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71話 歪

前回のあらすじ「各国の代表が出そろったよ」

―「聖カシミートゥ教会・会談の間」―


「それは?」


 ヴァルッサ族長が準備できたそれについて聞いてくる。


「これはパソコン。そしてコードで繋がっているこっちはプロジェクター。このような会議の時に使用する。あっちの道具になります。」


「これで何を?」


「今お見せします。紗江さんよろしくお願いします」


 僕の声を合図に用意したスクリーンにジャイアントオーク戦の時の映像が流れていく。ちなみに一部の戦闘シーン(主に僕たち)はカットしている。


「うお!?絵が動いてるぞ!」


「何か声も聞こえますね~。意味の分からない言葉も聞こえますが~?」


「私たちの世界の言語です。使用した異世界への転移魔法陣はこのような対面の場合は翻訳されるのですが、このような映像はダメのようで……ちなみに、この映像はこちらのデジタルカメラを使って撮影してます」


「はあ~……これはスゲェな!あんたらが異世界の住人というのも少しは疑っていたが……こりゃあ、疑う余地はねえな」


 ヴァルッサ族長が素直な感想を述べてくれた。というより僕たちが異世界の住人っていうの疑っていたんだ……。僕がそんな事を考えていると例のシーンに入る。


「チュウイシロ!!マホウツカイダ!!イキテカエスナ!!」


「なんと……」


「喋っているとは……」


「この後、戦闘で私たちが勝利。そしてこの後がもう一つの問題になります」


 シーンが移動して、エーテルのシーンになる。ここは王様に頼まれた箇所である。


「これは……」


「おいおい!エーテルじゃねか!!しかもこんなに……」


「こちらがジャイアントオークがこの洞窟にいた理由です。彼らはここでエーテルの栽培を密かに行っていました。それとこちらがこの現場の近くで発見された栽培方法が記載された紙になります」


 榊さんがエーテル栽培方法が載っている紙のコピーを、各代表へ配っていく。発見された当初は見たことの無い文字で書かれていたが、ハリルさんたちが解読。今回、配布している紙はその手直しした物になる。


「……凄いですね。これが私共の国内の戦力増強にもなりかねないほどに」


「これが本当なら多くの人々の治療が出来ますね」


 ……ロロック大司教の顔。多くの治療が出来るというのにあまり嬉しい表情ではないような?


「……サルディア王よ。この情報を流してよかったのか」


「この後、彼らの世界の情報と比べたら些細なことだ」


「これが些細ですか……レイス。彼らの言葉は本当ですか?」


「はい!」


「ソレイジュ女王~?そちらの精霊は~?」


「申し訳ありません。彼女は私の娘です。そこにいる薫と契約しています」


 その言葉に全員から叫喚の声が出る。


「彼らの行動については娘が確認しています。一国の姫の証言。これほど信頼できる物はないかと?」


「それは……」


「まさかご息女を……」


「これについてはこの後の私共の報告の際に詳しく説明させていただきます」


「……お母さまのおっしゃる通りにございます。それと、ワイバーン討伐の際に私も最前線に出ているのでその異常性も確認済みです」


「え?最前線?」


「私もその時戦いに出ていますが、その異常性が確認されたワイバーンはこのレイス様と薫が討伐。今の実力なら私より上ですわ」


 カシーさんがそう言うと各々からまた驚きの声が漏れる。……レイスがお姫様だと分かって様付けしている。ちなみにソレイジュ女王がその事を話して無かったから凄く驚いてるけど?


「なんと!賢者より上だと!?」


「それと彼らは地属性最強魔法の使い手ですわ」


「地属性って……あの最弱の属性が?」


「はいその通りですロロック大司教。彼らはあちらの世界の知識を利用して、短期間で最弱を最強までにしました。それと地属性の本来の力はとんでもない物でしたわ」


 皆が黙ってこちらを僕を見るので、その場で恐縮を込めてお辞儀をする。またレイスは母親であるソレイジュ女王に、本当だ。という意味を込めて首を縦に振っている。


「すまないが……これらの話は後にしてもらいたい。こちらの報告がいつになっても終わらなくなってしまうからな」


「え、ええ」


「そ、そうだな。これがほんのちょっとなら終わらねえな……」


「それでは話を戻させてもらう……この2件の魔獣の事件、魔物による行為だと私は考えている」


「魔物か……」


「ここにいる国々にあのジャイアントオークの群れに、鉄製の武器や防具そしてアイテムボックスを提供できる国は無いはずだ」


「そうだな……」


「それが出来るとしたら……確かに魔物しかいないだろうな」


「私としてはサルディア王……あなた方の国ならそれが出来るのでは?」


 他の代表が納得していくなかでロロック大司教がいきなりとんでもない事を言う。


「異世界の技術を利用して魔獣を操る技術を得たのでは?」


「申し訳ないですが、私たちの世界にそのような技術はありません。まあ……無いものを証明するのは難しいですが」


「本当に?」


「薫の意見に付け加えるなら、私たちの世界で仮に出来るとしたら、心理学を用いた相手が無意識にそのような行動を取らせるぐらいだな。このジャイアントオークみたいにあんなテキパキとした行動を取らせることは出来ないし、そもそもこの方法も確実ではない。それなら魔獣を率いていたと言われている魔物の存在を考えた方がいいのではないか?」


