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85話 平穏って…尊い

前回のあらすじ「あっちこっちへとお出かけ」

―お昼時「カフェひだまり・店内」―


「オーダーお願いしまーす!」


「はい!ただいま!」


 お昼時の店内。店内はたくさんのお客さんで賑わっている。


「ミートスパゲティーにサラダセット。ドリンクはアイスコーヒーをお願いします」


「かしこまりました」


 注文を受けた僕は厨房へと戻る


「マスター!ミートスパゲティーのサラダセットをお願いします!」


「あいよ~!」


 その間に僕はコーヒーの準備をする。


「すいません!お会計良いですか?」


「薫ちゃん?お願いしてもいいかしら?」


「うん」


 昌姉に頼まれて、お会計を待っているお客様へと向かう。……実に平和だな~。近頃は盗賊団を潰したり、悪魔を討伐したり、王様たちをこの世界を案内したり……普通の生活のありがたみというのを感じる。


「ありがとうございました!」


 お会計を終えたお客様を見送る。そしてそのまま先ほどのコーヒーの準備に戻る。


「薫。料理できたから運んでくれ」


「分かった」


 そして、それをお盆にした鵺に載せて運ぶ。


「お待たせしました」


 そして、料理を配膳。そして空いた席の片づけをする。


「本当に平和だね」


「まあな……お前さん化け物退治してたしな」


「そうね。でも、あんな心配はもう嫌よ?」


「分かってる……けど」


「魔王に四天王か……小説の題材にはぴったりだが巻き込まれるとはな……」


「こればっかりは逃げられないかな……それに、ここで逃げてもいずれこっちの世界に来ちゃうだろうし」


「……だな。あの魔法陣を消せば問題解決か?」


「それでも、こっちには来れちゃうのでいずれは……」


 厨房でお手伝いしてくれるレイスがマスターの問いに答える。安定して行き来するには必要だが、一方的に来るだけなら、あっちに設置してある魔法陣だけでもオッケーなのだ。


「まあ、そうだよな……」


「だから、この段階で止めないと。あいつらがこの世界の技術を手に入れたらそれこそ手が付けられなくなると思うんだ」


 あの巨大化した悪魔ならパトリオットミサイルをロケットランチャー感覚で撃てそうだし。上空から狙って毒薬を散布するとかされたら……。想像するだけで恐ろしい。


「お姉ちゃんとしては心配……なんだけどね」


「僕も勘弁して欲しいけど……今の所アレを撃てるのは僕だけだしね……」


「召喚魔法か」


「うん」


 召喚魔法。新たに出来た魔法の種類。魔石と魔法陣、魔法使い専用武器の3つを魔法使いが使う事で始めて使用可能な超上級魔法ということになった。そして記念すべき最初の魔法が「雷霆・麒麟」となった。


「カシーさん達、各国の賢者が急いで使用できるように特訓するって言ってたのです。あれを使える人数を増やすことが魔族の対抗策に繋がる。と、直哉さん達もそのお手伝いをするそうなのです」


「色々、忙しくなりそうだな……」


「そうだね……あ、直哉が魔石を使ったアレを新しい浄水機として販売……というよりレンタルとして売るって言ってたよ。まあ、内容が内容だから特許は取らないらしいけど」


「まあ、魔石っていう未知の物質使ってるしな…」


「その浄水の際に出る貴金属を回収して売ったりすることが出来ればかなりの利益が見込めるって紗江さんが言ってたんだけど……かなり面倒な事になるから自社の開発用として使うみたい。とりあえず、浄水器自体が維持費もかなり楽な物だから低価格で多くの契約が出来るように頑張るって」


「回収した貴金属が売れないのは残念だったな。」


「でも次の構想を、もう考えているって。今度はジョークアイテムに扮して、ヤバいくらい便利な物。口コミやSNSを利用するって」


 その時の紗江さんの目が¥になっていたのは見間違いでは無いと思う。


「それならいいんだが……お前も小説が無事に出版したしな。変な面倒ごとを起こさないようにな」


「うん」


 ついに僕の小説が販売されて、梢さんが言うには売れ行きはそこそこいいらしい。


「ここで逮捕されたら全て失うからな」


「いやだなマスター。不吉な事を言わないでよ」


 その後に皆から笑いが出る。本当に平和だな……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―閉店間際「カフェひだまり・店内」―


「今日は早めに店じまいするか……薫も疲れてるだろう?」


「う~ん……そうだね。ここの所色々借り出されて大変だったし」


「なら……そろそろ」


~♪~~♪


 すると、店の扉が開けられる。


「こんばんは~~!!まだ、開いているかしら?」


 橘さんが来店した。そういえば今度来るって言ってたな。


「ええ。席はどうします?テーブル席も空いてますけど?」


「それじゃあ、テーブル席でいいかしら?」


「分かりました。どうぞ」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―橘署長が来店してから数十分後―


