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88話 追跡者達

前回のあらすじ「最後の魔法使いの登場シーンは雑」

―夜中「国道」逃走犯視点―


「くっそ~!捕まってたまるかよ!」


 バイクで車の合間を抜きながらどんどん前へと進む。警察のノロマなパトカーではフルチューンしてあるこいつには追い付けない。


「県境さえ越えちまえば……」


 このバイクは盗難車。そして俺はヘルメットを被っている。採証活動されても俺にはそう簡単には辿り着けないはず……。あっちの警察が待ち伏せしている可能性もあるがその時は……って。


「ん?」


 道の先に、街灯に照らされてうっすらと見える人影。こんな田舎の夜道に?どんどん近づくとその格好が分かってくる。巫女服……そしてお面……!?


「嘘だろ!?」


「虚空」


 俺がそれの横を通り過ぎた際に聞こえた言葉。その瞬間バイクが浮き始める。俺は思わずそのバイクのグリップをしっかり握り、バイクと共に宙を漂う……。無重力を漂い何も出来ない俺にパトカーが近づいてくる。


「なんとまあ、運の無い奴だのう」


 ……最悪だ。まさか……妖狸に出くわすなんて。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―次の日「カフェひだまり・店内」―


(次のニュースです……先月の火事の一軒以来、忽然と姿を消していた妖狸がまた現れました。)


 テレビから朝のニュースが流れてくる。内容は昨日の夜、国道を猛スピードで逃げていたバイク泥棒を妖狸が捕まえたという話だ。盗まれたバイクも無傷で取り戻せた事で持ち主が喜んでいるとの事だった。


(以前の関わっていた事件が事件なので、ショボく見えますね……)


(そうですね。まあ、あんな大事件がポンポン起きてもらっては困るんですが……)


(犯人が取り調べの際に、運の無い奴。と妖狸が言ってたということで今回は偶然と警察は考えているそうです)


 確かに偶然かな?まあ、そこでコーヒーを飲んでいる橘さんに頼まれて待ち伏せはしていたけど。


「ほんと……犯人も運が悪いわね~。薫ちゃん達がいる道を選ぶなんて」


「一番可能性のある道を張り付かせたんじゃないですか?」


「まあね♪」


「そうなのですか?」


「ええそうよレイスちゃん♪裏道は下手に入ると行き止まりって可能性があるわ。そして県外へ出るにはあの通りの橋を渡らないといけないのよ。犯人が地元民では無くて警察の追跡についてよく知っているならこの道を選ぶと思ったのよね~」


「地元民だったらどうしたのです?」


「あっちこっちで聞き込みね。盗難車と同じ型のバイクが売りに出されていないかとか、解体して部品にして転売されていなかとか……まあ、今回は必要なくなったからいいのだけど」


 そう言うと橘さんが時計を見る。


「あら。そろそろ行かないと……それじゃあ。また、何かあったらよろしくね~♪」


 そう言って橘さんはお店を後にしていった。


「いよいよ、スイーパーとして活動か?」


「うーん。そんな感じだよね?」


「あら?伝言板を取り付けた方がいいかしら?」


 ……それは新宿駅にでも取り付けて下さい。


「しかし……逮捕の恐れから一転。県内ならある程度自由に動けるようになってよかったな」


「うん。まさか橘さん……県の本部長を連れて来るなんて思ってなかったよ」


 あの事情聴取の後、橘さんは他の数名の部下と一緒になんと県の警察本部長も連れて来たのには驚いた。異世界の案内後、法の観点からいけないのは重々承知だがこれはいくら何でも不味い!ということで、魔法を違法行為に使う事の禁止、グージャンパマから来た人への付き添いと県外への移動の禁止(この前の県外にある某フラワーパークへの移動は見逃す)、捜査への協力(都合がよければ)の3つを約束に、本部長の目が届く県内ならある程度は移動オッケーの許可を貰えた。まあ、本部長が頭を抱えて、どうしようどうしよう……。と言ってたけど大丈夫かな?


「ある時は……小説家、ある時はとある喫茶のウェイター、ある時は異世界の魔王を倒す使命を授かった勇者、またある時はこの町を守るスイーパー妖狸……しかしその実態は!30歳童貞美少女魔法使い成島 薫!」


「何それ?あこがれない」


「でも、昌の言う通りなんだよな……」


 確かに、一部はマスターの言う通りだけど……認めたくない。


「まあ、体には気をつけろよ?こんな慌ただしい生活をしたら体が悲鳴上げかねないからな……」


「そうね……この前の眠り続けた時は本当にどうしようかと思ったわ……」


「それについてはゴメン。無茶にはならないように気を付けるから」


「ええ……」


 昌姉にはあの一件以来、よく体の事を心配されるようになった。これ以上の心配をさせないように気を付けないと……。


~♪~~♪


「いらっしゃいませ!」


 お客様が来たので、僕たちは話を切り上げて、それぞれの仕事に戻るのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―同日「某マンション・拠点」ミリー視点―


