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477話 最終確認 その3

前回のあらすじ「マナフルさんの秘密発覚」


5/16:一部追記しました

5/22追記:次回の更新ですが、都合により今日のお昼ではなく夜となります。

―「薫宅・居間」―


「マナフルさん。ちなみにですけど……『ヘルメス』が何なのかご存知ですか?」


「そうなのです! 膨大な知識の中に……」


「あるのじゃが……あまり役に立つような知識では無いぞ? そもそも、妾の持つ知識はあくまで今の世で使える知識を有しているだけであってな。そうじゃな……グージャンパマにある魔石の全種類の効果とか、どうすれば手に入るかとかじゃな。まあ……タダでは教えんがな」


「効果……あ。もしかして『ワンモアタイム』って魔法の知識もあるってことですか?」


 マナフルさんのその言葉に、僕は別の疑問を解決できるのではないかと思って訊いてみた。魔法を作り出した古代人の知識なら、アレがどんな魔法なのかはっきりするだろう。


「『ワンモアタイム』か……あるぞ? しかし、どうしてこんな魔法のことを訊きたいのじゃ?」


「実は先日……」


 そこで、先日『ワンモアタイム』の魔法を使用した事、そこで起きた事をマナフルさんに説明していく。すると、マナフルさんの表情が徐々に怪訝な顔になっていく。


「うむ……まず言っておくが、効果は微睡のような幻影を見せるで間違いない。これはカマソッソだけじゃなく、どんな者が使っても同じ結果じゃ」


「誰も使えないんですけど?」


「暗闇限定の魔法じゃからな。本当に真っ暗じゃないと発動しない」


 真っ暗前提の魔法……確か、カマソッソの暮らす場所は光の無い洞窟だったり坑道だ。あの時、どうししてカマソッソ本人が『ワンモアタイム』を使わなかったのか疑問だったのだが、あの時は光源があったために使えなかったのか。微睡のような幻影……つまり幽霊の類みたいな幻影を見せて、相手をパニックにさせる魔法ってところか。


「それは、おかしいのです。あの時の室内は暗くてもあっちこっちに光があったのです」


「『ワンモアタイム』には別効果もあるらしい……恐らく、お主らはそれを引いたのじゃろう。しかし、死者と話せる一度だけ話せる魔法とは……与えられた知識の中には無いとすると、古代文明が滅ぶ直前に創られた魔法で詳しく調査されていなかったか。もしくは、その魔法は本当のイレギュラーなのかもしれないのう」


「もし後者だったとして、僕とレイスが鍵ですかね?」


「恐らく、そうじゃろうな。お主らの魔法は一部制限が解除されている。恐らく、お主らが聞いた前の使用者も何かしらの理由で一時的に制限が解除されていたのかもしれないのう。制限解除の影響が『ワンモアタイム』の魔法にも影響を与えて、たった一度きりの特別な魔法になったのじゃろう。しかし……もったいないことをしたのう?」


 マナフルさんの言う通り、あの時たまたま使えそうだったから使用してしまったが、もっと自分のために使うタイミングが、この先あるかもしれない。そう考えれば、かなりもったいないことをしてしまっただろう。でも……。


「妹のような存在である泉が元気になるなら安いもんですよ。おかげで、カーターの元に嫁ぐことが決まりましたし……」


「ふむ……それならいい。で、話が逸れたが戻させてもらうぞ?」


「あ、はい。どうぞ」


 『ワンモアタイム』の魔法について話が聞けたところで、マナフルさんが『ヘルメス』が一体何なのか説明を始める。


「アレは星の記憶を違法な手段で読み取ることが出来る魔道具。さらに、効率性を考えてアレに意思を持たせたマクベスやセラのような存在に近い種じゃな」


「違法な手段……こっちで言うとクラッカー。いや、AI搭載の自動ハッキングツールってところですね。魔道具という認識があるってことは『ヘルメス』って古代文明では結構な数が流通されていたんですかね」


