表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
480/504

479話 幼稚な策

前回のあらすじ「何の成果も得られませんでしたああ!!」


※作者の都合により、次回から毎週金曜日の0時に投稿しますのでよろしくお願いします。

―ホールでの会議後「ショルディア邸・会議室」―


「さて……公にはアレでいいとして、ここから本当の会議よ」


 指を組み、両肘を机に付いたポーズで話を始めるショルディア夫人。その気迫によって、場の空気がピリついている。そして、その横にカイトさんと直哉の2人が座った所で会議が始まる。


「これから、どうするかの話ですね……調査継続として、どんな調査方法を取るかという議題ですか?」


 この場にいる1人の男性がここでの議題に付いて確認を始める。しかし、その発言にショルディア夫人は首を横に振る。


「……今日の早朝、あの空間から翼が生えたギアゾンビが数体こちらに侵入してきたわ。自衛隊の方で速やかに処分されたけど……こちらにも死者は出なかったけど、被害が出たわ」


「それに合わせて、グージャンパマの方にも出現してる。こちらは待機していたハクさんに一蹴されて被害ゼロだ」


「……つまり。あの穴が世界を飲み込むのが先か、ギアゾンビ共によってこの世界が侵略されるのが先かという訳か?」


「ええ。それと攻めて来たギアゾンビなんだけど……これを」


 用意されたプロジェクターに映像が映し出される。そこには、先ほどの報告通りに翼の生えたギアゾンビが映っていた。しかし……そのギアゾンビは石やレンガ、鋼鉄などで出来ており、生物は全く使われていないみたいだった。


「これって……」


「あの空間内には瓦礫が浮かんでいるのは確認されていた。そして、その瓦礫の一部を採取することに成功しているのだが……このギアゾンビはその瓦礫を使用して作られていることが分かった」


 そこで、この話が思った以上に深刻な件だと理解する。ギアゾンビと言っているが、これはもはやロボットである。そして、材料は浮遊城がある空間内にある大量の謎の瓦礫で作られている以上、これらを安定して作ることも出来る。すなわち……。


「悠長に調べている時間は無いってことよ。一刻も早く、あの浮遊城を破壊しなければいけないわ。そして、その手段だけど……」


 ショルディア夫人がそう言って、僕たちの方を見る。


「僕たちが突撃ですか?」


「かなり簡単に言うとその通りよ」


 そのショルディア夫人の返事に対して室内がざわつく。僕としては魔法攻撃を無効化する結界が張られているのなら、ミサイル攻撃による遠距離攻撃が有効じゃないかと思っているのだが……。


「ドローン爆撃、戦艦からの砲撃……当然だけど、これらの攻撃も行う予定よ。ただ……ほら、日本領内だから……」


「ああ……なるほど」


 日本の自衛隊は専守防衛が基本である。日本政府としては迂闊にこちらから攻撃を仕掛ける訳にはいかないのである。


「こんな緊急事態なのに………と言いたいところだけど、ここで今の日本の政権に悪影響を及ぼしたくない。だから、グージャンパマからの攻撃をメインにして、地球側は防衛がメインだよ」


「そもそもだが……ゴスドラの奴がそれを全く考慮していないはずが無い。ドローンの侵入を許しているように見せかけているが、肝心の建物内には侵入させなかったしな。恐らく、何かしらの防衛手段を用意して待っているはずだ」


「直哉の言う通りだよ。撃ったミサイルのコントロールを奪う魔法なんか用意されていたら最悪だね。まあ、少なくとも……」


 カイトさんが何か言いたげな顔をして、僕たち……いや、僕とレイスを見る。


「そこに軍事施設を一瞬にしてガラクタにできるEMP攻撃が出来る魔法使いがいるから、兵器の無力化は可能なのは証明済みかな」


 それを聞いた会議参加者たちの視線が僕たちに集中する。「え? 出来ちゃうの……?」とか「戦術核兵器搭載しちゃったか……」と声を漏らし困り果てた様子が伺えるのだが、そもそも本当に軍の電子機器を破壊できるかどうかは不明である。


