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504話 『奥義・黒龍六道天衣』そして決着

前回のあらすじ「天元突破!!」

―「浮遊城・上空」―


「いくよ……!!」


 僕は貫いた『ヘルメス・トリスメギストス』から四葩を引き抜き、そこで僕を覆っていた『奥義・黒龍六道天衣』で召喚した黒龍を、取り込ませた6つの魔石を核とした6色の龍へと変化させる。そして、僕が四葩を振り回すと、それに合わせて龍たちが動き出す。すると、胴体を貫かれた『ヘルメス・トリスメギストス』が抵抗しようとして、手を前に出そうとした。


「させないよ!」


 僕は控えていた地属性の魔石の龍にお願いすると、龍は口を開き雄たけびを上げる。そして、それが魔法となって橙色の光の粒子が『ヘルメス・トリスメギストス』を完全に拘束する。


「いって!」


 僕がそう言うと、赤の魔石を核とした火属性の龍がその身の猛る業火となって『ヘルメス・トリスメギストス』へと突撃し、その身をもって焼き尽くそうとする。それに対して、『ヘルメス・トリスメギストス』は魔法を放ってこないところからして、最初の地属性の龍の効果によって魔法の仕様も封じられているようだ。


 そして、火属性の龍が『ヘルメス・トリスメギストス』に大やけどを負わせた後、今度は風属性の龍が『ヘルメス・トリスメギストス』を薄緑色の球体に閉じ込め、閉じ込められた『ヘルメス・トリスメギストス』はその中で発生した無数の風の刃でありとあらゆる方向から斬り付け、その体に無数の切り傷を付けた。


 緑色の球体が砕けると、待ってましたと言わんばかりに水属性の龍が『ヘルメス・トリスメギストス

』を今度は水球内に閉じ込め、そのまま水球内に高速の水流を作り出す。激流に飲み込まれた『ヘルメス・トリスメギストス』の体が球体内で激しく掻き回される。普通の人間だったら方向感覚などすぐに失ってしまい、そのまま溺死してしまうだろう。


 こちらの猛攻が止まらない。雷属性の龍が水球で溺れている『ヘルメス・トリスメギストス』に追い打ちを掛けるように紫電を口から吐き続け、ついには大爆発を起こす。だが、それでも紫電を吐き続け、爆発によって生み出された靄が晴れても『ヘルメス・トリスメギストス』を感電させたままにする。


 そして、無属性の魔石を取り込んだ龍が動き出す。無属性ゆえにどんな攻撃をするのか皆目見当がつかなかったのだが、紫色した靄を口から吐くと『ヘルメス・トリスメギストス』の周囲にそれが漂う。すると、『ヘルメス・トリスメギストス』はその場で大暴れする。その姿は何かに苦しんでいるようなので、紫色の靄は毒かと思ったのだが、先ほどの出来事と取り込んでいる魔石から考えて、酷い幻影を見せられ続けられているのかもしれない。


「集まれ!!」


 『ヘルメス・トリスメギストス』が地属性の龍による拘束と無属性の龍による錯乱で動きが止まっている間に、6匹の龍を頭上に掲げた四葩に集結させる。6匹の龍はそのまま光の粒子となり赤、緑、青、橙、白、紫色の光の粒子が、元の光輝く青に鵺の黒が混ざる四葩の刀身に纏わりつく。


「これで……」


 これから繰り出す一撃に、僕は柄を強く握り、後は剣を振り下ろすだけの体勢になる。すると、『ヘルメス・トリスメギストス』が最初の拘束を力づくで解除したらしく、こちらへと反撃をしようとして、こちらに接近しつつその手を伸ばした。

 

「終わりだ!!」


 僕は一気に剣を振り下ろす。それと同時に四葩の刀身は6色の光を放つ巨大な刀身となり『ヘルメス・トリスメギストス』を頭から一刀両断にする。すると、斬られた『ヘルメス・トリスメギストス』の周囲に黒い光の粒子が漂っていたので、僕は最後に指を鳴らすと、それらが爆発するように広がり『ヘルメス・トリスメギストス』を黒い光が飲み込んでいく。


「決まったのです!!」


「そうだね……うわっ!?」


 必殺技を放ったところで『天魔波洵』が解除されてしまった。そして今、僕がいるのは足場がない空中だったので、そのまま下へと落ちそうになってしまった。しかし……。


「ユノのプレゼントに感謝するのです」


「うん」


 ユノからプレゼントされたリボンに嵌められた浮遊石がすぐさま働き、その場に留まることが出来た。


「アレって『暗き湖沼へ』と同じような魔法なのです?」


「多分、それより強力だと思うよ……」


 未だに発動しっぱなしの黒い空間に視線を向ける僕。『奥義・黒龍六道天衣』が過剰な威力の連続攻撃だったのを考慮すると、アレも触れたらタダでは済まないだろう。


「とりあえず、どこか足場になる場所に……」


「ま……」


「ん?」


「へ?」


 僕とレイスじゃない声に僕たちから驚きの声が漏れる。まさかと思い、黒い空間に視線を向けようとすると、そこから蔦のような細い触手が現れ、僕の脚に絡みついた。


「まダだ!!」


 すると、黒い空間から半身が魔石となった人の巨大な頭部が現れる。その頭は歪な変な形をした羽のようなものや角のような物などが生えており、僕の脚に絡みつく触手はそいつの首辺りから出ていた。


