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475話 最終確認 その1

前回のあらすじ「ラスボスの居城出現!」


4/27追記:次回の更新は5/8になります。

―翌日「ビシャータテア王国・城内 応接室」―


 翌日、僕とレイスはビシャータテア王国のお城へと来た。お城へと着くとすぐさま応接室へと案内され、用事のためすぐに来れない王様を待つことになった。ソファーに座り王様を待っている僕たちにメイドさんがお菓子とお茶を用意してくれたので、さっそく僕たちはお菓子をいただく。


「このクッキー美味しいのです。ドライフルーツで甘みを出していた頃が懐かしく思えるのです」


「こっちもバターやミルクなんかが流通し出したからね。それ以外にもあっちと似たような食材が出回り始めたし……あっちと変わらない食事が出来る日もそう遠くないかもしれないね」


 僕はそう言って、レイスが今食べている物と同じクッキーを口にする。シンプルなバタークッキーであり一口含むと口の中にバターの香りが広がる。舌が繊細な人ならまだまだ粗が目立つかもしれないが、僕としては日本でも食べられるような物と遜色のないように思える。こっちに来た当時は、どれだけの時間を掛ければ、あっちと同程度の食文化になるかと思っていたが……甘味に関してはそう遠くも無いだろう。


「魔族がいなくなった以上、この世界の食文化も僕たちの世界みたいにどんどん発展していくんだろうね」


「……アレが邪魔をしない限りはなのです」


「うん」


 グージャンパマの文明はこの1年でかなり発展した。徐々にだが、科学という知識が広がりつつあり、そこから発想を得たクラフターが道具を作り、商人がそれを色々な人に売っていく。魔石を使わない摩訶不思議なそれらの道具は人々の興味を掻き立て、そこから多くの人が科学への知識を身に着けようとする。それは道具だけではなく料理や文化、法律も同じである。


 それは地球も同じであり、来年辺りにはこちらの文明を紹介する本が刊行される予定であり、また報道機関とも協力して、こちらの文化や魔導工学を少しずつ知ってもらう手筈になっている。18世紀中頃に起きた産業革命、その後に起きたIT革命と同等の技術革命が起きようとしている今、それに対して人々に理解してもらえる動きが世界規模で起きている。


 両世界が新たなスタートを切ろうとしている。しかし、それをゴスドラや『ヘルメス』が障害となって立ちはだかり、僕たちの未来を阻もうとしている。これをどうにかするのが、僕たちに与えられた最初の試練なのかもしれない。


「待たせたな」


 僕が物思いに耽っていると、王様が応接室にやって来て対面のソファーに腰掛けた。その後、少しばかり世間話をしてると、カシーさんたちも来たので、早速今日の本題に入る。


「今回の浮遊城に関するこちらの対応なんだが……」


 王様の話を要約すると、僕たちが浮遊城に出向くようなら、アンドロニカス討伐に一緒に向かったカシーさん、シーエさん、カーターとそれぞれの契約している精霊の6人を僕たちに付けるということだった。また必要なら、最大限の助力をしてくれるということだった。


「何か……いつも通りなのです」


「いつも通りでは無い。今回、王様の話している内容はアンドロニカス討伐の時よりさらに好待遇だと思え。要は勝つためなら、多少の犠牲も厭わないと言ってるんだからな。それこそ、この国の法に関わるような事になってもだ」


「緊急事態ですけど、流石に重すぎますって……」


「こちらもその位の覚悟があると言ってるんだ。この国一丸となってお前達を助ける。関係各所にも通達済みだ……ということで、あの訳分からないお城に突撃するならカシー達も一緒に行かせるから、決まり次第、早めに連絡をくれ」


「分かりましたけど……いいんですか?」


「この国だけでも無事なら問題無いとか言っていられる場合ではないからな。両世界が滅びるかもしれないこの状況……出し惜しみするのはおかしな話だろう。そして……他の国も同じ意見だ。ゴルド殿も今回の件に関しては最初から全力で行くそうだ」


