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484話 突入!!

前回のあらすじ「カ〇コ〇製のように墜落することはないヘリコプター」

―離陸直後「ヘリコプター機内」―


「うおおおーー!! すごーーい!!」


「ヘリコプターの中ってこんな感じなんッスね!」


 初めてヘリコプターに乗った泉たちが大はしゃぎしている。さっきまでの墜落しないかという心配はどこにいったのやら……。


「やっぱり音が凄いな……!」


「並走した時から思っていたけど……内部も相当ね!」


 そして、同乗しているカーターたちからは初めて乗るヘリコプターの音に少しだけ不機嫌な表情をしている。ちなみに、ここまで全員大声で喋っている。


「ヘリコプターデートってあるけど、これじゃあプロポーズどころじゃないッス!」


「薫! これを付けてくれ!」


 すると、運転席に座っているオリアさんからマイク付きのヘッドホンが渡される。精霊用に作られた特注品も受け取り、それらを乗員している皆に渡していく。


「これで聞こえるようになっただろう」


「そうですね……さっきよりかは大分マシです」


「五月蠅かったのです」


 そんな中、もう1台の方も準備が出来たという事で、早速ヘリコプターが離陸する。少しずつ上昇し、街並みが小さく見える程度の高さに到達したところで、浮遊城へと前進する。


「おお……この感じ。グリフォンに乗せてもらう時と、また違った感じがあるな」


「そうね」


 皆が思い思い、ヘリコプターの初乗車の感想を述べている。これだけを見ていると、観光に来たのかと思える位に緊張感が無さ過ぎである。


「……薫は騒いでないようだが、もしかして以前にも乗った事があるのか?」


「輸送ヘリに乗った事があるよ。小説のネタに駐屯地のイベントに参加した時に乗ったんだ。ブルーインパルスがある松島駐屯地にも行ったことがあるし……海上自衛隊の護衛艦の見学もしてますね」


「なるほど……しかし、大変だったんじゃないか? 人が大勢集まる場所にいけば、それだけ君の美貌に惹かれて、良からぬ連中が寄って来ただろうに」


「そう言ってたら、どこにも行けないですから……むしろ、もっといろんな場所に行ってみたいと思ってますよ? これが終わったら少しだけ平和な世界になるでしょうから、ユノと一緒に遠くに旅行でもしようかな……」


「それもいいだろう。しかし、少しだけ……か」


「はい。少しだけ」


 オリアさんはこちらを見ないが、きっと苦笑いを浮かべているだろう。ここまで、魔王やヘルメスという共通の脅威が存在していたおかげで協力できていた。しかし、それら邪魔者がいなくなれば、自分の利益のために悪さする奴も現れるだろう。もしかしたら、全く新しい別の脅威が現れるかもしれないし、それこそ、今まで僕たちをサポートしてくれた人たちから離反者が出るかもしれない。そう考えてしまうと、僕の望む穏やかな日々は下手すると1月ももたないかもしれない……。


「防御魔法を掛けて頭を下げていろ。そろそろ戦闘区域に入るぞ」


 そんな事を考えていたら、どうやら浮遊城に大分近付いたらしく、僕たちはオリアさんの指示に従って、浮遊城からの攻撃に備える。機体内部はヘリコプターのモーター音が五月蠅いため、外から攻撃を現状受けているのか把握できない。


「……魔法を無力化する結界へと突入するぞ」


 オリアさんがそう言うと同時に、機体が大きく揺れながら、ひび割れた空間内へと侵入する。すると、辺りが暗くなったかと思うと、揺れていた機体の揺れが収まり、何事も無かったかのように静かに飛行を続ける。そして、再び辺りが明るくなったところで窓から外の様子を伺うと、周りは一面淡いオレンジ色の絵の具ような空間がどこまでも続いており、ヘリコプターの周囲に謎の瓦礫群が浮かんでいた。そして、先ほどまで遠く見えた浮遊城が間近に見える。


 遠目からはお城のように見えたが、間近で見た浮遊城の姿はコンクリート特有のグレー色の外壁に刑務所の名残である鉄格子付きの窓が乱雑に設置されており、中国の九龍城に西洋の城と刑務所を融合させたような、何とも歪すぎる建物だった。そして、それが立つ地面にはギアゾンビたちがのろのろとどこかへ向かうでもなく徘徊していた。


ビー!! ビー!!


 突如、鳴り響くアラーム。それと同時にもう一台のヘリコプターから通信が入る。


(こちらアルファ! 浮遊城からの攻撃を確認! 狙撃だと思われる! 注意せよ!)


