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506話 勇者の帰路

前回のあらすじ「無事帰還!」


※あと2、3話で最終回とさせていただきます。どうぞ最後までお付き合いください。

―朝食後「ソーナ王国・王都前」―


「まさか、2人にとって昨日のことだったとは驚きだよ。けど、1月も戦うなんて無茶し過ぎだと思ったけど、それが理由なら納得かな」


 事情を知ったユースさんが僕たちの身に起きたことに驚きを示すと同時に、どうして1ヶ月も戦えたのかという理由も分かって納得も示してくれた。


「私達に取っても、これは予想外だったのです」


「迂闊だった……そんなに時間が経過していたなら、さっさと帰るべきだったよ」


 あそこでゆっくりしていたことに反省する僕とレイス。現在、テント道具を片付け終わった僕たちはシエルの背中に乗ってソーナ王国の王都へと猛スピードで移動している。木々にぶつかることなく潜り抜け、四方八方同じような景色の中、目まぐるしく木々が通り過ぎて行く光景を横目に眺めていく。


「でも、どうしてこうなったのです? 皆が戻った時はそんな時間のズレは無かったみたいなのです」


「ゲートが一度閉じちゃったのがいけなかったのか、僕たちの帰る方法がまずかったのか……そのどっちかだと思うよ」


(え? それって僕のせい?)


「シエルは関係ないから安心して」


 シエルが浮遊城からここまで移動する方法に問題があったのではないかという話を聞いて、自分に非があるのかと勘違いしてしまったので、すぐさまそれを否定する。むしろ、僕たちがあそこから帰るには、あの方法しか考えられなかったのだから、このぐらいの失敗は仕方が無い話である。


「お! 見えて来たよ!」


 ユースさんが目の前に見えた王都の門に指を差した。そこには王都に入るための列があったので、そこに並ぼうとすると、僕たちに気付いた門番の1人がすぐさまやって来た。


「勇者様!? それにユースさんも……!? どうしてここに……?」


「薫とレイス姫の2人は敵地から戻る際に使用した魔法が上手く発動せず、ここの近くに飛ばされたらしい。早急に帰還しなければいけないから、転移魔法陣を守る守衛達に連絡しておいて欲しい」


「畏まりました! すぐに対応します!」


 そう返事をした門番の1人が門のすぐ近くの建物に入っていった。


「彼が連絡してくれるから、2人はそのまま転移魔法陣がある場所まで行ってくれ。場所は分かるよね?」


「大丈夫です。2人ともありがとう」


「ありがとうなのです!」


 僕たちはそこでシエルから降りて、ここまで乗せてきてくれたシエルと、道案内と手続きをしてくれたユースさんにお礼を言う。


「はは! 平和を守った勇者からのお礼なんて嬉しいね! また時間が出来たらこっちに遊びに来るといい。私も女王様もいつでも歓迎だよ」


(また呼んでね!)


 別れの挨拶を済ませた僕たちは2人に向かって手を振りつつその場から離れ、ソーナ王国の王都内を走って移動する。


「え? 勇者さんじゃないの?」


「そうだよ……! あれ? 行方不明って話じゃ……」


「何か私達がいなくなったのが噂になってるのです……」


「これは皆に怒られるかもね……」


 大通りを走り抜ける時に聞こえる人々の声を聞きつつ、ソーナ王国からイスペリアル国へと移動できる転移魔法陣のある建物までやって来た。


「お待ちしておりました! さあ、どうぞ!」


 門番から話を聞いていた守衛さんがすぐさま転移魔法陣へと続く扉を開けてくれた。僕たちは中の転移魔法陣を使用してイスペリアル国へと移動し、今度はイスペリアル国の聖都内を走って移動する。


「うわ……あぶねえだろう! って……勇者!?」


「ごめん! 先を急いでるんだ!」


 人にぶつからないように気を付けながら聖都を移動し続ける僕たち。ここから聖カシミートゥ教会前を通り、僕たちが管理している領事館を通る道を進んで今度はビシャータテア王国へと移動する転移魔法陣のある建物へと向かう。