「こちらミリー……。繋がってるかしら?」


「はい。オッケーです……カイトさんは?」


「いるわよ……カイト。オペレーターの子が呼んでいるわ」


「待って……よし。これで準備はいいな」


 魔法陣捜索のために、日本に来て一週間。運び込まれた機材とかの設置も完了してこれで機関の日本支部としての機能を果たせる。


「では……これよりミッションを本格的に開始するわ」


「了解。こちらも引き続き別の方向から調査します」


「分かったわ……よろしく」


 機関との通信が終わる。そしてカイトと分かっている事について話す。


「まず昨日、妖狸が動いた。バイク窃盗犯がたまたま彼女達の近くを逃走。そのままバイクごと宙に浮かされて御用とのことだ」


「盗賊団を吹き飛ばしたり、爆風を出したり……妖狸は風属性の適合者かしら?」


「おそらくね……空を飛んだりしてるし、まあ爆風なら火属性の適合者の可能性もあるかな。とにかく、もしあれと接触したらそこらへんに十分注意してくれ」


「分かったわ」


「とまあ、確実に分かっているのはこれだけなんだよね」


「他に今ある情報で推測とかたてられないの?」


「うーん……無理かな。彼女たちがスマホを持ち歩いているという情報はあるんだが……それがこちらの世界の誰かが渡した物なのか、彼女達がグージャンパマからやってきて何らかの方法で手に入れたか。はたまた彼女達はそもそもこの世界の住人で精霊と契約出来ただけの存在か……いずれにせよ。精霊がいる時点で異世界の門(ニューゲート)は確実なんだけどね」


「そう……」


「一番は観測機材をここに持って来れればよかったんだが……あれはデカいからな……」


「あれを置くなら、スタジアムぐらいは必要でしょ?」


「そうなんだよね……まあ、今現在、中国から観測してるから何かあれば連絡が来ると思う」


「それまでは足で調査か……」


「そうだ。もしこの国の警察に聞かれたら取材で通してくれ。今、マスコミも多く滞在しているから不審がられたりはしないと思う」


「ええ。で、今日はどうするの?」


「とりあえずは妖狸が現れた場所を周ってみるとするか……何かしらの発見があるかもしれない」


「周るって3ヶ所でしょ?一日で周れるの?」


「車があれば余裕だ。とにかく行ってみよう」


 そう言って、カイトが車の鍵と取材に扮するためにカメラの機材を持つ。


「ここ左側通行だから気を付けてよ?」


「ああ」


 そう言って、私も取材陣らしくカメラと録音マイク、そしてあれを持って外へと一緒に出掛けるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―数時間後「車内」ミリー視点―


「平和ね……」


 妖狸が昨日現れた場所へと向かう。運転はカイトに任せて私は車窓から外の景色を見る。これまでの調査と比べれば、なんと楽な調査だろう。


「まあ、今回は普通の町だからね。君が行ってた過酷な場所とは程遠い場所だよ」


「毎日、お風呂に入れるし食事もとれて、ふかふかのベットで眠れる。そういう意味ではありがたい場所に出て来てくれたわね」


「そうだね。だから今回は僕もバックアップとしてついて来れたしね……それに平和ボケしてるっていわれる日本のせいか簡単に情報が集まったしね」


 事件が起きた銀行で行員に聞き込みをしたらペラペラと喋ってくれた。


「前は軍が情報を封じ込めようとして大変だったわ……しかも大ハズレだったし……」


「その情報を使って、当時の政権を崩壊させてこっちにとって都合のいい政権に出来たから万々歳なんだけどね……それで話を戻すけど今回手に入れた情報からして……妖狸は風と水属性という珍しい2色使いの魔法使い。ただどれも上級魔法では無いし、現場が室内だったから火属性は使わなかった可能性があるからメインの属性はやはり不明だね。そして武器。魔法使い専用武器としては異質。ハンマーに剣、ガントレット、それに爆風に耐えられる盾。あれは一体なんなんだか……」


「妖狐は正当な魔法使いね。木製の杖だったし」


「車を過度に傷つけることなく横倒しさせている時点であれも普通ではないけどね」


 そう言ってカイトが黙る。その理由は分かる。なんせ。


「はあ~……やっぱり情報が少ないわね。次の場所なんて見ている人もいないし」


「一応、現場を確認しとこう何かあるかもしれない」


「分かってるわよ」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「某マンション・拠点」ミリー視点―


「有益な情報はなさそうね」


「そうだね……警察は何か掴んでるのかな?」


「どうかしら?でも、捜査をしているなら……」


「ハッキングしてみるか……」


 カイトがパソコンが置いてある机の前に座る。


「すぐに分かる?」


「さ~てね……とにかく調べてみるから、待っててくれ」


「……先にシャワーを使わせてもらうわ」


「どうぞ」


 カイトはパソコンに顔を向けたまま手を軽く振り上げて答える。私はそれを見てリビングを後にするのだった。

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