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80話 戦闘終了…その後

前回のあらすじ「上手に焼けました~!(食べれません!)」

―??「イスペリアル国・宿屋(個室)」―


「う………う~ん…?」


 僕が目を開けると窓からは日の明かりが僕を照らしていた。さらに窓の外の景色に意識を移すと外は青い屋根に白い壁の家が見える…。


「薫!大丈夫!?」


 反対側を振り向くと昌姉が目に涙を浮かべて、こっちを見ている。


「昌姉……おはよ~う…」


 少しまだ眠い……もう少しこのまま寝ていたい。


「よかった……今、お医者さんを呼んでくるからね」


「……うん」


 昌姉が慌てて扉を開けて、部屋を出ていった…。何で泣いてるんだろう?医者って?……そういえばここは?目線を移して部屋を見る……ここは僕の部屋じゃない。さっきの外の景色は……イスペリアル国の町並みだ。寝ぼけていた頭が急に目覚め始める。


「そうだった……」


 僕はベットから体を起こした。あの後どうなったの?悪魔は?


「薫兄!」


 勢いよく扉を開けて泉が入ってきた……と思えば抱き付いてくる。


「心配したんだからね!」


「ご、ごめん」


「薫!大丈夫なのですか!」


「起きたッスか!?」


 レイスたちも部屋に入ってくる。


「本当に……よかったわ」


 昌姉と……僕の知らない少し年上で多少白髪が混ざっている男性が最後に入ってくる。


「本当に心配したんだから…」


 泉に続いてさらに昌姉も抱き付いてくる。いや、これ恥ずかしいからね?


「僕どうしてここで寝てるの?」


「薫兄倒れたんだよ!麒麟なんて非常識な呪文を撃つから!」


 そうか。あれ上手くいったんだ……。


「もしかして麒麟でトドメを刺せたの?」


「災害をそのまま形にしたような術だったッス。もはや一方的な蹂躙ッスね」


「そうか……それで、そちらは……」


「お医者さん。直哉が連れて来たの」


「あ。それは、すいません。その……かなり非常識な事に付き合わせてしまって」


「あ、まあ、驚いたけどね……うん。いきなり蔵に連れてこられたと思ったら庭園に飛ばされ……そこから別の魔法陣へと移動中にエルフやドワーフがいて、ここに来たら君の診察と悪魔の死体解剖……この2日間驚きの連続だよ」


「そうですか……2日間?」


「薫さん。あなたが倒れてから2日間寝っぱなしだったんですよ。それで薫さん自身の診察は極度の疲労による深い睡眠状態ということで、他には異常は見当たらなかったのですが……どこか違和感とかありますか?」


「えーと。少し体がだるいのと……まだ眠気があるぐらいですかね」


「おそらく、まだ疲れが抜き切れていないんだと思います。この2,3日は過度な運動とかはせず安静にして下さい。まあ、少しくらいの運動はかまいませんから」


「分かりました。ありがとうございます」


「いいえ……自分としても、貴重な体験させてもらってますから。あの妖狸の診察。悪魔の解剖なんていう世界初の事もさせてもらえたしね。それじゃあ、私は直哉君でも呼んでくるかな」


「あ、それなら僕も」


「ダメよ!安静にしてないと」


「大丈夫だよ昌姉。少し動いて体のだるさを取りたいからさ。それに、倒れてた間に何があったか気になって眠れそうにないし」


「うーん……分かったわ。でも、ぜっっったいに激しい運動はダメだからね」


「分かったよ。それじゃあ着替える」


「はい。これ」


 泉が取り出したのは、巫女服。……僕のだ。


「キレイにしといたから。破けていた所とかもこの前のエーテル溶液なんかを使って修復済みだから」


「いや?なんでそれ?」


「いやだって……勇者で薫兄通っちゃってるから」


「あ……それでも」


「薫兄が雷を悪魔に放った所を見たコンジャク大司教に魔石使い達、その他にあの場から逃げ遅れていた市民の方々が絶賛広めている最中よ♪」


「……あっちに帰っていい?」


「中断中だった会議を今日行っているけど……行かないの?取材は?」


 泉が笑顔でいやらしく聞いてくる……。行かないという選択肢はある。でも、その場にいないと今後の自分の身の振り方を勝手に決められかねない。


「ローブ羽織る……」


 とりあえず外で目立たないようにしよ……って。


「あれ?マスターは?」


「武人さんならお店があるから戻ってるわ。気にしていたから、戻ったらすぐに伝えてあげないとね」


「うん」


「それと、行く前にお昼ご飯を食べましょうか」


 朝だと思ってたらお昼だったことに少し驚きつつ、この後、宿屋に併設されている飯屋で昼食を取るのだが……えらく店員に恐縮されていたが気にしないでおこう。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「聖カシミートゥ教会・大通り」―


 聖カシミートゥ教会までの通りを歩くと、あっちこっちで壊れた家などの修復を行っていた。魔法の世界だから、専用の道具があるのかなとちょっとだけ眺めていたが……普通に人力で意外だった。


「意外だよね」


「うん。まあ、獣人の方々でゴリラとか力自慢の方々がいたりするから、問題無いんだと思うよ」


 泉が指差す方向には、ボディービルダーと見間違えるような見事な筋肉をした獣人。さらにドワーフや人もいる。……実に見事な肉体美だと思う。


「ねえ。あのローブの人……」


 見ていたら、たまたま目の合った大工さんっぽい服装をした犬耳の女獣人が驚いた表情を見せて、隣の人の袖を引っ張り始める。これ以上は騒ぎになりそうなので足早にその場を後にした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「聖カシミートゥ教会・正面玄関」―


