83話 続・動き出す者達
前回のあらすじ「悪い子にお仕置き♪デンジャラス・ハニービーズ!!」
―「市内警察署・署長室」橘署長視点―
「疲れたーー!!」
「お疲れさまでした橘署長」
「まったく…世の中はゴールデンウイーク。そんな中せっせと働く私達。もっと労ってもらいたいものね~」
「警察とはそういうお仕事では?」
「まあ~ね。で、どう?」
「火事現場での妖怪達の足取りは途絶えました。分かるのは方角だけですね」
「見せてもらっていいかしら?」
「どうぞ」
部下から書類を受け取る。そこには火事現場からどのへ方角へ向かったかが記されていた。
「薫ちゃんの家があるわね。この方角」
「それじゃあ」
「妖狐の正体も掴んだわ。薫ちゃんの親戚の多々良 泉。今日、置き引き犯を捕まえる際に異常な軌道を描いた石を投げていたわ。本人は普通だと思っているみたいだけど」
「異常?」
「あの距離。普通なら物体を放物線を描いて投げないといけないんだけど……あの子の投げた石、直線だったのよ。しかも、野球選手も顔負けの速さ」
「じゃあ……」
「ほぼ、間違いないわね。今度、お店に行くからちょっとゆさぶってこようかしら?」
「しかし……」
「上は捜査をするなと言っていたわ……でも、何かとんでもない事が起きそうで嫌なのよ」
「とんでもない事?……テレビで言ってた軍の秘密兵器を強奪したとか、秘密結社の一員とかですか?」
「あの子達はそんな事をしないわね絶対。そこは知り合いで薫ちゃんの師匠である私が保証するわ。だからこそ、それ以外にどんな方法で手に入れたのかが気になるのよ」
「国にも組織にも関わらずですか?」
「ええ。もしその予想が本当なら大変な事よ。危ない組織や他国のスパイがこの町にわんさか来るかもしれない……いいえ。もう来てるかもしれないわね」
「……それならこっちは事前に把握してもみ消せるように準備しとくと?」
「いざという時は適当な理由で逮捕して、警察署に匿う事も前提に動くべきよ。もしそうなったら上もすぐに対策するでしょうし。それに彼らがどんな力を有しているか知っているでしょうしね」
「はあ~。地方の町でそんな映画のような事件をやって欲しくないですね……全く」
「これから長い間お付き合いになるかもしれないわよ?この事件はね」
「……覚悟しときます」
次はどうやってあの子達から聞き出すか……まあ、幾つか自白を取らせる方法はあるからそれでいきましょうかね♪
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―「都内高級料亭・個室」警視総監の視点―
「いや~。遅れてすまなかったな」
「いや。問題無い。私も外国の訪問をしていたからね。今来たところだ」
「そうか……それならいいんだが」
私は案内された一室に入り彼の対面に座る。最近60歳になったというのに若々しくて羨ましい限りだ……あのふさふさで黒い髪を少し分けて欲しいくらいだ。そう思って少し薄くなった白髪頭を触る。
「そうか……で、この前のアレの説明か?」
「ふ……そうだ」
念のため、案内した仲居さんがいないか確認する。これを聞かれたら大変な事だしな……。
「驚いたぞ……。お堅い君が、妖狸の捜査をするな!これは国家の存亡に関わる!!なんて言うから何事かと思ったよ」
「すまない……あの時はまだ妖狸について知ったばかりでな。私もまだ完全に把握していなかったんだ」
「俺も急いで指示をしたからな……漏れがあるかもしれん」
「仕方ない。彼らはこっそりやってるものだから、しばらくは静観してるつもりだったんだが……」
「彼ら?」
「妖狸は男性だ。あの口調は演技ということだ」
妖狸が男性という事に少しショックを受ける。調査内容では美人ではないかとの報告だったのに……。
「期待していたのに……悪かったな」
「いや。気にするな。それに犯罪者だしな」
「……下手するとそれも、もみ消しだな」
「おいおい。上級国民扱いか?」
「ここで国民に……世界に妖狸達の真実を知られると大パニックになる。それに、彼らはとある国家では重要人物として扱われている。下手に捕まえると機嫌を損ねかねない」
「国家?どこだ?大国なのか?」
「ビシャータテア王国だそうだ」
「……アフリカ大陸にでもあったかそんな名前?」
「いや。この世界に無い国家だ」
「……はぁ?」
「異世界の国家だそうだ」
「……すまない。ふざけてるのか?」
「説明する。料理を食べながらな……酒は大丈夫か?」
今日の仕事は済んでいるので酒を頼む。少しして仲居が入って料理を配膳する。しかし……彼はふざけてるのか?流石にこれは酷い理由だ。そんな異世界なんて。そんな事を考えていると仲居が部屋から出ていく。彼が徳利を持つので、私はお猪口を持って注いでもらう。私も注ごうとするが、彼はこの後仕事があるとのことで遠慮する。そして仲居がいないことを確認して先ほどの話を続ける。
「俺も最初は君みたいに冗談だと思ってたよ……これを見るまではな」
彼が箸を止める。すると懐から何かを取り出し机の上に色とりどりの石をばらまく。
「なんだこれは?」
「そうだな……その緑色の石を持って、扇風機の風をイメージしてもらっていいか?」
「なんだそれ?本格的にからかってるのか?」
少しイラっと来る。こんな石を持って何が起こるというんだ?しかし、彼は、とにかく一度だけでも。と懇願するので、いやいやながらも石を手に取って扇風機の風をイメージする。……少し暑かったからな。ちょうどいい風量の風が吹いてくる……?
