


「今なにしたの?」


「(その紋章を使えば、私を好きな時に呼べるから上手く使ってね♪)」


「……うん?」


 気のせいかな?それとも昨日の疲れが残ってるのかな?……今、このユニコーンが喋ったような?


「薫さんって男ですよね?それなのにユニコーンと、さらっと契約してますけど……」


「あれは男じゃないんだろう。きっと……」


「そうね……」


「そこ!聞こえているから!!というより契約って何!?」


「えーと……ユニコーンって気に入った女性と契約をしてくれて、さきほど浮き上がった紋章を使えば基本的には好きな場所に呼び出すことが出来ます……そう…女性だけなんですよね……」


「やはり……お前は男では無いのか……」


「男!!ちゃんとアソコもあるから!!ねえ?僕、男だけどいいの?」


「(うーん……いいんじゃないの?ねえ。皆!)」


 ユニコーンが他のユニコーンに問いかけると皆が首を縦に振って応える。


「(という訳でよろしく!)」


「……」


「ということで、薫兄は問題無いという事なんだね……なるほど」


「泉?なるほどじゃ……」


 泉の言葉にツッコミを入れようとしたら、どうやら泉は自分の目の前にいるユニコーンと話をしているようだ。


「うん?あ、ごめん薫兄。今、この子と話をしてたの。何か、あなたの魔法、最高だった!また一緒に戦いましょう!ってそれで契約してくれたの」


 そのユニコーンは昨日、泉が跨っていたユニコーンなのか。


「(ちなみにだけど、私も同じであなたが跨っていたユニコーンだからね。まあ、人から見ると皆、同じに見えると思うだけどね)」


「そ、そうなんだ」


「(っていう事で、よろしくね!)」


―紋章術「ユニコーン」を手に入れた!―

効果:紋章の力を使ってユニコーンを呼び出すことが出来ます。ユニコーンと共闘したり跨っての高速移動が可能です。


「この紋章って転移魔法陣と同じってこと?」


「そうなるわね……。後で見せてもらっていいかしら?新しい魔法陣の開発に使えるかも」


「うん」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「ソーナ王国・王宮」―


 あの後、ユニコーンたちの群れは再び森の中へ帰っていった。それを見届けた僕たちはもう一つの目的である本の内容について王宮で話を聞く事になった。


「魔族については何も分からなかったか……」


「ええ。全て魔物で統一されていたわ」


 カシーさんが出されたお茶に口を付ける。


「となると、人と魔物との戦争終了後、あっちで何かあったってことかな……」


「そうなりますね」


「この前の悪魔についての情報もありました。あの悪魔はハイ・デーモンと呼ばれる存在で、魔物でもかなり上位の種になるようです」


 ソーナ王国の賢者さんが説明をしてくれる……それはいいのだが、その顔を見ると馬の蹄らしい後が残っていた。どうやら好奇心に勝てず、男なのにユニコーンに触れようとしたのだろう。


「それと、黒い魔石についての記述もありました。悪魔と呼ばれる存在はこの黒い魔石を有していて、この魔石は幾つかの特殊な呪文を使う事が出来るとのことです。この前の変身、巨大化もこれが原因かと」


「魔物を率いることができる存在とも書かれていたわ」


「その悪魔も恐れる四天王に魔王ってどんなやつなのかな?」


「分かりません…。ただ、あれより強大な魔物となると…」


「これからはより密な連絡の取り合いが必要ですね」


「そうなりますね。サルディア王とも相談して対策を検討しないと……」


「出来れば、襲い掛かってきた奴を生け捕りにして情報を聞き出す必要もあるな」


「とどのつまり……あまり分からなかったと?」


「そういうことだな」


 何かしら分かればよかったのだが、魔物との最後の戦争からかなりの時間が経過している。分からなくても当然か。


「とにかく、今度の会議では一応分かった事だけは報告します」


「分かりました」


「それと、薫さんたちの報酬は後でビシャータテア王国から渡してもらいますのでよろしくお願いします」


「これで、また新しい服が作れそうッスね」


「それじゃあ……ウェディングドレスを……」


「婚期が遅れるよ?」


「薫が着るようなので問題無いのです」


「レイス!?」


「私も見せて下さいね」


「ユニコーンと一緒に撮るとよりいいかもしれないわね」


「カシーさんにシーニャ女王も!?」


「あきらめるんだな。ここにはお前が男性という支持派はもういないぞ」


 ワブーのその一言で、僕は両手で頭を押さえつつ落ち込むのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「???」―


「定時報告が途絶えた……と?」


「はい。そこで確認のため使い魔を送ったところ、ロロック達は人間共に討伐されていました」


「ほう……」


「どうされますか?ここは私が……」


「……いや。お前にはこちらの事を任せている。あっちの件は他の奴にやらせる」


「ハイ・デーモンであるロロック達の替わりとなると?」


「お前以外の四天王だ。もしくはあれらを焚きつかせるかだが……お前ほどの実力者を出す必要も無い。どうせロロックがやられたのも、何かしらのへまをやらかしたからだろう。そう慌てる事もない」


「かしこまりました。そうしましたら私はあちらの対処へそろそろ出向くとしましょう」


「ああ。それと追加の兵を用意しといた。連れていくといい」


「ありがとうございます!それでは!」


 報告が終わり、この部屋からあやつが出ていく。我は杖を使い椅子から立ち上がり城のバルコニーから空を眺める。


「ハイ・デーモンがやられたか……まあいい。それに後は異世界の門(ニューゲート)がきちんと利用できるかの確認だけだ……ふふ、ははは!…はははははは……!!」


 もう少し……もう少しで全てが整う!そうすれば、この世界を支配できる!そうしたらその勢力を持ってあちらも支配してくれよう!!そして、両方の世界を我の物にしてくれる!!……この魔王の物にな!!

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