「出来るかもであって、やった試しは無いですよ?」


「やらなくても結果は目に見えているから不要だ。とりあえず作戦はこうだ。浮遊城への攻撃はグージャンパマから行う。浮遊城へはミサイル攻撃とドローン爆撃を行い、浮遊城から現れた奴らは魔法と銃火器による攻撃で掃討していく。そして……地球は現れた奴らに対しては同じ攻撃を仕掛けるが、浮遊城への攻撃は行わない。その替わり……」


「グージャンパマからの猛攻で注意が逸れている間に、地球側から僕たちが城内に潜入、主犯のゴスドラと『ヘルメス』を討伐、そしてすぐさま浮遊城のある空間から離脱するでいいのかな?」


「そうだ。まあ……こちらの攻撃を一通りやってみてからだな」


「薫達にはこちらの猛攻があまり効果が無かった場合、最後の手段として『面妖の民』のメンバー全員で乗り込んでもらう。きっと、魔法使い以外は足手まといになるからね」


「となると……私と薫兄、カーターにシーエさんとカシーさん、そして各相棒の精霊達で突入って事ですか?」


「その通り……その時はこちらからの爆撃は制止させるから、誤って君達が爆撃される心配は無いから安心してくれ」


「ラスボスと対峙するのに、安心なんて出来ないと思うッスけど?」


「せめてお助けアイテムが欲しいのです」


 カイトさんに近付いて、そう言い返すフィーロとレイス。そう言われてしまったカイトさんは「いや~……」としどろもどろな返事をする。おもむろに、周囲を見回すと会議の参加者たちはこの作戦に対して、あまりいい顔をしていない。


「……」


 ふと、直哉の方を見ると、1人静かに会議室の窓から外を眺めていた。ショルディア夫人も見て見ると、手を口元に当てて悩むような仕草をしていた。


「(何か……様子が変じゃない?)」


「(苦肉の策だからだと思うよ……)」


 様子がおかしいことに気付いた泉に僕は小声でそう答える。作戦とは言ったが、あまりにも稚拙な内容だとは思う。どう効率よく攻め落とすかではなく、これをやってダメなら次はこれをするというトライ&エラーな考え方など、戦場で命を賭ける側からしたら堪ったものでは無い。たった一度のエラーで人生終了するかもしれない、そんな危険な場所に行くのだから。


「(ちなみにだけど……薫兄からして勝算はある?)」


「(分からない。相手がどんな攻撃を仕掛けてくるか分からないし、あの浮遊城にどんな防衛手段が張られているのか、どんな罠が行く手を阻むのかなんて分からないしね)」


 相手の情報が乏しい今回の戦い。今までの戦いの中でもかなりきつい戦いを強いられてしまうだろう。


「……薫達はどうかな?」


 すると、レイスたちを相手にしていたカイトさんが僕に今回の作戦でいいのか訊いてくる。一度、泉の方を見ると「任せるよ」と言われたので、僕は少しだけ考えてから返答する。


「今すぐやらないといけないレベルの危機ですからね。これで行くしかないと思います。それに……相手が魔法無効を使って来るなら、それに唯一抵抗できる『天魔波洵』が使える僕たちがいないとどうしようも無いでしょうし」


「『天魔波洵』に魔法無効は効かない……? そんな魔法なのかいアレは?」


「それは……グージャンパマの監視者がそう言っていたので間違いないかと」


「監視者って誰? マクベスとかじゃなくて? というか、どうやってそんな人を見つけたの!?」


「色々ありまして……一部、秘匿にして欲しい情報もあるとのことなので、僕から言えるのはそれくらいですよ」


「……全く。どうやれば、そんな人に巡り合うのか知りたいところだよ」


 カイトさんはそう言って呆れ果ててしまう。そんなカイトさんの姿を見ながら、僕は心の中で「美味しい料理が出来れば……かな?」と呟くのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