「どうだ?」
「へ?なんだこれ?」
「次はこれだ。ライターのように着火するらしい。同じようにイメージするだけだ」
私は今度は赤色の石を持って、同じようにイメージすると石から炎が出る。それに驚いて落としてしまい、まずい!と思って慌てて机の下を見るが火は消えていた。火傷しないか気をつけながら石を持つがそれは冷たく。しかも石が落ちた所の畳は焦げていなかった。私は恐る恐る石を指で持ち上げて机の上に置く。
「……なんだこれは?」
「魔石だそうだ」
「政府がこっそり兵器開発して、その成果とか?」
「なわけないだろう……。そもそもだ。それなら君に素直にそれを話す。その方が君にとっては動きやすいだろう?」
「それもそうだが……。お前とは長い付き合いだしな。俺がそんな理由なら考えて動くことぐらい予想がつくか」
「そいう事だ。だから……」
「本当に異世界があると……」
彼が頷く。……まさかこの歳でそんな童話の世界の話が出て来るとは思わなかった。
「何があったんだ?」
「これから説明をするさ……だから、酒は飲み過ぎないでくれよ」
この後、せっかく出してもらった酒を飲むのを忘れて彼の話に聞き入るのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―同時刻「???」ミリー視点―
「今度はどこへいけっていうのかしら?」
思わず、私は監視室に怒鳴って入る。
「やあー!今度はね……」
悪気も無く笑顔で答えるその神経どうなってるのかしらこの男は?
「アマゾンの奥地?それともどっかの山の頂上かしらそれとも忌地とされている島への侵入?」
「大丈夫!今度は……」
「その大丈夫で私が何度危険な目に遭ってるか分かるかしら?」
私はその男の両手で頭を掴んで力を入れる。うん。ミシミシといい音を立てている♪
「つ、潰れる!中身が出る!!わ、分かってるから!」
「……その分かってるも何度目かしらカイト?」
「離してあげて下さいミリー。今度は確かな情報です」
「え。アリーシャ様?ど、どうしてここに?」
監視室にこの機関のトップであるアリーシャ様が入ってくる。
「あなたがアルプスの秘境に言っている間に、とんでもない情報が流れたのよ。だから今回は私から任務の内容を説明するわ」
「とんでもない情報?」
「ええ。そして今回の作戦がこの機関の最終任務になるわ」
「そ、それって見つかったんですか?異世界の門が!?」
「いいえ。ただ精霊が発見されたわ。しかもニュースにもなってる」
ニュースになった。つまり精霊の存在が世の中に知れ渡ったということだ。
「そ、それでどこですか?」
「日本だよ。最悪なことに、小さな島国だからということで監視システムを置いてない。中国に置いてあるシステムを日本に向けて観測したところ断続的に強力な魔力の反応が確認された。そして、これがアリーシャ様が言ったニュースだ」
監視室の大きいモニターに映像が流れ始める。そこにはお面を被った二人の女性と精霊の二体。その後は爆風による消火作業……。
「魔法使い……しかもアレ。賢者クラスでしょ?」
「場所は日本の中でも、未開の地。とされる場所らしい。いまだに半裸の人間が戦争をしているとか、シャーマンがいたり、そもそもこの地が宇宙にあったり、円環の理から出来てるとか……とそんな場所だ」
「また締められたい?」
「ジョークだって!まあ、そんなネタがあるような場所らしいんだけどね。まあ、今までの中で一番安全かつ平和な場所ってとこは確かだよ」
「けど、日本ってこっちの手が回っていないのでしょ?」
「ミリーの言う通りです。こちらの手が回ってるならそもそもこの映像をもみ消してますから」
「幸いだが……彼女達はマジシャンとか強力な武器を開発した正義の味方という認識だ。しかし、これ以上、彼女達が目立った行動をすれば……分かるよね?」
「これ以上目立つ前に彼女達が使った異世界の門の発見。そしてその魔法陣のトレース作業って所かしら?彼女達とのコンタクトは?」
「しない方がいいでしょう。彼女達が友好的とは限りません。それよりは我々の目的を最優先に動いてください」
「かしこまりました。これより最終任務に入ります!」
私はその場でアリーシャ様に向かって右手を胸に当てて敬礼をする。
「お願いしますねミリー……相手は魔法使いですアレの使用も許可します」
「分かりました。準備出来次第ただちに向かいます」
「こっちも直ぐに拠点となる場所を確保しておくよ」
「……変な部屋を取らないでよ?」
「分かってるって。」
いままで色々な場所を巡ってきたけど、まさかこんな最後を迎えるなんて……なんとしても、情報を、魔法陣を持ち帰ってやるわ。我々、機関のためにも。