「本当に薫さんじゃないですか!?」


「薫様!! 生きておられたのですね!!」


 僕たちが聖カシミートゥ教会前を通ると、コンジャク大司教と各国の代表達が迎えてくれた。


「それで……ゴスドラとヘルメスは?」


「終わらせたよ。全て……ね」


 それを聞いた全員から歓喜の声が上がる。そして、近くにいる従者や教会関係者はすぐさまこの件を知らせるために、どこかへと行ってしまった。


「こいつがそう簡単に死ぬとは思ってなかったがな」


「同感だ。まあ、予想よりかは随分と遅かったがな」


 ヴァルッサ王とローグ王がそのようなことを言ってるが、ホッとしたような表情を浮かべていたので、どうやら僕たちの身を案じてくれていたようだ。他の皆も似たような表情をしている中、ここに代表であるソレイジュ女王とゴルドさんがいないことに気付く。


「ソレイジュ女王とゴルドさんは?」


「ソレイジュ女王はお前の家にお邪魔しているはずだ。ゴルド殿はつい先ほど、誰かに会いに行くと言って、どこか向かったのだが……。まあ、とにかくだ。ユノとソレイジュ女王を安心させるためにも、すぐに家に向かうといい」


「それと、明菜に頼まれてリーリアも来ているのでよろしく頼む。それと……姉であるアンジェに変わり終わらせてくれたこと礼を言う。ありがとう」


「分かりました。報告は後でしますので……」


「気にせずに、ほら早く行って下さいね~」


「他の関係各所には私達から伝えておきますから……後でミリー達が伺うと思いますが、その時はよろしくお願いしますね」


「後でたっぷり話を聞いてあげるから!」


「りょーかいです!! それじゃあ!」


 コンジャク大司教と各代表たちとの話をそこそこに、僕たちは再び家に向かって通りを走っていく。そして、僕たちが管理する領事館前へとやって来る。


「どうやら上手くやったようだな」


 すると、そこにゴルドさんとハクさん、マナフルさんが待ち伏せしていた。


「あ、皆……どうしてここに?」


「あそこに妾がいると他の民衆が驚いてしまうからのう。だから、ここで待っていたのじゃ」


「俺とハクはこっちにいた方がゆっくり話せそうだったからと、こいつに会いに来るついでにここで待っていただけだ」


「会いに来た……って何かあったんですか?」


「こいつにお前がこうやって無事に帰って来ることは織り込み済みだったのか訊きに来たのだ。こいつは極度の秘密主義だからな」


「間違いでは無いが……今回に関してはこやつらを信じて待っていたのじゃ。何せ『アンチ・マジック』には手も足も出ないからのう」


「で、その俺にもお前にも対処できないレベルの魔法無効化の使い手なのに、どうしてこいつらは対処可能なのか説明してもいいと思うのだが? 何なら、そっちから話してもらってもいいんだぞ?」


 ゴルドさんがそう言って、僕たちに説明を求める。確かに僕とレイスはゴスドラと『ヘルメス』にどうして対抗できるのか、その理由をマナフルさんから聞いているので知っている。だが、それは秘密ということもあって、あまり知られない方がいい話でもある。すると、僕たちの言いにくそうな様子から事情を察したゴルドさんは渋々、事情を訊くのを諦めてくれた。


「やれやれ……。まあいい。とにかくお前達が死んでなければそれでいいからな」


「心配してくれてありがとうございます。ちなみに被害は……」


 ゴルドさんの話を聞いて、気になった事を訊いてみる。すると、後ろで静かに待機していたハクさんが説明をしてくれた。


「私共、ドラゴンは多少の怪我はあったものの被害はそこまで無かったのですが、他の部隊では浮遊城なる建物から発射された光線による死人が出ているようです」


「今回の戦いに出た者はそれ相当の覚悟をしている。お前達が気にすることではない。まあ……とは言っても、お前達は気にするだろうからな。近いうちに慰霊式を執り行う予定だ。その時にでもしっかり祈ってやるんだな」


「はい」


「さて……お前の(つがい)や両親をいつまでも待たせる訳にはいかぬな。早く顔を見せてやるといい」


「はい。また後で」


「それじゃあなのです」


 そこで、ゴルドさんたちと別れ、僕たちは再びビシャータテア王国へと移動する転移魔法陣のある建物へと向かうのであった。

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