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78話 怒涛 

前回のあらすじ「でも合体魔法は出る」

―「聖カシミートゥ教会・上空」―


「うわ……」


「です……」


 いきなり竜巻……おそらく上級風魔法のトルネードだろうけど、それが炎を纏って巨大な火災旋風を引き起こしている。僕は少し離れた場所でさきほどよりはゆっくりとした速度で飛びながらそれを見ている。


「地面に炎を放っている所からして、ちゃんと考えて引き起こしたな泉のやつ」


「ですね……。この前のお泊りで、こんなゲームの炎の竜巻なんて起こせるッスかねwwwって泉とフィーロでお話したのです」


 僕もこの前の放火事件の直後で、火災旋風が起きなくてよかったね……。と話題にしたらカシーさんたちに聞かれたので説明したし……当然、あの近くにいた泉もそれを聞いていたはず。


「……これ不味いんじゃ?」


 確かあれの温度って一説では1000℃を超えるって……これ周辺に甚大なる被害が……。


「と、とにかくチャンスじゃないですかこれは!」


「う、うん。そうだね恐らく大ダメージだと思うし一気に倒そう!……生きてればだけど」


「……なのです」


 あれの内部にいたらその熱風を吸い込んだ時点で死ねると思う。それを期待していると怒号からの突風。悪魔はまだ動いていた。それを非常に残念に思いつつ僕たちは攻撃へと転ずるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―ほぼ同時刻「聖カシミートゥ教会・上空」カシー視点―


「な、なあなんだよ!あれは!!」


「お、おい下がれ!焼け死ぬぞ!!」


 周りにいた魔法使い達が炎の渦から離れるため壊れた壁側から急いで遠ざかっていく……あれってまさか薫が話していた火災旋風?


「カシー!」


 それをただ観察していると、シーエ達がやってきた。


「誰が引き起こしているのかしら?」


「……泉だと思うぜ?」


「今、戦っている中で風属性の適応があるのは……彼女だけですしね」


「そういえば火災旋風の話を泉も聞いてたわね」


「炎は……カーター達だな。きっと」


 全てを焼き付くしかねない地獄の業火。もはや天災ともいえる。これを二組の魔法使いで起こせるなんて……実に興味深い!これからの魔法の研究の一つに加えなければ……。


「まあ……薫の親戚だしな」


「そうですね……」


「だな……」


「ええ」


 黙っていたマーバの突然の意見に全員が賛同する。


「とにかくだ。どうする?あれでやられてなければ?」


「一斉に攻撃を仕掛けますか。恐らくカーター達もすぐに仕掛けるでしょう」


「薫達は?」


「薫さん達にやってもらうのは最後のトドメです。何でも剣で突き刺した相手に雷を流し続けるという技があるようで……薫さん達には私達が総攻撃を仕掛けた後にという話はしてるのですぐに行動をしてくれるでしょう」


「……新手の拷問かしら?」


「勝てるならどうでもいいぜ……勝てれば」


 直後の怒号からの突風。残念ながら炎の渦は掻き消されて悪魔は動いていた。天災を喰らって生き延びる悪魔も想像していた以上の存在だった。……シーエ達が飛んでいくのを見送った後、私達も魔法陣まで戻って、特大の一発の準備をするのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「聖カシミートゥ教会・上空」―


「フレア・カラミティ!」


 攻撃に転じようと悪魔に近づく中、カーターの大きな声。その直後に炎の剣による高速連撃が始まる。先ほどのダメージが効いているせいで抵抗せずにされるがままだった。教会の方を見るとシーエさんたちがロロックへと近づいている。


「ヘェル・カラミティ!」


 カーターがロロックから離れるタイムミングで今度は氷の剣による高速連撃が始まる。どんな攻撃なのかを見ているが、先ほどが高威力ならこちらは手数。手に持っている剣以外にシーエさんたちの周辺には複数の氷の刃が発生、シーエさんが攻撃するとそれも一緒に対象に攻撃する。……カッコいい!皆、凄くカッコいい技を持っている!主人公の技!これ小説のネタにバッチリ!


