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492話 最後の戦い

前回のあらすじ「ボス部屋の前に到着!」

―「浮遊城・玉座へと続く扉の前」―


「やっと着いたのかな……?」


 あまたの罠を潜り抜け、ようやくゴスドラのいる部屋の前に到着した僕たち。恐らく、この先に……。


「……いると思う?」


 僕はそこで皆に疑問を投げかけてしまう。ここまでの道のりで、途中途中、階段があって上にどんどん上っていく感じがあった。そのため、ここが浮遊城の一番上であり、目の前の立派な装飾風な両開きの扉……その奥に人気も感じられる。だから、この奥にゴスドラのがいるのだと思うだが、ここでどうしてもある疑いが出てしまう。


「あからさまに罠としか思えないんだけど……」


 そう。いかにも『ボス部屋です』みたいな雰囲気を漂わせているせいで、あからさまに罠にしか思えない。


「ゲームならここで最後のセーブポイントがあって、いざってなるッスけどね……」


「現実だと怪しんじゃうのです。定番なら扉を開けた瞬間に爆発ってところなのです?」


 レイスのその意見に皆が頷く。爆発じゃなくても何かしらの攻撃が襲ってくるのは間違いないだろう。かと言って、ここ以外に出入り口があるのかも怪しい。あるとしたら、窓ぐらいはあるかもしれないが……。


(ここから外に回るっていうのも時間が掛かる……あ、でも)


 ふと、ある妙案が思い付いたので、皆にその案を話してみる。


「……確かにここからなら容易ですね」


「じゃあ……」


 僕が提案した作戦を聞いて皆が動き始める。そんな中、僕はレイスと一緒に扉の前で召喚魔法を使用して、守鶴と尾曳の2人を呼ぶ準備を始めるのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―同時刻「浮遊城・支配者の間」ゴスドラ?視点―


「む?」


 俺は扉の前で強力な何かを感じ取った。そして、これが魔力だという物に気付くのに時間は掛からなかった。


「なるほど……」


 どうやら、ここに入るための扉に罠が仕掛けられていると勘ぐられたようだ。まあ、ここに来るまでの道のりを考えれば警戒されるのも当然か。


「ふっ……」


 俺は玉座から立ち上がり、ゆっくりと扉に手を向ける。その手には黒く燃え上がる炎。この世界を憎む俺自身の心を映すような黒炎である。


「となると……あいつらは死んだか」


 あの2人がやられるとは思っていなかった。魔法を多用する連中にとって天敵である魔法を無効化する術、あの体で戦うのに有利な場所、それに合わせてスパイダーには銃を持たせ、クラーケには溶解液を放てる触手を持たせたのだが……あいつらには済まないことをした。


「くく……」


 だが、ここは賞賛するとしよう。あいつらを蹴散らして、数多の罠を掻い潜りここまでやって来たことを……欲を言えば、もう少し時間が欲しかったが、まあ想定内だ。


「さあ、掛かって来い……」


 奴らはどうせ魔法で扉を壊すだろう。そして、室内に入るタイミングで攻撃を仕掛ければ……。


「(……!!)」


 ふと、扉の向こうからではなく別の方向から何者かの声が聞こえた。その方向へと振り返ると同時に、俺の体は吹き飛ぶのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―同時刻「浮遊城・玉座へと続く扉の前」―


「……」


 中から大きな物音が起きる。浮遊城の壁を壊し、浮遊城の外壁に沿って回り込み、この部屋の窓から突入するという作戦は成功したようだ。下からここまで飛んでくるのは危険だと思って飛んでこなかったが、ここからこの扉の向こうの部屋に回り込むぐらいなら、危険性も少なく、いざとなれば魔法や魔道具で対処できると判断し、また魔力を感知して索敵している可能性も考えて、僕たちが召喚魔法を使う事でこちらに意識を向けさせる作戦である。


「尾曳。お願い」


 扉から離れていた僕は一緒にいる尾曳に頼んで手鞠を投げてもらい引力によって扉を開けてもらう。すると、扉が開いた瞬間に手毬に何かがぶつかり、瞬間に大爆発を起こした。ちなみに鵺を大盾にしていたので僕たちは無傷である。


「じゃあ行こうか」


 僕はレイス、そして守鶴と尾曳の3人と一緒にボロボロになった部屋の入り口から室内に入る。中に入ると先に入っていた皆がそれぞれの武器を手に、壁にもたれかかっている男性に警戒を続けている。


「くっ……まさか、こんな手を使って来るとはな」


 倒れていた男が立ち上がる。写真で見た顔とおなじ顔、そして右頬の傷……この男がゴスドラだとすぐに判断する。


「ゴストラ・レーヴェリンで間違いないよね?」


「はは……初めましてだな妖狸」


 そう言って、僕を睨み付けるゴスドラ。その際に、ゴスドラの今の姿を確認できたのだが、刑務所で暴れていた時と違い、僕たちと変わらない人型をしており、黒のスパイスーツの上からでも見える鍛えられた肉体。その上に前は開けたままの長いコートを羽織っていた。