「そうですか……」


 昨日、マスターにゴルドさんに協力を求めるための料理を作ってもらい、それで交渉するつもりだったが……その手間は省けそうだ。だが、僕たちより圧倒的に強いゴールドドラゴンであるゴルドさんが、最初から本気を出すという事は、今回の件がそこまで深刻な件ということである。心の中で世界崩壊は流石に無いと思う気持ちが若干残っていたが……その考えは浅はかだったようだ。


「他の国も我と同じ対応するそうだから、どんな些細なお願いでもいいから訊いてみてくれとのことだ。ああ……冒険者ギルドと商業ギルドもいいからな」


「本当に……総力戦ですね」


「……ああ。私自身、信じられない気持ちもあるのだが……ゴルド殿の様子を見てしまったら、その気持ちもどこかへ行ってしまったな」


「どんな様子だったんですか?」


「既に臨戦態勢って感じだ。配下のドラゴン達も連れて、例の浮遊城を攻め落とすつもりらしいからな。アンドロニカス討伐の件では、一歩引いていた時と比べれば、今回に件に関しては何か異変を感じ取っているのだと思っている」


「強者であるゴールドドラゴンとマグナ・フェンリルが率先して前に出ようとしている……王様の言う通り、何かしら感じ取ってるのかもしれないですね」


「ああ。しかも、その両者だけではなく、あっちこっちで魔獣達の活性化も起きているらしくてな……冒険者ギルドからの報告では、浮遊城が現れる少し前からそのような傾向が起きているらしい」


「王様の話に付け加えるけど……東の大陸でも魔獣の活動が活発化してるそうよ。それだから、グージャンパマ全域でそのような事態が起きているみたいよ。野生の本能……それとも体内の魔石に何かしらの影響を与えているのか……非常事態ではあるけど調べる価値はありそうね」


「カシー。そんな暇は、今の俺達には無いだろう? という事で薫……今回の件ではグージャンパマは魔国や夜国も含めた全ての国々が浮遊城に対して協力することになった。これは竜人も含まれているからな。だから、わざわざ個人で竜人と交渉する必要は無い。その分、他のことに回せだそうだ」


「……それってゴルドさんから?」


「そうだ。それと……恐らくだが、竜人とマグナ・フェンリルのような強力な聖獣はあの城に入ることは不可能かもしれないそうだ。あの浮遊城の周りに何か歪な力が働いているらしくてな……マクベスを中心に今、浮遊城の調査を進めているからそれが何なのかはすぐに分かるはずだ」


「つまり……「ゴルドさんの竜の息吹で粉砕!」とはいかないという事なのです?」


「その通りよ。だから……「中はお前達に任せたぞ」とも言っておいてくれって頼まれたわ」


「そうか……」


 ゴルドさんは多分と言っているが、確定で、ゴールドドラゴンとマグナ・フェンリルは浮遊城に入ることは出来ないのだろう。それがどんな仕組みなのかはマクベスたち調査隊に任せるとしよう。そうなると……周囲への連絡も不要、道具類の準備も粗方終わらせている。他に僕が出来ることと言えば……。


「話は以上ですかね?」


 僕がそう言うと、王様たち3人で顔を見合わせ何か伝え忘れていないか確認をするのだが、「特に無い」と告げられる。


「だったら、少し調べたい事があるので……これで帰りますね」


「調査ならこっちで……」


「僕、個人で調べたい内容だから気にしないで。役立つ情報なのかも分からないし」


 僕とレイスはそこで王様達と別れ、お城から自宅へと戻るために城下町を歩いていく。


「何を調べるのです?」


「色々……『ヘルメス』もそうだけど、他に気になっていることをね」


 決戦間近であるこのタイミングで調べものというのは、自分自身どうかと思っている。だが、色々な情報が乱雑に集まって来ている以上、それを自分なりに整理するためにも、この調べ物は重要だと思っている。


「まずは……」


 僕は最初に調べることを決めつつ、メインストリートを早足で進むのであった。

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