「こちらベータ。了解した」


 一緒に飛んでいるもう1台のヘリコプターから、被弾の報告が入る。それと同時にヘリコプターが大きく揺れる。


「どうやら、こっちに気付いたようだな……」


 オリアさんはそう言って、操縦に集中する。その間にも大きな衝撃と共にヘリコプターが大きく揺れていた。


「これ、攻撃受けてますけど……大丈夫なんですか?」


「安心しろ。とりあえず、この攻撃では装甲は貫通出来ないようだ。それに、カシー達は言ってなかったが、このヘリには秘密兵器が搭載されている」


 オリアさんはそう言って、操縦桿近くのレバーを上げる。すると、ヘリコプターを覆うように緑色に光る粒子が現れる。


「これって……結界?」


「脆弱なヘリコプターの欠点を補うために装甲も強化したが、それだけでは足りないという事でな……短時間だけ周囲に風の魔石による防護壁を張れるようにしてある。攻撃を防ぐというよりは威力を弱める程度だがな……」


 そう言って、再びヘリの操作に集中するオリアさん。浮遊城を旋回し、どこに着陸するかをベクターと通信機を通して話し合っている。


「あまり時間がない。先ほどからの狙撃の事も考えるとこの辺りで下りるのがベストだろう」


(そうだね……でも、邪魔な連中が多いけど?)


「何のために武器を積んでると思うんだ?」


(大型のバケモノが現れた時用だと思ってたけど? まあ……出し惜しみしている場合じゃないか)


「そういうことだ……いくぞ」


(りょーかい!)


 オリアさんとベクターの話し合いが終わり、ヘリコプターが降下を始める。それと同時に覆っていた光の粒子が消えていく。


「これより着陸ポイントにいるモンスター共を一掃する!」


(OK! 派手にやるよ!!)


 その瞬間、ヘリコプターのモーター音に負けない爆音が機内の外から途切れることなく聞こえ始める。


「うおお……!! 凄いッス!!」


「ああ、これは凄いな……」


 フィーロとカーターが窓から外の様子を見て、ヘリコプターに搭載されたガトリング砲の威力に驚きの声を上げる。僕も反対側の窓から見ているのだが、着陸地点にいるギアゾンビたちが一撃で粉砕され、その数をみるみるうちに減らしていく。


「ほら! あんた達! もう少しで到着するんだから戦闘準備を整えておきなさい!!」


 サキはそう言って、窓の外を見ている泉たちに準備を整えるように促す。泉たちも「それもそうだね」と呟き窓から視界を外し出撃の準備を始めた。


 泉たちは忘れているようだが、あのギアゾンビの中には刑務所にいた人たちが素材として使われている個体もいる。サキは泉たちにそれを見せないように配慮したのだ。


「……」


 僕は横目で窓の外を見ると、あるギアゾンビが弾けた瞬間、その地面に赤い液体が散らばるのが見えてしまった。あのギアゾンビが元は囚人なのか、刑務官なのかは分からないが、僕は目を瞑り静かに祈りを捧げる。あのような犠牲者を増やさないためにも、ゴスドラをここで止めると心の中で決意するのであった。


「薫!」


 オリアさんの声に反応して、僕はレイスと一緒に降下中のヘリコプターから飛び降りる。そして四葩をアイテムボックスから取り出して、その剣先を地面に向ける。


「雷連撃!!」


 地面を這うギアゾンビたちに雷を落とし、その動きを一時的に止める。そして、地面に着地したと同時に四葩でそれらを斬り付ける。


「ぎゃ!?」


 短い悲鳴を上げ、斬られたギアゾンビはその機能を停止する。四葩の持つデバフ効果が効いたようだ。


「おらっ!!」


 すると、遅れて着陸したヘリコプターから、カーターがサキを連れてギアゾンビの群れに斬りかかる。剣に『セイクリッド・フレイム』を装着することで、魔法を使用しなくても、炎を纏った剣を振るう事が出来ている。


「エクスプロージョン!!」


 カシーさんの声と共に、その声が聞こえた方から、爆発による衝撃波が発生する。それによって、爆発に近い場所にいたギアゾンビたちが態勢を崩しており、そこにシーエさんたちが突撃する。


「いい爆発だ……なら俺も!!」


 すると、ボマーが手榴弾をギアゾンビに目掛けて投げ付ける。しかも1つだけではなく、5、6個同時にである。それによって広範囲で爆発が起き、ギアゾンビたちをあっという間に倒してしまった。


「はあー!!」


 シーエさんが『スプレッド・アイス・ランス』を山なりに撃ち出しギアゾンビたちを串刺しにしていく。以前に出会ったギアゾンビの魔法無力化の効果は直線上に及ぼすため、このように山なりに撃つと、術者に向けて魔法攻撃無力化の効果を発動させても無力化することは出来ない。


「皆、魔法無力化に対して何かしらの対策を考えてるね!」


 そう言って、泉とフィーロが僕たちの横に来る。そして、手に持っているパチンコ玉のような物をギアゾンビたちの真上に向けて思いっきり投げる。


「チビ・メテオ!!」


 上に投げられたパチンコ玉が重力魔法の影響を受け、そこから急降下しギアゾンビたちを貫いていく。


「物理攻撃にそんな小細工は効かないよ!」


「記憶したッスか!?」


 倒れていくギアゾンビたちを煽る泉とフィーロ。倒れている奴らから赤い液体が流れることは無かったので、この群れには遺体を使用したギアゾンビはいないようだ。


「……ギアゾンビたちって覚えられるのです?」


「そんなことよりも、ここの安全確保だから!」


 レイスの疑問ももっともだが、今は戦いに集中するべきである。僕たちも皆に負けないようにギアゾンビたちを無力化してくのであった。

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