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497話 クロス・セイバー

前回のあらすじ「『ヘルメス・トリスメギストス』から引用」

―「浮遊城・明日の行方を眺めし場所」―


「麒麟! 雷槍で貫いて!!」


 僕は麒麟に指示を出し、トリスメギストスの両翼にある弱点を狙って行く。それに気付いた他の皆もトリスメギストスの上にいるゴスドラたちの動きに注意しつつ翼を狙っていく。


「アイス・フィールド!」


 シーエさんの声が聞こえると同時に、シルフィーネがトリスメギストスの上にいるゴスドラたちの周囲の温度を下げて動きを鈍らせようとする。当然、ヘルメスがそれを打ち消すのだが、そのせいでトリスメギストスへの攻撃を止める事が出来ずにいた。


「いけー!!」


 シルフィーネによるゴスドラたちへの攻撃の後、すぐさま泉たちがヒュドラに指示を出して9つの首が両翼へと向いて、翼を噛み千切ろうととする。


「……!!?」


 慌てた様子でそれらの攻撃を振り払おうと、翼を激しく動かすトリスメギストス。だが、ヒュドラは離そうとしない。


「そのまま離さないで頂戴!」


 カシーさんは自身の召喚獣であるフラムマ・マキナにヒュドラによって押さえ付けられたトリスメギストスの左翼に向けて、背中にあるロケットランチャーや腰に装着したバズーカ砲を放つと、ヒュドラの首数本巻き込みつつ大爆発を起こす。


「雷霆万鈞!!」


 そこに追い打ちで雷のツインレーザー砲を喰らわせる。すると、ダメージを喰らい過ぎたせいか、水平に浮かんでいたトリスメギストスが左側に傾く。


「利いてるぞ! 翼を落とせ!!」


「言われなくても分かってるわよ! カーター!!」


「おりゃああああ……!!」


 すると、トリスメギストスの上でゴスドラと刃を交えた後、どこに行ったのか分からなかったカーターたちがトリスメギストスの右翼側にいて、そのまま青い炎を纏った剣を振って炎の斬撃を右翼に目掛けて放った。その斬撃は右翼に当たり翼の一部を切断する。それによってトリスメギストスの上にいたゴスドラたちがまともに立っていられない位に飛行が困難になっていた。


「ん?」


 一撃を加えたカーターたちはそのまま移動を開始し、泉たちの元へと向かっていた。そこで、僕たちもそこに集まったほうが良さそうな気がしたので適当に攻撃を与えつつ、そちらへと向かう。


「来たか」


「僕たちが来るって分かってたの?」


「ああ」


 到着すると、カーターが僕たちを待っていたかのような口ぶりをする。そこで、もしかして僕と同じことを考えていないか訊いてみる。


「もしかして……アレが来るかもってこと?」


「追い詰められた以上、形勢を整えるために使って来るもんじゃないか?」


「……そうかもね」


 泉たちとカーターたちが魔法の準備を始めるので、僕たちもその横で麒麟の必殺技を放つ準備を始める。すると、トリスメギストスも巨大な魔法陣を展開し、僕たちの思惑通りに先ほどの極大レーザー砲を放つ準備を始める。


「セイレーン!」


 泉に言われて、セイレーンが渡された泉たちの武器である『シンモラ』を、黒い靄に包まれ、ボコボコと音を立てる『終刻・レーヴァティン』へと変化させていく。その形は何とも形容しがたい形……唯一の救いは柄のような持ち手がある事だろうか。それによって、これが武器なのだと判断することが出来た。ふと、敵対する者がこれを見た場合、圧倒的な恐怖を覚える『終刻・レーヴァテイン』を見たトリスメギストスがどのような反応をしているのか見て見ると、その上にいたゴスドラたちの方が慌てていた。


「(ヘルメス! トリスメギストス! アレを止めさせろ!!)」


 遠くから聞こえるゴスドラの指示。それによって、トリスメギストスの展開した魔法陣がより強く光り始め、一刻も早く必殺の極大レーザー砲を放とうとしている。また、水平を保てなくなったトリスメギストスにしがみ付いているゴスドラの替わりに、こちらの準備が整うのを邪魔しようとヘルメスが両手を前に出して、僕たちの魔法を打ち消そうとする。


「アブソリュートゼロ!!」


「トリプレックス・エクスプロージョン!!」


 そこにシーエさんたちとカシーさんたちがそれぞれの召喚獣の必殺技を放ち、僕たちの必殺技を放つための時間稼ぎをする。上から放たれる全てを凍らせる絶対零度の冷気と、下から起きる全てを破壊し尽くす3重爆発。ヘルメスは宿主であるゴスドラを守るために『アブソリュートゼロ』を全力で防ごうとして、両手をシルフィーネの方に向ける。だが、下の『トリプレックス・エクスプロージョン』によって、トリスメギストスのバランスが崩されてしまい、そのシルフィーネに向けた手が別の方向にズレてしまった。