「わだシはがミだ! マだおわラナい!!」


「しつこい!!」


 僕は手に持った四葩でそれを切ろうとするが、上手く切れない。もしかしてと思い、魔法を使おうとしたが、魔法が出ない。


「薫……まさか!?」


「ははっ……やばいかも」


 どうやら必殺技の反動で力が上手く入らず、魔法も放てない状態のようである。それを見たゴスドラが勝利を確信し雄弁に語り始めた。


「ハハ! さいゴにわラウのハ神であルわだしノようだナ!!」


 そう言って、脚の触手の力を強くするゴスドラ。


「あんシンしロ。死にはシない! なにセ、あらた二軍ヲつくるノニオマエがひツようだかラな!!」


 そこで触手の動きがどこか嫌らしくなる。


「てイこうできなイように、ワがチからでじゅウじゅんナおンナにして、たっぷリコだネをソソいでやる!!」


「……はあ!?」


「ン!?」


 ゴスドラの言葉を最後まで聞いた僕は思わずドスの効いた返事をしてしまった。すると、何故かゴスドラが怯んでしまった。


「何が神だ? 手下を作るために孕ませる? ふざけるな……!!」


 僕は太もものガンホルダーから必殺の魔弾が入った銃を取り出す。


「そんなコけおドし……」


「うるさい!! この変態!! それに僕は……男だ!!」


 僕はそれだけを言って、銃の引き金を引く。放たれた銃弾は巨大化したゴスドラの眉間を貫く。


「こンなもの……!!?」


 ゴスドラがそう言うと同時に、その顔が灰色1色になり、僕の脚に絡む蔦と一緒にその身が崩れ始めた。


「なっ……そンな、なんダこれハ……!? こノわたシが……カみとなッタわレが……!! まケる? こんンへんタイ……ふべッ!?」


 僕はとてつもなく失礼なことを言うそいつに『アイテムボックス』から取り出した卵を投げつけると、一瞬にして塵となって跡形もなく消えてしまった。


「……まさかトドメが卵とは。というより何で卵を?」


「何でもいいから投げられる物と思ったらアレだっただけだよ……」


「……何か締まらないのです」


「そんなことを言わないでよ……」


 まさかの最後の一撃に僕とレイスはさっきまでの緊迫というか緊張というのを一瞬にして失くしてしまう。何ともくだらない結末だが、こうしてゴスドラと『ヘルメス』という魔石はこの世から消え去ったのであった。その後、僕たちは近くに浮いている瓦礫に着地し、そこで休息を取り始める。


「終わったのです……」


「うん。終わったね……」


 アレだけ激しい戦闘を繰り広げた後だったので、疲れが一気に出る。


「うわ……」


 僕が『アイテムボックス』から腕時計を取り出すと、すでに時間は夜になっていた。


「どうりで疲れている訳だ……」


 長時間休まずに戦闘し続けたことを知ってさらに疲れが増した僕は『アイテムボックス』からお茶の入ったペットボトルと軽食を取り出し、レイスと一緒に食べ始める。


「これを食べたら少し休もうか……」


「しっかり休んだ方がいいのです。どうせ帰る手段なんてないのです」


「ああ……『ヘルメス』の魔石。粉々になっちゃったしね……」


 僕はゆっくりとお茶と軽食を食べながら、先ほどまでの戦いを振り返る。そこで、どうしてゴスドラがあの最終形態で最初から戦わなかったのかが何となく分かった気がした。


「恐らく、ゴスドラが『トリスメギストス』と分離していた状態だったのは、『トリスメギストス』こそがここと外の世界を繋ぐゲートを維持していたんだろうね。何せ、アレと融合した瞬間にゲートが閉じちゃったし」


「なるほど。それは納得なのです」


 そこで無言で軽食を食べ、喉を潤す僕たち。すると、今度はレイスが気になっていたことを訊いてきた。


「そう言えば……あの最後の光の粒子の中を移動している際に薫とそっくりな人が……」


「おばあちゃんのこと?」


「はい」


「そうか……やっぱり使用した魔石が関わってるのかな。『奥義・黒龍六道天衣』に使用した魔石なんだけど、無属性の魔石は『ワンモアタイム』を使ったからそれの影響だと思う」


「だから、アンジェさんが出て来たと……」


「だと思うよ……ふぁ」


 お腹が少し膨れたところで眠くなった僕。レイスも疲れたのか大きな欠伸をする。


「眠いのです……」


「だね……寝袋を入れて来たからそれを敷くから待ってて……」


 眠い目を擦りながら、『アイテムボックス』から取り出した寝袋を敷く僕。そして、すぐに寝袋に横になる。


「おやすみなのです……」


 そう言って、レイスが僕が用意した寝床で眠りに就く。それを見届けた僕もすぐに眠りに就くのであった。

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