「ごちそうさまでした♪」


「おそまつさまです」


 そう言って、昌姉が食事の済んだ食器を片づけて食後のお茶を出す。


「ありがとうね……いや~落ち着くわね~。ここの所慌ただしく働いてたから中々休めなくて」


「この時間に来店ってことは今日もお仕事ですか」


「ええ。そうよ。薫ちゃんたちが逮捕に協力してくれたアレの手続きを……ね」


「ああ。あの置き引き犯ですよね」


 店内の片づけが済んだ僕もテーブルに近づいて話をする。


「助かったわよ~。変な事態にならずに済んだしね♪」


「それなら良かったです」


「それで……気になったんだけど」


「どうかしたんですか?」


 そういって橘さんが頬杖をついて話し始める。


「薫ちゃんは分かるんだけど……泉ちゃん。いつからあんな剛速球が投げられるようになったの?彼女ってスポーツはしてないわよね?」


「え?……あ、ああ。泉ってほら。コスプレする際に二の腕が見えるような服装もするでしょ?その際に二の腕が気になるからって、トレーニングしているんだ」


 嘘だけど。


「そうなの……でも、あれ見間違いじゃ無ければプロ野球選手並みだったような」


「まさか~」


「そうよね~。気のせいよね~。でも……石が弾道的に進んでいたのは見間違いじゃないわよ?」


 その言葉に僕が体をこわばらせてしまう。


「ほら。泉ちゃん野球で言えばセカンドベースから投げたぐらいでしょう?プロならともかく野球もソフトボールも未経験ゼロの彼女がそんな距離からあんな風に投げられるなんて想像できないのよね~」


「たまたま上手く投げれたとか……?」


「うーん。そんなものなのかしら?まあ、私も野球なんてやってないからよくは分からないんだけど……」


「そうですよ……犯人を取り押さえていた最中ですし……きっと見間違いですよ」


「それじゃあ……泉ちゃんがこの頃、薫ちゃんの家を頻繁に出入りしてるのはどうしてかしら?」


「……え?」


 突然の橘さんのその言葉に、僕は何を言っているか分からなかった。


「ここのところ頻繁に出入りしてるわよね?朝来て夕方には帰ってるわよね?ほぼ毎日?」


「え?いや。その……うちで仕事をしているだけですよ?」


「あら?どうしてかしら?」


「自宅だといいインスピレーションが生まれなくて、それでうちの一室を貸して欲しいって」


「そう」


 ……今、泉が毎日通ってるって……それって見張ってるってこと?フィーロのこと見られてないよね?それより、いつから?いつから見張られていたの?僕は咄嗟にカウンターにいるマスターたちを見る。マスターたちはこっちには気にせず片づけの作業をしているように見えるがこちらを心配そうに見ているのが分かる。


「実はね。ちょっと前から薫ちゃんの家を見張らせてもらってたの。この前とか大人数だったわよね?」


 ……この前のあれも見られてた?……どうしよう?僕の中の血が勢いよく流れるのが分かる。心臓も痛いほど脈を打っている。


「あの人達……薫ちゃんの家に入った後、出てこないけどどうしたのかしら?」


「そ、それは……バスに乗って」


 口が渇いている。追いつめられる犯人ってこんな感じなんだ。どうしよう……怖い。


「あのバスには乗っていないのは確認済みよ。それに入ってから今まで出た様子もない……つまり、あそこにまだいるんでしょう?」


 そう言って、机に写真が置かれる。そこには各国の代表たちが写っていた。


「う、ううん。違うよ。この前、朝早くバスに乗って……」


「あら♪いつかしら?あの日からつきっきりで見張ってたのよ……警察を舐めないでくれないかしら?」


 声色を変えてそう言った橘さんの目は鋭くなって僕の目をしっかりと見る。僕はその目を逸らすことが出来なかった。逸らしたらさらに疑われるのは目に見えている。……その目は僕の考えている事を全て見通ししているかのようだ……いや、すでに。


「薫ちゃん……あなた、銃で殴られた事、上手くごまかしていたかもしれないけど……実はあそこの監視カメラだけ生きてたのよね。それだから確認できたんだけど、あれは確実に大ケガのレベルよ?」


 これは嘘か?確かニュースでは、盗賊団が監視カメラの映像が警備会社に流れるのを恐れて全て破壊した。そのため当日の詳しい事件の内容は分かっていないって言ってたはず。でも……これは指摘するべきか?下手な事を言ったら……。


「それと……火災現場で始めて映ったあのシーン。妖狸は左利きだったわ」


「で、でもそれだけって。それにアレを見て僕って……」


「そうね。そう思えなかったわ。よく見る私でもね。でも……声紋は誤魔化しきれていなかったわ」


 声紋。それは人の指紋のようにそれぞれ違い個人を判別できる方法。


「それで再度映像を見直すと、どうしてか……薫ちゃんにしか見えないのよね?あれ。どういう仕組みかは分からないけど認識阻害がされていて、でも一度確かな確証を得た人には効かないんじゃないの?」


「……」


「沈黙しちゃったけど……どうかしたの?」


「……橘さん。何が言いたいんですか?」


「あら?そんな震えた声で聞いてくるなんてかわいいわね♪分かってるでしょ?」


 ……バレた。完全に。今日ここに来たのは僕が妖狸だって分かったから。そして僕を……捕まえに来た。


「こんばんは!」


 そして悪いタイミングで泉が店に入って来る。すると橘さんは急に泉へと顔を向ける。


「あら♪こんばんは泉ちゃんにフィーロちゃん♪」


 橘さんからフィーロの名前が出る。何も知らないこのタイミング。まずい……。


「え?」


「うん?誰ッスか?」


 泉が驚いている中、泉が持っている鞄からフィーロが顔を出してしまった。


「……やっぱり。妖狐は泉ちゃん達だったわけね」


 それを聞いたフィーロも自分が仕出かした事を察する。


「残念だけど……逃げても無駄よ?外には他の警察官が囲んでいるから?」


 それを聞いて、僕は観念して近くの椅子にもたれる。


「……残念よ薫ちゃん。こんな形であなたを逮捕する日がくるなんて」


「……」


 橘さんが椅子から立ち上がり、僕の方へと近づいてくる。そして腕に付けている時計を見る。


「21時ちょうどね……成島 薫。それと多々良 泉。あなた達を危険物取扱違反、銃刀法違反で緊急逮捕するわ」

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