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496話 トリスメギストス

前回のあらすじ「第二ラウンド開始」

―「浮遊城・明日の行方を眺めし場所」―


「散開しろ! 狙われるぞ!!」


 ゴスドラに向かって突撃した僕たちはカーターの掛け声と共に再びバラバラに別れる。すると、ゴストラが手を前に掲げ、下の巨大ヘルメスに指示を出す。


「やれ! トリスメギストス!!」


 乗っている巨大ヘルメス……トリスメギストスにゴスドラが攻撃の命令を出す。その矛先は……。


「僕たちみたいだね……」


 微妙にだがトリスメギストスの巨大な単眼が動き、僕たちの方を見ているのに気が付いた。


「……」


 トリスメギストスは何も言わないまま、自身の前にいくつもの魔法陣を生み出し、そこから様々な属性の魔法をこちらへと放ち始める。


「鎌鼬!」


 四葩に風を纏わせ向かってくる魔法を切り裂いていく。そして、もう一方の手には小盾にした鵺で魔法を防いだり弾いたりする。


「数が多すぎるのです!?」


 僕の衣服の中に隠れているレイスが迫りくる魔法の多さに悲鳴を上げる。しかし、トリスメギストスの注意をこちらに引き付けていられるということは、他の皆への注意は疎かになっている事でもある。その証拠に、バラバラに別れた他の皆が強力な魔法をトリスメギストスやゴスドラへと放っていた。


「サンダーボルト!!」


「シルバレット・ボム!!」


 僕たちを狙うトリスメギストスに向かって魔法を放つ泉たちとカシーさんたち。ダメージを与えられるのか心配だったが、トリスメギストスの体に明確な傷が出来ており、全くダメージを与えられない訳ではなさそうである。


「ダーク・アイス・ランス!!」


 シーエさんたちはトリスメギストスではなく、その上にいるゴスドラへと向けて魔法を放つ。その攻撃はヘルメスによって打ち消されてしまうが、それによって出来た隙を狙ってトリスメギストスの上へとやって来たカーターたちが、果敢にもゴスドラへと接近して、炎の剣による攻撃を仕掛ける。


「薫! 前! 前なのです!」


「おっと!」


 皆の動きを見ていて、レイスに言われるまで気付かなかった風の刃を小盾で受ける。


「次、来るのです!」


「水破斬!」


 風から水を纏わせた四葩を水の刃を飛ばしながら舞う。放たれた水の刃はトリスメギストスの魔法を相殺したり、減衰させたりして、僕が避ける隙を作っていく。


「……!」


 単眼しか無い体の両端に付いている翼を大きく開き、さらなる猛攻を仕掛けようとするトリスメギストス。ちなみに、泉たちが執拗に目を狙って攻撃をしているのだが、ケガをしても怯む様子を見せていない。


「あの目……もしかして飾りなのです?」


「さあ、どうだろうね!」


 レイスの疑問に答えつつ、僕は再び襲ってくる魔法を避けていく。


「一応、動いていたから、全くのお飾りって訳じゃないみたいだよ!」


「でも、目にあれだけの攻撃を食らって、無反応っておかしい気が……」


「あれが生物ならそうかもね!」


 最後の火球をぶった斬りにして2度目の攻撃をどうにか避ける。すると、先ほど浮かんでいた様々な形をした無数の魔法陣とは違い、同じ形をした無数の魔法陣が展開される。


「やばっ!?」


 嫌な気がした僕はレイスに雷の魔石を持たせ、すぐさまグリモアと鵺で僕たちの周りに魔法陣を展開する。


「……!!」


 トリスメギストスがその体を震わせ、魔法陣からおびただしい数のレーザーを放ってきた。


「麒麟! 来て!」


 対して、僕たちは『黒装雷霆・麒麟』を呼び出す。麒麟がすぐさまその攻撃を撃ち落とすと思っていたら、突如予想外の行動に出る。


「おっと!?」


 僕に向かって体をぶつけ、僕が麒麟の背中にうつ伏せになったところで空へと走り出す。


「ちょ、待って……!?」


 僕は走り出す麒麟の背中を這いずってどうにか跨がる。すると、いつの間にか麒麟が装着している黒い馬具に手綱と騎手が足を乗せる(あぶみ)が出来ていた。


「後でシエルに怒られるかも……」


「そんなの今はどうでもいいのです!」


 僕は手綱を握り、麒麟をトリスメギストスの周囲を掻き回すように走らせる。すると、トリスメギストスはその図体の大きさが災いしたのか、それとも頭に主人であるゴスドラたちを乗せているせいか、僕たちの速度に追い付いていない。


