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47話 薫の武器

前回のあらすじ「フラグは立てられた…。」

―「魔法研究施設カーンラモニタ・第三研究区画」―


「やったー!!」


 泉が出来上がった武器を持って喜ぶ。その手には指揮棒位の小さい杖があった。


「これなら、鞄の中に入れて持ち運べるサイズね」


「そういえばそうッスね。あっちの世界だと大っぴらに持ち歩け無いッスもんね」


「いや。お前ら……武器を持ち歩くこと自体どうかと思うんだが?」


「大丈夫です! 薫兄の催涙スプレーやドリルスティックみたいなものですから!」


「かなり凶悪な防犯グッズだな……」


 泉たちを襲ってきた犯人がどんな目に合うか……想像に難くない。


「というか使う事なんて無いッスよ。武器を構えない状態の魔法でも倒せるッスから」


 フィーロの言う通りで、武器無しでもワイバーンを倒せる程の魔法もあるんだから普通に必要ない。むしろオーバーキルである。


「それじゃあ、次はダークホースね」


「いや。何でそうなるの?」


 ドルグさんとメメ以外の皆がこっちを見る。


「そういえばさっきから気になってたんだけどさ……何で薫が何かやらかす話になってるんだい?」


「そうだの。何かあったのか?」


「ああ。そうだな。そういえば言ってなかったな……こいつは神霊魔法使いだ」


「「!!」」


 雷魔法に適応があると聞いて、驚いた表情でこっちを見るドルグさんとメメ。


「本当なのかい!」


「カーターがすでに確認しているらしい。それとこれからは神霊魔法ではなく雷魔法と呼ぶことになるかもしれないぞ。あっちの文明は電気という雷と似た物を使って文明を発展させているからな」


「なん……だと……」


「で、そんなレアの存在である彼の武器が普通の武器なのかって話なのよ」


「「……」」


 2人とも……黙ってこちらを見ないで下さい。その視線とても痛いです。というか皆酷くないかな。


「カシー。窯……壊れないかの?」


「……大丈夫よ。壊れたら大急ぎで直すから」


「もぉー! いい加減にしてよ! 人をトラブルメーカーみたいに!」


 あまりにも酷い扱いに我慢しきれずに皆に文句を言う。窯が壊れるかもってあまりにも酷すぎる!


「まあまあ薫兄。とりあえずやってみよう……ね? いいですよねドルグさん?」


「……そうだな。疑うのは酷い話だな。とにかくやってみようかの」


「そうだね! とりあえずやってみようかね!」


 本当に酷い言われようである。絶対に普通に終わらせてやる……。


「それでだが、材料は何を使う?」


「うーん。泉が木材なら僕は金属かな?」


 さっき泉が武器を作る際には魔石使いが良く使う武器専用の木材をメインにして、ワイバーンの皮や骨、それと魔石を使って作成した。それなら僕は金属。武器と言えばやっぱり剣や槍、後は斧とかのイメージだし。


「そうじゃの……」


 そう言ってドルグさんは窯の近くにある収納箱から何かを探している。


「金属か……丁度、切らしていていい物が無いな」


「うーん。じゃあこれは?」


 僕はアイテムボックスから金属のスクラップを出す。見た目は大きいモーターかな?


「おーーーーーい!!!! それ私の発明品だろ!!!!」


「紗江さんが処分して欲しいってことだったんだけど……これ何?」


「聞いて驚くな。これは新しい材料で作ったアクチュエータでな」


「つまりモーターとかシリンダーだよね?」


「そういう使われ方もするな。だがこれは今までの物より反応が良いんだ。まあ、費用が掛かり過ぎて『使えるか!』っていわれたがな」


「ということでこれを使いましょう」


「おーーーーーい!!!! だから私の大切な発明品をそんな軽いノリで使うな!!!!」


「だって、紗江さんにゴミ捨て場に持っていって欲しいって頼まれたし……僕の武器になって処分の費用もゼロだしいいんじゃないの?」


 車に積んでいるエンジンより少し大きいこのスクラップ。実際にこれを処分するとなると、中々な高額になるだろう。


「ぐっ! まあいい。今度はもっと低コストで実用性のある物にしてやる。頭の中に設計図はあるしな」


「決まりかの? それじゃあこれで作るぞ?」


「お願いします。でも量は大丈夫ですか?」


「安心するといい。使われなかった分は何かしらの形で窯の中に残るだけじゃからの。問題無いわい」


 それならとスクラップを虚空で浮かして釜の中まで運び魔法陣の中に入る。


「薫?」


「何、レイス?」


「いいのですか? あんな材料のせいで変な物が出来るんじゃ……」


「大丈夫だよ。そんな変な金属は使われてないから」


 どうせ使われてる金属なんて金、銀、銅とか鉄にアルミとかお馴染みの金属。それこそファンタジーの定番のオリハルコンとかミスリルのような超特殊な金属は存在しない。


「薫兄がフラグをこれでもかってくらいに立てたよ!」


「絶対何か起こるッス!」


 ……何も起きないから!