「くっ!?」


 すると、トリスメギストスにしがみ付いていたゴスドラがそれらの攻撃を避けるためにトリスメギスト上を移動し始めた。


「薫兄! 来るよ!」


 泉の声に反応してトリスメギストスの方へと視線を再び向けると、展開された魔法陣の中央に光る玉のような物が出来ていることに気付く。それを見た僕たちはすぐさま必殺技の『青黒ノ電影魔刀』を放てるように横に構える。


「(同時に行くぞ?)」


 カーターのその提案に頷く僕たち。そして魔法の都合上、泉に合わせた方が良さそうなので泉に攻撃のタイミングを計ってもらう。


「(撃て!! トリスメギストス!!)」


「いくよ~……せーの!!」


 ゴスドラの声と泉の声が重なった。それによって、僕たちとトリスメギストスの攻撃が同時に放たれる。互いにの攻撃がぶつかり合うとトリスメギストスのレーザーは僕たちの攻撃によって掻き消され、そして……。


「喰らえ!!」


「これで終わりだよ!!」


 カーターが振り下ろした『シンモラ』がそのままトリスメギストスの頭上から振り落とされ、僕たちの『青黒ノ電影魔刀』が居合いから放たれる横からの斬撃によってトリスメギストスの大きな目に十字の傷が入る。そして、そのままトリスメギストスの体は4つに分かれて床に落ちていき、その衝撃に耐えきれなかった床が崩れたことでトリスメギストスの体だったものはそのまま浮遊城の下層へと落ちて行った。


「よっしゃーッス!!」


「ぶった切ったのです!!」


「それよりゴスドラはどこ?」


 フィーロとレイスがトリスメギストスを倒せたことを喜ぶ中、泉がトリスメギストスの上にいたゴスドラたちがどこにいったのか周囲を見回している。ちなみに僕たちが呼んだ召喚獣は既に還っているので、戦力としては大幅にダウンしている。


「あいつがいた場所を狙って振り下ろしたが……」


 カーターが自身の剣を再度手に持ち、前に構えながら周囲を警戒する。


「また、さっきのようにトリスメギストスとは違う兵器で城の外から攻撃を仕掛けてくるでしょうか?」


 そう話しながら、シーエさんたちとカシーさんたちが僕たちの元に集まって来る。ふと、カシーさんが片腕を押さえているのが見えた。


「ケガしたんですか?」


「ええ。あの連続魔法を避けきれずにね……」


 カシーさんはそう言ってポーションを取り出し、痛みのある個所に直接掛けた後、残りを口に含んだ。


「カーターも飲んでおいて下さい。ゴスドラと接近戦をしていた時、そこそこ無茶な動きをしていたはずですよ……?」


「……バレたか。少し足首を捻っていたんだ」


 そう言って、カーターは剣を一回鞘に納めて、カシーさんと同じようにポーションでケガの治療を始める。


「お前らはいいのか?」


「僕たちは大丈夫だよ」


「私達も」


 ワブーに体の具合を訊かれ、問題無いことを伝える。その間、トリスメギストスの残骸がある付近で大きな変化は特に無かった。それこそ、本当に今度こそ倒せたのかと思ったくらいに……。


ガゴーン!!


 僕たちが警戒を緩めようと考え始めていたタイミングで、トリスメギストスの残骸からゴスドラが勢いよく飛び出て、宙に浮いたままこちらを見下す。しかし、その体はボロボロであり、呼吸も大分荒い。そして、自身と繋がっていたヘルメスは半身が消失しており、残った半身も『シンモラ』の影響で一部ドロドロに溶けていた。


「はあ……はあ……」


 静かにこちらを睨み付けるゴスドラ。すると、急に雄たけびを上げたかと思えば、そのまま自分の胸に腕を突っ込み、血飛沫を散らしながら何か光る物を取り出す。そして、それを上に掲げると、トリスメギストスの残骸が浮かび上がり、そのままゴスドラにぶつかっていく。


「え? 自爆したの!?」


「違う……恐らくだけど取り込んだんだよ」


 トリスメギストスの残骸はうにょうにょと姿を変えながら最終的にタマゴ型になった。そして、それにヒビが入り、完全に割れると中から天使のような3対6枚の翼を持つ単眼の瞳を持つ真っ白な人型の生物が現れるのであった。 

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