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493話 激しく入れ替わる攻防

前回のあらすじ「不意打ち成功!」

―「浮遊城・支配者の間」―


「黒雷!!」


 睨み付けるゴスドラにグリモアで強化した雷撃を放つ。だが、思った通りゴスドラはそれを避ける。


「フレイム・ソルジャー!」


 そこにカーターたちが炎で出来た兵士を4体呼んで、それらに攻撃させる。


「ネイル・ボム!」


「ダーク・アイス・ランス!!」


 続いて、カシーさんたちとシーエさんたちが炎の兵士のたちがゴスドラに向かうと同時に攻撃魔法を放つ。2組の放った魔法は炎の兵士を擦り抜け、ゴスドラに向かって飛んでいく。


「はっ!!」


 すると、近くの瓦礫を魔法で操って飛ばし、シーエさんの魔法を掻き消す。そして、カシーさんの魔法は当たる直前で攻撃を避け、すぐさま炎の兵士たちに接近する。


「ふん!」


 1体の炎の兵士に接近し、そのまま胴体へのグーパンで一撃で消し去ってしまう。その隙に炎の兵士の1体が背後から仕掛けるのだが、そのまま回し蹴りで消し飛んでしまう。そして、左右から残りの炎の兵士が攻撃を仕掛けるのだが、ゴスドラは床に手を付き、そこから発生させた衝撃波で消し飛ばした。


「……!」


 炎の兵士を消し飛ばしたと瞬間、僕たちは四葩で攻撃を仕掛ける。ゴスドラは触れるのは刀身に触れるのは不味いと思ったのだろう。振った剣を受け止めることはせずに、僕たちからすぐさま距離を取りつつ、黒い炎の玉をこちらへと放って来た。


「ハイ・ウィンド・バースト!!」


 すると、泉がその攻撃を風魔法で打ち消す。それと同時に、先に攻撃をしていたカーターたちがそれぞれ魔法を放ってゴスドラに攻撃する。


「はっ!」


 それをアクション俳優のごとく、ゴスドラは避けていく。そして、ゴスドラと僕たちの距離がある程度広がった所で再び睨み合いが始まる。


(一応、拮抗してるのかな……)


 互いに決定打を与えられない状況、互いにスピード重視の中級や初級で戦っているためどうしても決定打に欠けてしまう。


(ここから威力も考慮した魔法も使うようになると思うんだけど……)


 ここで怖いのは、ゴスドラが未だに魔法封じを使ってこないことである。他の連中が使用している以上、自分は使えないという事はないだろう。


(ゴスドラがそれをどんな風に使用してくるのか確認してからじゃないと、上級魔法を打ち消されちゃうだろうしな……)


 そんな理由もあって、こちらは上級魔法を使っていない。対して、ゴスドラはどんな意図で高火力な魔法を使ってこないのかが分からないのも不気味である。


(手を抜いている……って、そんな訳は無いな。その証拠に僕への殺気が物凄いし……)


 自分たちの組織が壊滅するそのきっかけを作ったのだから、恨まれて当然なので殺気など気にはしていないが、それを前にして、手を抜くというのは考えられない。あるとしたら……。


(自分の力を把握しきれていない……ってところかな)


「……」


 ゴスドラが無言のまま、てを前に出して魔法を放つ構えを取る。それに対して、僕たちはいつでも防御が取れるように武器を構える。しかし、ゴスドラは鼻で笑いながらその手を下げる。


「やっぱり多勢に無勢だな」


「諦めて投降でもする気かしら?」


「ふっ! な訳ないだろう! 見せてやろう……ヘルメス!」


 ゴスドラがそう叫ぶと同時に、ゴスドラのコートと上半身の衣服が破け散り、その衣服の替わりに白い翼のような軽鎧、そしてゴスドラの後ろに、頭が『カドゥケウス』という2匹の蛇が1本の杖に巻き付いて、その先端に2つの翼が付いたヘルメスの持つ杖のような物が頭の役割をしている人型の白い何かが背後霊のように出現する。その人型は上半身のみで、下半身はゴスドラの背中とくっついている状態だった。


「(ついに人を止めたッス、こいつ)」


「(元からでしょ?)」


 小声でそんなことを話す泉たち。それを聞いた僕は心の中で「そんなことを言っている場合か?」とツッコミを入れる。そして、それはレイスも同じらしく、呆れた表情を浮かべていたのが見えた。


「……いくぞ」

 

 ゴスドラが足に力を入れ、その瞬間もの凄い瞬発力で僕へと接近する。僕は四葩を構え、近付いて来るゴスドラに向かって、こちらもほんの少しだけ前に出る。避けるでも待ち構えるでもないその思いがけない行動にゴスドラの腕が一瞬だけ強張り、攻撃のテンポが遅れる。それに対して、僕は四葩を先に振ると、ゴスドラはその刀身に向けて渾身のパンチを繰り出す。


ガキン!