「薫……変な事考えているのです」


「ごめん。ただ、僕たちの攻撃魔法と違って、映えるなぁ~。って思っちゃった」


 僕たちの魔法……岩を落とす。殴る。雷を落とす。限りなくシンプルの方が隙も減るし、いいと思っていたけど。


「思いますけど……後にするのです!」


「分かってる……恐らく予定ならこの後、カシーさんたちの攻撃。それが終わったら雷刃で一気に行くよ!」


「なのです!」


 そして、シーエさんたちの攻撃が終わり教会の方に向かう。それとほぼ同じくらいに大爆発が連続して起こる。


「よし!行こう!」


「はい!」


 僕たちは悪魔に向かう。左手に黒刀を持って。先ほどからの攻撃でダウン中。だから……大丈夫だと油断していた。僕は突如来た何かに対して、咄嗟にレイスを体を張って庇い、体に走る衝撃と共に吹き飛ばされたのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「聖カシミートゥ教会・上空」泉視点―


「嘘……」


 悪魔は先ほどからの攻撃でボロボロだった。それまでの攻撃を黙って喰らっていた。それなのに……。


「薫とレイスは!!無事なんッスか!!」


「わ、分からないよ!で、でも……」


 いきなりあの悪魔は近づいた薫兄達に強烈な張り手。そのまま薫兄達は教会にぶつかっていった。


「ど、どうしよう……」


「泉!」


 カーターさんに名前を呼ばれたと同時に体を抱きしめられた。そして、そのままカーターさんが下へと移動すると、先ほどまで私達がいた場所に特大のファイヤーボールが通り過ぎていった。


「あ!ありがとうございます……」


「はあ、はあ……すまない」


「大丈夫ッスか?確かフレア・カラミティの使用後は疲労で辛いって…」


「そうも言ってられないだろう?」


 カーターさんが見る方向にはあの悪魔。


「グアアアアーーーー!!!!」


 大きな雄たけびを上げて、体の傷を回復させていく。


「あれじゃあダメなの!?」


「いいえ!よく見なさい!あいつのケガ完全に回復しきれていないわ!」


 サキの言う通り、羽は破けていて、切り傷もまだある。


「あいつの回復にも限界があるってことよ!」


「でも……必殺の一撃なんて……」


「……そうなのよね」


 皆、先ほどの必殺技で次を撃つにはしばらくは無理のはず。被害とかを考えなければメテオを撃つという方法もあるけど……でも落とす本体の準備がいる。


「……彗星か」


「でも、貫けるか分からない……」


「やるだけ、やってみてくれ!もう……それしかない」


「は、はい!……薫兄達の敵、とってや!」


「……待って?カーターあれ!え!?」


「どうした……カシーからの連絡……うん?」


 私達も見るとカシーさんがまた教会の方から光を点滅させている。その光が何を言っているのかは分からない。


「あの……何て言ってるんですか?」


「薫が……」


「無事なんッスか!?」


「た、多分。というか……」


「どうしたんですか?」


「薫たちが訳の分からない呪文を撃つから避難しろ!って」


「……無事でなにより。それと………カーターさん離してもらっていいですか?もう大丈夫なので」


「うん?……ああ!すまない!」


 カーターさんが抱き寄せていた腕の力を緩ませたことで解放される。私は手に持っていた箒に乗りなおす。……今まで男の人に抱き寄せられていたんだ!!という初めての体験にドキドキしつつ、先ほどから目から流していた涙を手で拭う。薫兄たちの無事という安心感とイケメンの抱擁というドキドキ感を同時に味わうとは……。


「ナニヲシテイル!!」


「あいつ教会へ攻撃しようとしてるッス!」


 悪魔はカシーさん達の行動を見て、その体勢を変えて教会に魔法攻撃を仕掛けようとしている。シーエさんが必死にその攻撃を止めようとして、水属性の魔法を放っている。


「やばいわ!」


「フィーロ!あいつを止めるよ!」


「はいッス!」


「サンダーー!!」


 悪魔に雷を落とす。悪魔にも聞こえるような大声で言ったので、悪魔がこちらを振り向いた。


「バ、バカナ!!シンレイマホウツカイガモウヒトクミ!?」


 悪魔がすぐさまこっちに炎の球を投げつける。かなりの速さでこれはぶつかるだろう……そこに私達が居ればの話だが。


「ナ!スリヌケタ!!??」


「ざ~んねん!……それは残像だよ!」


 悪魔がいる場所から少し離れた場所でおちょくる。


「ナ!コ、コノ……!」


 先ほどと同じ攻撃を放つ……しかし今度は距離があるのでギリ躱す。


「ク、クソ~~!!!!」


 悪魔が悔しがっている……そして、こちらに夢中になっている間に準備が出来たのだろう。突如、教会から猛烈な光が発生する。


「こっちに夢中になっていいのかな!?」


「シ、シマッタ!」


 そして、その光は上空へと飛んでいき…黒い雲を発生させるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―吹き飛ばされた直後「聖カシミートゥ教会・会談の間」―