「薫! ゴスドラたちを見るのです!」


 レイスに言われて見ると、トリスメギストスの上でゴスドラたちとカーターたちが激しくやりあっていた。炎を纏った剣を振っていたはずのカーターが今はただの剣を振るっており、ゴスドラは銃器ではなく両手にサバイバルナイフを持ってカーターと戦っていた。


「ヘルメスは……魔法封じで忙しいみたいだね」


 ゴスドラの背中から生えているヘルメスは、片手でカーターたちの魔法攻撃を防ぎ、もう片手でシーエさんたちの魔法攻撃に注力して防いでいた。すると、僕たちに気付いたらしく、シーエさんたちに向けていた手をこちらへと向けてきた。


「……!!」


 ヘルメスの手がこちらに向こうとしていることに気が付いた麒麟が速度を上げ、さらに狙い定められないように上下に揺れて移動し続ける。そのせいで、バランスが悪くなったゴスドラがカーターの剣を上手く捌けず、左手に持っていたナイフを落としてしまった。


「……!」


 すると、麒麟が素早く雷槍を撃ち出す。すると、ヘルメスが素早くそれに照準を合わせて打ち消すのだが、そのせいで退避しようとしたゴスドラの動きを阻害してしまい、その場で大きくバランスを崩してしまった。


「おおーー!!!!」


 離れた僕たちにも聞こえるような怒号を上げながらカーターが剣を振りきる。その剣は左腕を上げていたヘルメスの腕を斬り飛ばした。


「麒麟!」


「……!!」


 麒麟がさらに雷槍を複数生み出し、それを高速発射する。流石に、ゴスドラもこちらに気が付いており、その場で回転して雷槍を避ける。外れた雷槍はそのままトリスメギストスに突き刺さったままになり、電気を周囲に放出させている。


「鎌鼬!」


 そして、僕たちも攻撃を仕掛ける。狙うはゴスドラたちであり、こいつさえ倒せばトリスメギストスは勝手に止まるかもしれない。だが、ゴスドラの頭上に魔法陣が展開して、僕たちの攻撃を防いでしまう。


「今のって……?」


「トリスメギストスだね……」


 自分の主人を守るトリスメギストス。すると、再び無数の魔法陣を展開させて、その矛先をカーターたちに向けた。カーターたちはゴスドラたちから距離を取り、そのままトリスメギストスから飛び降りてしまった。


「いっけぇーー!!!!」


 泉の声がしたと思ったら、トリスメギストスと同等の大きさをした九本の首を持つヒュドラがトリスメギストスを襲い始める。気付けば、泉たちの傍には黒のドレスを身に纏ったセイレーンが立っていた。どうやらこっちに攻撃が集中した事で、泉たちが召喚魔法を使う機会が生まれたらしい。そして、それは泉たちだけでは無かった。


「焼き払え!!」


「シルフィーネ!」


 カシーさんたち、シーエさんたちも召喚魔法でそれぞれの召喚獣を呼び出し、トリスメギストスに対して集中砲火を喰らわせていく。ヘルメスに召喚魔法を打ち消されてしまうのでは無いかと思ったのだが、トリスメギストスに襲い掛かっているヒュドラが盾となっており、ヘルメスがヒュドラを打ち消そうとしているのだが、その巨大な首を打ち消したと思ったらすぐさまその首が再生してすぐさま襲い掛かる。ヘルメスが両腕でヒュドラを必死に消そうとするが、それ以上にヒュドラの再生速度のほうが速くて対処しきれていない。


「……無限再生って恐ろしいのです」


「まあ……流石に有限だとは思うけどね」


 現在、トリスメギストスとヘルメスはヒュドラに付きっきりで、唯一ゴスドラだけがこっちに向けて銃を発砲している。だが、足場にしているトリスメギストスがヒュドラとの戦闘で揺れており、的である麒麟はフェイントを入れつつ、高速で移動し続けるので全くと言っていいほど当たらない。おかげで冷静に現状の戦況を観察できる。


「……麒麟。アレに雷霆万鈞を撃って!」


 僕は麒麟に頼んで、トリスメギストスの翼に攻撃してもらう。全員、目が付いている本体をメインに攻撃していて気付いていないかもしれないが、上から見ていた僕はトリスメギストスの翼の一部が非常に綺麗なままであることに気付いた。


「……!!」


 その箇所を雷のビームで撃ち抜かれたトリスメギストスが体を硬直させる。どうやら僕の予想は当たっていたらしく、トリスメギストスの攻撃が先ほどより狙いが外れるようになっていた。


「このまま押し倒すのです!!」


「言われなくとも分かってるよ!」


 僕たちはこれ幸いとゴスドラたちに向けて猛攻を仕掛けるのであった。



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