 そんな取材をしながら教会に到着する。僕がローブを脱ぐと、中にいた修道士の方々がこっちを驚いた目で見てくる。僕はそれを気にしないようにして、近くにいた修道士に会議をやっている所まで案内してもらう。途中、握手を求められたので握手をする。


「この手は洗いません!!」


 ……洗ってください。


「おっ。起きたか」


 会議をやっている部屋の扉をノックして中に入る。どうやらプロジェクターを使って丁度こっちの世界の説明をしていたようだ。


「ついさっきね。こっちは説明中だった?」


「今、ちょうど終わった所だ」


「薫!よかった!」


 サキが笑顔で、僕の顔に抱き着いてきた。他の皆も僕が無事だったことを喜んでくれた……一人を除いて。


「治ってよかったわ!という訳であれ!あれを説明しなさい!!」


 肩を掴んでまた体をグワングワンされると思っていたら、カーターとシーエさんが腕をがっちり掴んで止める。


「は、離しなさい!」


「いや?それは無理だからな?」


「薫。魔法の使い過ぎでぶっ倒れたんだからね!それなのに体を揺らしたなんてしたら……」


「きっと脳が揺さぶられて、また倒れる運命が見えますね」


 紗江さん。恐ろしい事を言わないで…。


「ふ、二人共ありがとう」


「ぶっ倒れて寝込んでた薫さんに、そんな事をさせる訳にはいきませんから」


「とは言ってもだ。あれは説明してもらわないと困るんだが?各国の代表から王様へ質問攻めなのだが……」


「えーと。麒麟ですよね……説明しないとダメ?」


 ここにいる部屋の人々全員から、説明しろ!言い返された。という事で術の説明を始める。


「えーと。それじゃあ解説します。っとその前にいくらか補足説明しないといけないと思うんだけど、雷とか地属性魔法のこととか……」


「ああ。それも全部まとめて話ししてもらいたい」


「こっちはあちらの世界の歴史とか日本の事は説明した。機械とかの説明とかはまだだから同時にするから、魔法に関してはよろしく頼んだぞ」


「分かった。じゃあ……」


 この後、あっちにある幾つかの機械の説明。それと、これらがこちらではレアな魔法に入る神霊魔法の雷と同類の電気で動いている事。地属性が重力操作に特化した魔法。僕が実際に使って分かったことを説明していく。そして話を始めておよそ2時間……。


「……どうすんだよ。これ」


「エーテルの情報が些細って……そうですねこれは些細でした」


「あ、頭が痛いです~……」


「はあ~……」


 各代表の方々があまりの情報量に驚いている。特に一番驚いてると言うか、ショックを受けているのが……。


「そ、そんな……神霊魔法が……神霊魔法が……!」


 神の雷が魔法使いなら適性は無くとも落とすことが可能な事にショックを受けている。神秘性があると信じれた物がこう否定される時、人間ってこう反応するんだなと思った。他の修道士たちも頭を抱えている。


「えーと。雷に地属性の優先度に……」


「ほ、他の魔法使いにも知らせないと!」


 各代表の方々のお付きの魔法使いはせわしなくメモを取ったり、これからの対応を協議している。


「あ、あの……一回休憩しますか?」


「しかしキリン?という魔法が……」


「すいません。あともう少し説明しないといけない内容がありまして…」


 そう。物理法則を知っている事で魔法の負担減や威力増大につながる事を説明しないと。


「休もう。うん。休憩しよう。もうこれの話す内容からして絶対頭が痛くなる奴だ。これ」


「そうですね。私もここまでの話を聞いて少々疲れました」


「そうだな……それにメモを取っている彼等も整理する時間がいるだろう」


 せっせと自分たちの仕事をしている魔法使いたちを見ながら、サルディア王も休憩を促す。


「私も始めて知った時はこんな感じで悩ませたからな……」


 サルディア王がハイライトの無い目で見つめてる……そんなにご負担をかけていましたか。


「薫兄?会議はどう?」


「あ、泉と昌姉。そういえばどこに行ってたの?」


「泉ちゃん達に協力してもらって、アイスクリームを作ってたの♪確かカーターさんから王様が食べたいって聞いてたから」


 再度、王様を見ると、物凄く嬉しそうな顔をしている。コロコロと表情を変えて忙しい人だな。


「よく作れたね?バニラはどうしたの?」


「この街で見つけたの。薫兄が眠っている間、気晴らしに散歩してたら露店で売ってて、香料として普通に売ってたよ」


「それじゃあ、プリンなんかの洋菓子の多くが作れるようになるね」


「そうね。で、皆さん食べます?」


 代表者の方々全員が、ぜひ!とのことだったのでアイスクリームを運ぶ手伝いをするために僕は一度部屋を出て厨房に向かうのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―薫が出てった直後「聖カシミートゥ教会・臨時会議室」カーター視点―


「……皆、済まないが一つ今のうちに済ませたい話がある」


 王が真剣な赴きで他の代表に向けて尋ねる。


「今回の魔物の襲撃で、多くの人々がこれから魔物との戦争を危惧する者が現れると思う。いや。ここにいる全員が既に魔物との戦いが始まると考えているだろう」


 ここにいる皆がその話に耳を傾ける。泉から聞いた今回あの魔物を裏で引いていたのは魔王そして四天王……。あれより強い者が少なくとも5体いることになる。そんな奴等が攻めて来た時、国を守れるかと言うと……あの悪魔に苦戦しているようでは無理だろう。


「そこでだ。薫達の立場を……」


 この後、薫達の立場について薫達がこの部屋に戻る前に決まった。薫達が知らない間にどんどん決まっていく光景を見た笹木クリエイティブの面々は笑っていたり、これからの薫達の苦労を考えて手を額に当て目を瞑ったりするのだった。

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