 直哉が助け舟を出す。しかし他の代表は疑いの目でこっちを見ている。


「しかし魔物なんて……非現的では?それにこの絵が真実を語っているとも……」


「あらロロック大司教?さきほども言ったように私の娘がその目で確認しています。王族である娘の主張が嘘だと?」


「いえ!?しかし、魔物なんて……」


「そうでもないですよロロック大司教。なにせ私共の国に大掛かりな精神魔法をかけた者がいるようですし」


 その発言に全員が驚き、ソレイジュ女王に全員が目線を向ける。


「それは本当なのですかお母さま!?」


「ええ……サルディア王。申し訳ないですがこちらの報告をここでさせてもらっていいでしょうか?恐らくそちらの事件と関係性があるはずでしょうし」


 サルディア王が黙って頷く。


「サルディア王から許可を貰えたのでご報告させていただきます。まずは事の始まりですが、お恥ずかしい話ですがそこにいる娘が家出をしまして……」


「家出ですか~?」


「ええ。娘は病を患ってしまいまして、ただそこにいるフィーロ、それと薫のお陰でそれも完治しましたが……それで、娘が家出した直後に私の命令でかなりの広範囲に兵が捜索に出たのですが、その際に祭壇に魔石が置かれた魔法陣が見つかりましたの。それも複数」


「な、なんですって!?」


「そして、それらの魔法陣の配置ですが国を囲うように配置されていました」


「それもビシャータテア王国の……」


「それはありません。祭壇や魔法陣が定期的に修復された様子はありますが、調査した結果300年以上……少なくとも私が王位を継承した以前から存在しています。そして彼らの国が大きく発展したのはあの異世界の行き来に成功したここ百年の間の話……彼らを疑うのは検討違いかと。それとも疑うような決定的な心当たりがあるので?」


「いえ。そういう訳では……」


 強い!レイスのお母さん凄腕の弁護士みたいだ!……よ、よかったこの人がこっちに味方してくれて。


「そして最近修復されたのもありました……数十にも及ぶそれらを長い期間、そして私共に悟られず、かつ精霊に頼らずに魔法が使用でき維持できるのは魔物ぐらいでは?」


「確かに。複数の魔法使いがいたとしてこれらの事を行うのは難しいな……精霊の性格もあるしな」


「すまないが……精霊の性格が何で関係するのだ?何回もその話を聞いているが性格なんて住む環境や人との関わりで変わると思うのだが?」


 直哉が質問する。まあ、確かに性格という理由……以前から少し弱い気がする。


「ぶっちゃけると、精霊の多くは魔法使いの契約を結びたがらない。特に精霊にはメリットが無いのもあるが、何より精霊が他の種族と一緒に行動を取る行為自体をそもそも好まない」


「好まない?」


「その通り。まず、私共は他の種族と比べて体格差があります。他の種族が大した事ない事が私共には致命的になることもあってパートナーに合わせて生活するのは意外にも大変なのです。短期の付き合いならともかく長期はなかなかいないでしょうね。まあ、それ以上に決定的な理由もあるのですが……」


「決定的?」


「分かってしまうんですよ。精霊にはその人と契約して魔法が使えるか、使えないかが」


「そうなのか?」


「はい。とはいっても感覚的な話で説明のしようがないので、精霊の性格で済ませているんです。それと昔の話ですが……魔物との戦争の際に、戦力増強のために精霊と無理矢理契約を結んだ魔法使いが魔法を使用した瞬間に体が弾け飛んだという例もあります。だから、精霊と強引に契約しても意味はありません」


「そうなんだ……」


 僕の時、かなり軽い契約だったんだけど……え?もしかして、ひでぶっ!って言って爆発四散の可能性もあったってこと!?


「まあ……その事はあまり言わないようにしてるのだがな。それが知れ渡ると魔法使いになるのを嫌がる者が出るからな」


「……話が逸れたので戻しますが、その魔法陣の近くに誰かが生活している気配は無かった以上、どこかの町に暮らしていてそこから定期的に来ていると考えた方がいいでしょう」


 ノースナガリア王国に近い町って……ここじゃないのかな?確かここから30分なんだよね?


「うーん。となると魔物が怪しいな……魔物の中には高速で飛べる奴もいるって話もある」


「そうですね~……海の魔獣がここ最近活発な理由もそれが原因と考えると納得ですし~」


「……」


 話が続く中、シーニャ女王が手を顔に当てて考え出す。


「どうかされたかシーニャ女王?」


「……ビシャータテアに戦闘を仕掛けたシュナイダーとキクルスについてですが。以前は厳格な仕事で信頼できる者でした。ところがある日突然、人が変わったように……気のせいかもしれないですが」


「……これは~」


「だよな……」


 各々が顔を合わせる。


「我が国としては洞窟のさらなる細かい調査をギルドと共にするとしよう。調査報告はその都度する」


「私共も設置された魔法陣のさらに細かい調査をしましょう」


「私はキクルスの性格が変わったきっかけについて少々調べましょう……何か気になることが見つかるかと」


「俺の方は……国内で異変が無いか調べるか」


「こちらもだな」


「私は~……海中の魔獣が活発になっている原因ですかね~」


「それなら私共は信者の方々などに話を聞いてみましょう……何かしら情報をもっているかもしれないので」


 ……どうにかこちらの疑いが晴れたようでよかった。ロロック大司教って疑い深いというか突拍子もないというか。もっと大変な事になりそうだった……それとも……。


~♪~~♪


 どこからか鐘の音がする。


「ちょうどお昼ですね」


「そうしたら、今回は異世界のコックが料理の腕を振るってくれるとのことだ。午後の話し合いにも関わることなので是非とも食して欲しい。薫。すまないが……」


「そうしたら、料理の方をお持ちしますね」


 僕はコンジャク大司教に教会内にある調理場まで案内してもらい料理を取りに行くのだった。


「あ、待って薫兄!私も行く!」

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