「これほどの美女に我々の組織が叩き潰されたとは……光栄だな」


 僕は返事はせず、すぐさま身構えてゴスドラと相対する。ここまで来るのに得た情報の全て、そして実際に相対して見て分かるこいつの不気味さが、自然と僕の体を警戒態勢を取らせる。そして、それは正しかったらしく、ゴスドラが右手を前に出すと同時に黒い物が素早く撃ち出される。僕はすぐさま跳んで離れると、その黒く尖った物が通り過ぎて行った。近くを通り過ぎる際に冷気を感じたので、『アイス・ランス』のような攻撃魔法だと推測する。


「……なるほど。単に魔法頼みという訳じゃないようだな」


 上げた手を下に下ろすゴスドラ。その間、他の皆も構えたまま静かに眺めていた。現在、ゴスドラがこちらに視線を向けているので、その反対側にいるカシーさんたちや泉たちが攻撃を仕掛けるのに絶好のチャンスに見える。だが、ゴスドラの先ほどの魔法の発現からの発射の間隔がかなり短く、右手にはすでに黒い炎のような物をストックしていつでも撃ち出せる準備が出来ている。


「ふむ……多数に無勢と言ったところか」


 ゴスドラが腰を落とし構えを取る。すると、横にいた守鶴が錫杖の石突部分を地面に強く叩き付けた。それと共に『和芸和傘』が発動し、2つの和傘が僕たちの前に展開される。だが、すぐさま1つの和傘が吹き飛ばされる。そして、僕はそれを吹き飛ばしたゴスドラの手刀を蓮華躑躅を装着した腕で受け止める。


「受け切るか……」


 ゴスドラがボソッと口にする。そして、空いている片腕で僕に追撃しようと攻撃を仕掛けるそのタイミングで、尾曳が手毬による重力操作を使用してゴスドラのバランスを崩し攻撃を無力化させる。すかさず僕は『獣王撃』で反撃を仕掛けるのだが、ゴスドラは風魔法を使って素早く僕たちから距離を取り始める。すると、そこにカーターたちとシーエさんたちが近接攻撃を仕掛け、そこにカシーさんたちが魔法による支援攻撃を行う。


「大丈夫ッスか?」


 すると、泉たちが3組の魔法使いによる猛攻が始まったタイミングで、ゴスドラとの位置を気にしつつ僕たちと合流する。


「物凄い速さで薫兄に攻撃仕掛けてたけど……」 


「3人とも気を付けて。さっきの手刀……蓮華躑躅で受けたから大丈夫だったけど、まともに喰らったら腕が大変なことになるから」


 さっきの手刀で痺れた腕を擦りつつ、ここにいる3人にゴスドラの攻撃に注意するように促す。もし、生身で受けていたら僕の腕がへし折れていた可能性がある。


「おらー!!」


「はっ!」


 カーターとシーエさんがゴスドラを挟み撃ちにする。2人とも手に持っている剣に炎と冷気を纏わせており、喰らえばタダでは済まないだろう。だが……。


「ふっ……!」


 ゴスドラはその剣を素手で受け止める。そして剣を掴み、カーターとシーエさんを剣ごと投げ飛ばした。


「シーエ! カーター!」


 投げ飛ばされた2人を心配して名前を叫ぶカシーさん。僕はすぐさま四葩を『アイテムボックス』から取り出し、カシーさんを狙おうとしたゴスドラに向かって剣を振る。ゴスドラは腕でその剣を受け止める。


「なっ!?」


 すると、四葩の持つ魔石を持つ生物を衰弱させる効果が働いたらしく、ゴスドラがその場でよろめく。そして、そこに守鶴と尾曳の2人がそれぞれの技でゴスドラの姿勢をさらに崩す。


「薫兄! そこどいて!!」


 泉の声に、僕はバックステップでゴスドラから距離を取る。


「スプレッド・サンダー!!」


 僕が離れたと同時に、ゴスドラの頭上から複数の雷が落ちる。流石にバランスを崩していたこともあって、この攻撃は避けられずに直撃する。


「オクタ・エクスプロージョン!」


「薫! 私達も!!」


「鎌鼬!!」


 動きの止まったゴスドラにカシーさんたちと僕たちは追い打ちを掛ける。爆発する8つの玉と飛ぶ斬撃はゴスドラに命中し、その場に煙が立ち込める。


「守鶴! 尾曳!」


 2人の名前を呼んで、すぐさま防御させる。それを見た泉たちが少し遅れて防御魔法を発動させる。


「くっ!!」


 すると、その煙からゴスドラが飛び出し、右手に炎を纏って泉たちに攻撃を仕掛けて来た。だが、事前に防御魔法を3重で発動させていたおかげで、その攻撃を泉たちの『ウィンド・シールド』で防ぐことに成功した。


「ファイヤー・ブレード!!」


 不意打ちに失敗したゴスドラに、カーターたちの炎の斬撃が迫る。しかし、ゴスドラはその攻撃に気付いて素早く避けてしまったため、炎の斬撃はそのまま壁にぶつかって壁を破壊しただけだった。


「……」


 ゴスドラは服に付いた埃を掃いつつ、僕たちに鋭い眼光を向けてくるのであった。

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