「いくよ! レイス!」


「は、はい……いいのかな?」


 そして2人して魔法陣に手を当てる。すると前と同じように強い光が釜から発生する。ほら。やっぱり変な事は起こらないじゃないか。


「何これ!? ドルク! 出力下げて!」


「分かっとる!」


 何かドルグさんたちの声が大きい気がするけど……変な事起きて無いよね? 光も今は穏やかだし?


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

― それからしばらくして ―


 釜の光が少しずつ収まっていく。


「終わったみたいだね」


「そうなのです」


「いやー……無事に終わって良かったね」


 レイスと顔を見合わせる。しかしその表情は苦笑していた。


「良かったね……じゃないわい! というかわしらの掛け声聞こえていただろうが!」


 ……すいません。聞こえてました。始まりから終わりまでずっと怒鳴り声で意思疎通してたのを聞いてました。


「あ~。しんどい。まさかここまで疲れるとは思ってなかったよ」


「そんなにだったの?」


「安定しないんだよ。最初から最後までね」


「ああ。ずっと動いてる感じだったわい。まるで生きているようだったな」


「……薫兄。やっぱり」


「待ってよ! 作成が大変だっただけでしょ? きっと出来た物は普通だって」


「……何だこれは?」


 すると、直哉が釜の蓋を開けて中を確認していた。


「直哉どうしたの?」


「これは……武器なのか?」


「どれどれッス?」


 フィーロも釜の方へと飛んで、直哉と一緒に中を覗く。


「……は?」


 フィーロもそれだけ言って黙ってしまった。そんなに武器に見えないのだろうか?


「何があるの?」


「ちょっと待て……というよりあれだけの質量がこれとは……」


 直哉が釜から取り出す。そこには……。


「はい?」


「ふぇ?」


「なんなんだこれは?」


 各々が声が上げる。それもそのはずだ。なんせ直哉が手に持っているのは……手のひらサイズの黒い球体なのだから。直哉が僕の所までそれを持ってきて渡される。軽い。そして大きいモーターを材料にしたにしてはかなり小さい。


「材料の一部とかも……全く残っていないの」


「全部使われたってことかい?」


 ドルグさんとメメの2人も窯の中を確認していく。材料として使用されなかった分は釜の中に何かしらの形で残るはずなのだが、2人の話を聞いている限りそれも全く無いらしい。