「恐らくな。アレが大量に流通していたと考えたら、何とも面倒な世界じゃのう……」


「「……確かに」」


 僕とレイスの声が重なる。ここまでの出来事を考えると、古代文明は日常的に世界が滅ぶ危機を迎えている世界だったとなる。そんな世界では碌に心身が休まらないだろう。そして、声の重なったレイスも同じ意見なのだろう。


「でも……そうなると納得ですかね。あの変異型アンドロニカスの姿も制限が掛けられた魔法の一種であると考えると、あの『ヘルメス』がハッキングして手に入れた魔法は対象の身体強化という名の肉体改造。そして、宿主の仲間にもその恩恵を寿命を対価に与えられる魔法と考えれば……まあ、あの見た目も相まってまるでゾンビを生み出す魔法ですね」


「後は強力な精神系の魔法も覚えていたと思うのです。アンドロニカスはそれで苦しんでいたのです……今、思ったんですけど、それが私達にも通用するならかなりヤバい気がするのです」


「そういえばそうじゃったな。言っておくが、精神系の魔法に関してはお主らは気にしなくてもいい。精霊と契約している魔法使いに精神系の魔法は効きにくい。さらに、お主らは聖獣と契約を結んで紋章を得ている。契約や紋章には術者の精神を強化する隠れた効果があってな……だから、お主らが精神を揺さぶられるような事はなかなか無いじゃろう。アンドロニカスと戦った際に、1回もそのような魔法を使用して無いのではないか?」


 マナフルさんに言われて、アンドロニカスとの戦いを振り返ると確かにそのような搦め手は一回も使用していない。どちらかというと、魔法を打ち消すのに重視していた気がする。


「一応、念入りに準備をすれば実戦でも使える物はある……が、それでも、お主らにはあまり効果が無い以上、使用して来ないと思うから安心するといい」


「分かりました」


 僕はそう返事をする。『ヘルメス』が使うのならマナフルさんの言う通り問題無いのだろう。だが、問題なのは、『ヘルメス』がゴスドラと融合している点である。ゴスドラは若い頃からテロリストとして、実際に自身の立てた作戦にも実行犯として参加しており、そのため、自身の経験もあって頭が切れる男らしい。そんな奴に魔法の知識が加わったなら、戦闘に使えないとされる精神攻撃魔法も十二分に発揮させることができるかもしれない。考えすぎかもしれないが、頭の隅に置いといてもいいかも知れない。


「『ヘルメス』に弱点って無いのです? もしくは欠点とか?」


「特にこれといった欠点は無い。だが、あの『ヘルメス』だけで括るなら、命令を歪曲してでも実行しようとするところじゃろうか……どうすれば『ユグラシル連邦の勝利』を『両者共倒れになってもコーラル帝国に勝つ』に変換されてしまったのか……イマイチ分からん」


「……やっぱり故障してるのかもしれないです」


「そうかもね」


 僕とレイスは『ヘルメス』は報告書通り故障しているんじゃないかと考え始める。もしくは、アレは別の命令を受けており、それを遂行している最中なのかもしれない。


「『ヘルメス』を倒すには、確実に奴を破壊しなければならない。中途半端に残すと自己回復機能が働いて戻ってしまうからのう。それともう1つ……アレは変容できるから、やるなら徹底的に潰すようにじゃな」


「それは……かなり厄介ですね。大人しく倒れてくれると嬉しいんですけどね」


 『ヘルメス』を倒すには、圧倒的な高火力でその全身を倒さなければならない。そうなってくると、『天魔波洵』の攻撃魔法は今回の件において非常に有効な手段ともいえるだろう。


 僕が頭の中で情報整理してると、マナフルさんは空っぽになったお茶菓子とカップをそそくさとテーブルの隅に置き、大きな欠伸を1つする。


「……ってことで、妾からの話は以上でいいかのう?」


「ええ……ありがとうございました」


 僕とレイスがマナフルさんにお礼を言うと、マナフルさんはその後、お昼寝のために居間から出ていってしまった。そして、残された僕とレイスはとりあえず茶菓子とカップを片付け始めるのであった。

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