「く、ぐくっ………はあ、はあ」


「薫!大丈夫なのですか!!」


 レイスの呼びかけが聞こえる。目を開けるとそこにはレイスの顔があった。腕が変な感じがする……体中に激痛が走っている。


「薫!」


「大丈夫か!?」


 カシーさんたちの声も聞こえる。


「カシー……さん」


「喋らなくていいわ!口を開けて!」


 カシーさんに言われて口を開ける。すると見覚えのある色の液体をアイテムボックスを取り出し、僕に飲ませようとする。


「ゆっくりでいいわ……飲んで」


 少しずつそれを飲んでいく……飲むたびに痛みが和らいでいく。


「大丈夫ですか!」


 シーエさんたちの声も聞こえる。


「おいおい!大丈夫かよ!」


「……うん。大丈夫」


「なわけないでしょ!?ハイポーションで肉体は回復しても体力は戻らないわ。あれだけのケガ、それにこれだけの出血もしてたら……」


「僕は男だよ。この位なら……」


「とにかく薫さんを安全な場所に……」


「そうなのです!」


「大丈夫……だよ。それにシーエさん……あれを何とかしないと……」


 よろよろしつつ立ち上がる。ハッキリ言って辛い……でも、あれを何とかしないと。


「治ってるぜ!」


「……いいえ。完全では無いようです。どうやらダメージは蓄積しているようですね」


「……私達は無理ね。無理矢理に撃っても大した威力は出ないわ」


「……私もですね」


「マジックポーション、ハイポーションは?」


「二つともあるわ」


「それじゃあ……」


「魔力は戻っても、体力は戻らないわ。オクタは体力的に限界。専用の魔法陣を使っても難しいわ」


「魔法陣?」


 カシーさんが指を差す。そこには確かに魔法陣がある。


「……あれって火属性だけをパワーアップさせるとかじゃないの?」


「いいえ。他の人が使えるように全属性対応の物よ。最初から火属性の物にすればもう一回は……」


「それでも倒しきれないと思いますよ……」


「ねえ、雷……神霊魔法も強化されるの?」


「え?ええ……けど」


「なら……」


 僕は魔法陣に向かって歩き出す。


「無理は…!」


「レイス……」


「なんですか?」


「……雷霆。あれを使おう」


「待ってなのです!あれは未完成で……!?」


「あの魔法陣。それと外にいる悪魔さんがヒントを教えてくれたからさ……イけると思うんだ」


 雷霆。二人で密かに考えた。ロマン魔法。カッコ良さ……そして高火力。それはカシーさんたちのオクタ・エクスプロージョン。泉たちが起こした火災旋風よりも……。


「何をする気?」


「カシーさん……雷の魔石。僕たちが作った魔石を持ってるよね?この会議で見せるために」


「ここにあるわ」


 カシーさんが白い魔石をポケットから取り出す。それは僕たちが作った魔石。とは言っても魔石に模様を描いてもらってそこに僕たちが雷の魔法を施した物だが。


 これは笹木クリエイティブカンパニーの社員全員が望んだもので、やはりバッテリーとして電気の力を宿す白い魔石が欲しいという事になり、ビシャータテア王国でも白い魔石って大量生産出来るのか?という話が魔法使い達から持ち上がった事で僕たちに製作の依頼が来た。そこで上級魔法を覚える合間にやっていたのだが……そんな事を思い出しつつ、僕はそれを見て思わずうっすらと笑みを浮かべてしまった。


「じゃあ…やろうか……」


「で、でも」


「ちょ待て!レイスの言う通りだぜ!何でお前ここまでやるんだよ!言っとくけど、ここはお前の世界じゃないんだぜ!」


 マーバの言う通り確かにそうだ。ここは異世界。僕たちのいる世界じゃない。でも……。


「色々……色々な理由があるよ……だから…やらないといけない」


 説明が長くなる。そんな理由はこれを倒した後でいい。


「分かりました……」


「ちょシーエ!?」


「カシー!すぐに外にいるカーター達に連絡を!薫さん!他に何をすればいですか!」


「本気なの?薫は体力的に……」


「カシー……分かってやれ」


「でも」


「すでにあっちへの転移の魔法陣が完成している!ここで野放しにすれば、もうここだけじゃない……あっちの世界にも危険にさらすんだぞ!!」


「それは……」


「僕としてはここにいる人をほっとけないってのもあるけどね……シーエさん。発動するまで少し時間が必要なので時間稼ぎをお願します。ほんの少しだけでいいんで……」


「分かりました……マーバ」


「はあぁぁ~。分かったぜ。でも、死ぬんじゃねえぞ!!」


「もちろん!死んだら昌姉に怒られちゃうしね……それじゃあ、お願いします」


 カシーさんから雷の魔石を受け取る。そして皆がそれぞれが行動を始める。僕とレイスも魔法陣に向かって歩き出す。


「上手くいくのですか?」


「多分……いや、絶対成功させる!」


 あの悪魔に見せてやろう……こっちの世界の神様を……ね。

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