 剣と素手がぶつかった音とは思えない音を立て、剣と拳の鍔迫り合いになる。


「ハイ・ウィンド・カッター!」


「ダーク・アイス・ランス!」


 僕とゴスドラが衝突したタイミングで、僕たちから離れていた泉たちがグリモアで強化した風の刃をゴスドラに向けて飛ばす。そして、さらに離れた場所にいるシーエさんたちも再び黒い靄を纏った氷の槍をを飛ばす。しかし、ゴスドラの背後にいるヘルメスが両手を前に出し、それらの魔法を霧散させて無力化する。


「お前ら気を付けろ! その背後の奴が魔法封じをしてくるぞ!」


 ワブーが叫んで注意を促す。分かり切ってはいるのだが、このような緊迫した状態では正常に判断するのが難しくなったりするので、結構大切なことだったりする。


「随分と冷静だな?」


「お生憎様。これでも結構な修羅場を潜っているんでね……!!」


 僕は四葩を上手く動かして、相手の拳を横に逸らす。そして、ゴスドラのバランスが崩れたところを……。


「っと……!」


 ゴスドラがバランスを崩した僅かなタイミングを狙ったのだが、それにヘルメスが反応して黒い炎を放とうとしていたので、僕は前へと跳んで、その攻撃を避ける。


「フランベルジュ!!」


 すると、カーターが正面からこちらへと走り寄ってくる。そして、そのまま僕の横を通り過ぎて、攻撃直後のヘルメスに炎の剣で斬りかかる。だが、その時にはバランスを崩していたゴスドラが態勢を戻しており、黒い無数の氷槍をカーターに向けて放つ。


「守鶴!」


 僕が名前を呼ぶと同時に、守鶴が和傘をカーターとゴスドラの間に素早く動かして、無数の氷槍からカーターを守る。そこに、他の皆から魔法攻撃が飛んで来たので、ゴスドラとヘルメスの注意がそれらに向いているうちに、カーターたちと僕たちはゴスドラから距離を取る。


「薫兄!」


 すると、泉が大声で僕の名前を呼んで、何かに指を差す。その指の先を見ると、守鶴たちを呼んだ際に一緒に現れる黒い球体に5枚の花弁のような物が既に付いており、『暗き湖沼へ』の発動が出来るようになっていた。僕はすぐさま黒い球体まで戻り、その近くで待っていた守鶴と尾曳によって黒い球体が既に黒い長弓と矢に変えられていたので、僕はそれを手に取りすぐさまゴスドラに向けて矢を向ける。


「……!?」


 ゴスドラがこちらに気付いて反撃しようとしていたので、僕はそんなことをされる前に素早く矢を射る。そして、矢がゴスドラの反撃に放った攻撃魔法に当たると、そこを中心に全てを飲み込む黒い球体が発生し、ゴスドラとヘルメスを飲み込む。


「ヤバかったのです」


 ゴスドラと鍔迫り合いを行う直前に僕の衣服内に隠れていたレイスが、先ほどまでのやり合いを凄まじかったと口にしていく。


「四葩に触れていたのに、あいつ弱った気配が無かったのです。しかも、先ほどより威力の高い複数の攻撃を全て捌いてもいたし……この攻撃で無傷だったら最悪なのです」


「願わくはこれで倒れてくれるといいんだけどね……」


 僕がそんな事を願っていると、発生した黒い球体は縮小して消失。いつもの強風と共に放った黒い矢がこちらに飛んできたので、僕はそれを回収して、長弓と一緒に鵺を黒剣に変化させる。そして、守鶴と尾曳はグリモアに嵌められた『融合』の魔石に力を込めてから還って行った。


「これでいつでも天魔波洵が使えるのです!」


「つまり、アレがまた生きているっていう話なんだよね……」


 『暗き湖沼へ』によって室内が滅茶苦茶になってしまい、それによって見失ったゴスドラたちがどこにいるのかと警戒していると、穴の開いた床からゴスドラたちがゆっくりと宙に浮いた状態で現れる。どうやら『暗き湖沼へ』が発動した瞬間に下層へと逃げていたようだ。


「まさか、あんなふざけた魔法があるとはな……」


 宙に浮いていたゴスドラがゆっくりと着地し再びこちらを見据える。僕たちも武器を構え直し、再び睨み合う体勢になる。


 そして、カシーさんたちの先制攻撃から、再び先ほどのような激しい戦闘が繰り広げられるのであった。

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