「失敗?」


「アレを投げる事でダメージを与える感じかしら? とういか黒い球体って……変な宇宙人と戦う事になりそうな……」


 泉、それ言わないで欲しい……その話の通りだと僕、死ぬかもしれないし。


「まあ、とにかく言えることは……フラグ回収乙」


「流石、一級フラグ建築士ッス」


「薫……」


 ここにいる皆が僕を方へと視線を向ける。


「いや!? 僕のせいなの? 直哉の発明品のせいじゃないの?」


「それを使おうとしたのはお前だろ」


 それはそうだけど。でもオリハルコンとかミスリルとか特殊な金属を使用してないし……。


「こりゃあ……どう使えばいいのか見当つかないね~」


「全くだわい」


「うう……僕だってそうだよ。もう武器っていうから剣とか斧とか刀とかナイフとかもっとカッコいい物を……」


「え?」


「何? カシーさん?」


「薫。その武器……」


「どうしたのって……え?」


 手のひらを見ると……黒い球体は真っ黒なナイフになっていた。


「へ?」


「なにこれ?」


「えーと。まさか……」


 僕は急いである武器のイメージをする。


「大きくなったのです!!」


「日本刀……全身真っ黒だけど」


 武器は日本刀になっていた。そしたら今度は……。


「2つに分かれた!!」


「両手ナイフね!」


 僕は両手ナイフを構えて軽く振る。なるほど……大体は分かった。この武器は僕のイメージ次第で何にでもなるマルチウェポンだ。


錬装士(マルチウェポン)……流石、薫兄ね。本当に期待を裏切らないわ。そのまま大剣、大鎌、二丁拳銃に出来ないかしら」


「どこぞのゲームの主人公をイメージしてるのかが分かったよ泉……でも、それより幅広く色々な武器になれそうだけどね」


「すごいのです。変形しているのです」


 レイスが変わった武器であるこれをまじまじと見ている。


「どうしてこうなったのかしら……違うのは雷魔法使いでアクチュエータなる金属……」


「うーむ。直哉。何かアクチュエータで心当たりはないか。このような武器になった原因が分かるかもしれない」


「いや~……心当たりと言うか……絶対これだなというのは……」


「え? あれの中に何か他の変な物が混じってたの?」


「ああ、一部に形状記憶合金を使っていてな、しかも磁性で制御可能な……」


「待って! 何でそんな物を!? それって小説のネタで記事を見たことあるけど研究段階だよね!?」


「いや~。思い切って作ってみたら出来ちゃった。てへ♪」


「てへ♪……じゃないからね? というか似合ってないし」


「そんなの分かっている。恐らくだが、本来なら磁性によって形を変えるはずの金属が魔石とか色々な物が混ざったことによって、薫の脳の電気信号を読み取って高速で形を変える武器になったのだろう。まあ記憶合金でこんな事は普通出来無いのだが……これは面白いな!」


 まさかそんな物が使われていたなんて……すっかり忘れていたよ。僕たちの世界にも形状記憶合金という特殊な金属があった事をさ……。


「2人共。私も含めて皆に説明して……分かるように」


 泉が何を言っているのか分からないというような表情をしている。気のせいか頭から煙が出ているようにも見えた。


「形状記憶合金っていってな。異なる金属を一つに組み合わせて作られる物で、金属に形状を記憶させる事で、歪んでも所定の温度を加えればその形状に戻せるという特殊な合金だ。これを応用する事で内視鏡のケーブルとか小型モーターに使える」


「けーぶる、もーたー、とかは分からないけど。とりあえずは熱を加えることで元に戻る金属とは分かった」


「そんな金属があるとは驚いたね……」


「で、あのアクチュエータには研究中の強磁性形状記憶合金を使っていてな。本来なら温度では無く磁場を使うことで制御するんだが……どうやら魔石と組み合わさったことで思考で制御出来るようになったみたいだな……」


「つまり……とんでもない武器が出来ちゃったってこと?」


「うむ……そうだな。泉の言う通りだ。なんせ意思で形を変えるなんてことが出来るのだからな。その状況次第にあった武器で戦う事が出来る。まあ、使いこなせればの話だがな」


「ゲームでもそれ言ってた。器用貧乏だって」


 複数の武器を使うということは、あまりよろしくない。例えば剣と槍では構え方が違うし、剣でも片手剣に両手剣、片刃と両刃でも持ち方や攻撃の仕方が変わる。それに1つに集中して鍛えないせいで、中途半端な構え方を覚えてしまったり、複数の構えが混合して武器を振るのに危険な構え方になったりしてしまう。


「どうやら使い手の腕が問われる武器になってしまった……みたいだね」


「とりあえずその武器……何て言えばいいかの?」


「そういえばそうね。どんな武器にもなるのならこれ自体の名前が必要かしら」


「それなら伝説の武器みたくエクスカリバーとか草薙剣とかつける?」


「なんかカッコいいッス。うちらの武器にも何か名前つけたいッスね」


「え? うーん……それなら私達の武器は大地の杖の意味を持つヨルムンガンドでいいんじゃないかな。伝説の杖って他のだと効果的にイマイチあっていないし」


「ヨルムンガンド……いいッスねそれ!」


「薫はどうするのです?」


「そうだな……それなら僕は正体不明の意味を持つ空想の生き物の名前からつけようかな?」


「何なのです?」


(ぬえ)。資料によって姿、形が変わって決まった形が無い妖怪っていう空想の生き物の名前だよ。ピッタリじゃないかな?」


「鵺……なんかカッコイイのです!」


「じゃあ決まりだね」


―可変型暗黒武器「鵺」を手に入れた!!―

効果:薫の意思で姿、形が変わる全てが真っ黒な特殊な武器です。使い方によっては様々なことが出来ます。色々と試してみましょう。


「しっかし……本当にお前は期待を裏切らなかったな! さすが薫だ!」


「その誉め言葉はうれしくないよ直哉……」

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