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471話 終幕の序章 パート2

前回のあらすじ「マクベスが地球にやって来た!」

―「薫宅・居間」―


「この報告書の最初の日記って誰が書いたのです?」


「イリスラークに所属していた研究員の1人ですね。ユグラシル連邦の研究員の1人として入り込み、アンドロニカスの様子を観察していたようです。アンドロニカスはこれを『ヘルメス』に気付かれないように保管していたようですね」


 レイスがマクベスに訊いていた研究員の日記内容に目を通す。最初はアンドロニカスの観察ということで、アンドロニカスが若干の闘争心の向上、魔法の威力の向上などが見られたという報告や、観察という退屈な日常に愚痴を零していたりしていた。だが、アンドロニカスが世界規模で大破壊を行った後では、後悔、徐々に弱っていき死が近付いて来る恐怖などの暗い内容へと変わっていく。最後に書かれていた言葉は「死にたくない……」だった。


「なるほど……確かに「アレの発見は失敗だった」と書かれているな。そして……『ヘルメス』が生きている魔石という情報は全く載っていない」


「はい。アンドロニカスに組み込まれる前から意思を持っていたのか、それとも組み込まれた事で意思を持ったのか……はたまた、この研究員はその事実を知らされていなかったか。その辺りは分からないですね」


「『ヘルメス』をアンドロニカスに組み込んだ施設、または、これの発掘現場は分からなかったのか?」


「いえ。39ページに載ってるんですが、東の大陸にそれらの場所がある事が分かったので、ハニーラス、ナイトリーフの協力も得て、その2ヶ所を調査しました……が、跡形もなく、それこそ瓦礫1つ残っていませんでした」


「それは残念……そこから年代位は判明するかと思ったんだがな」


「この場所情報……アンドロニカスは調べなかったのかな?」


「難しかったようですね。『ヘルメス』は時折、休眠することがあったらしく、そのタイミングで情報を集めていただけのようなので……ここまでの遠出というのは難しかったでしょうね」


 そう言って、苦笑いをするマクベス。『ヘルメス』によって自由を奪われ続けた日々を想像すると、アンドロニカスに同情するところがある。遺書として残したメッセージには自分の意思で僕たちと戦ったと言っていたが、本心はどうだったのか……今となっては分からずじまいである。


 僕はそんなことを思いつつ、研究員の日記からアンドロニカスが残した情報をまとめたページへと目を通していく。『ヘルメス』が何かしらの理由で休眠していた時や、『ヘルメス』がそれを消すに値しないと判断された情報がまとめられたものがまとめられているとマクベスから説明を受ける。また、アンドロニカスが最後に残した魔石内の情報も載せてあった。そしてそれらの情報から、とんでもない推測が立てられていた。


「以上、これらの情報から判断して、魔導生命石『ヘルメス』は失敗作あるいは故障しており、既に元の機能を失っている可能性あり……か。マクベスも同じ意見なの?」


「はい。ユグラシル連邦の勝利を目的とした願望が歪められている点、また生命を軽んじている点……元のアンドロニカスの思想とはかけ離れているところからして、やはり何かしらの異常があると思っています。先日の戦争……あのままいったら、こちらも魔族も共倒れになるのは確実ですから」


「それを勝利と言うには……少々厳しいのです」


「全くだ。むしろ……敵味方関係なく全てを皆殺しにしようとしている節もある」


「自分もそう思います。変異した魔族の解剖をして下さった曲直瀬医師からの報告なのですが、いくつかの臓器が深刻なダメージを受けていたらしく、恐らく長くは生きられなかったのではないかと仰っていました」


「味方も使い捨て……アレに人間の考えが当てはまるのか分からないが異常だな」


 直哉の言葉にここにいる全員が頷く。これまでの出来事を考えると『ヘルメス』はイレーレの勝利の名の元に全てを破壊しようとしているだけな気がする。そもそも『ヘルメス』とは一体何の目的で作られたのだろうか?


「ねえ。『ヘルメス』って一体何の目的で作られたんだろう? 増幅器……としての機能があるとしたら、何かのパーツだったのかな?」


「パーツ……ですか?」


「うん。魔導生命石という核に外装を付けるつもりだったとか……ほら、エーオースにいるクーみたいに」


「お前の言う事に一理ある。最初にアンドロニカスに寄生したがマクベス達に敗れて一度肉体を失った。そして、先日の戦争時に新しい肉体を手に入れていた……それ自身が単独で戦うような姿は誰も見ていないんだよな?」


「自分は見てないです。むしろ……アンドロニカスが薫達に敗れたと同時に逃げに回る姿は見ましたけどね。もしかしたら、あの姿では魔法による攻撃が出来ないなど、何か特別な理由があるのかもいれないですね。肉体が無いと自由に力を使えない……そう考えると、アレが何かのパーツだというのは頷けます」


「となると……『ヘルメス』がまだ稼働しているなら、アンドロニカスに替わる新しい肉体を求めているのは間違いないだろうな。自分が自由に動くための肉体がな」


「また数千年掛けて一から作り上げるのです?」


「分からん。そもそも稼働しているのかどうかさえ怪しいし、アンドロニカス討伐と同時に発生した異常な魔力反応……その現場であるアフリカの調査が続いているらしいが、『ヘルメス』がこちらに来た痕跡を発見したという情報も無いことだし……うん?」


 直哉が話すのを止めて、書類のあるページをじっくりと見始める。何を見ているのかと思って、横から覗かせてもらうと、アンドロニカスが考えた『ヘルメス』の弱点と対抗策が書かれていた。


「この対抗策……用意出来るな。それに信憑性もある。念のために用意でもしておくか」


「え? 他の研究とか忙しいんじゃ……」


「構わない。これはこれで面白い内容だしな。それに……『ヘルメス』の残骸が見つからない以上、用心しておくのは悪いことでは無いだろう」


 直哉はそう言って立ち上がり、帰る準備を始める。


「って訳で、早速、作成に入るとしよう。お前達はこっちに来たマクベスにでも町案内でもしてやるといい。じゃあな」


 そう言って、直哉は帰って行った。玄関で直哉を見送った僕は、一緒に見送りをしたマクベスに、この後どうしたいのか訊いてみた。


「でしたら……町案内をお願いします。魔法の無い世界の文明がどのような物なのか、前々から気になっていたんですよね」


「それなら……」


 その後、僕たちは外に出掛ける準備をして、マクベスの要望に応えるべく、色々な物が見れるだろうショッピングモールへと車を走らせるのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから数日後「極秘収容施設」アルファ部隊リーダー視点―


「メーデー! 緊急事態発生! 繰り返す! 緊急事態発生!」


「ボマー! 生きてるか!」


「あん? 生きてるぞリーダー……まあ、手ひどくやられたがな」


 片腕を押さえながら、私達と一緒に移動を開始するボマー。私達より前に部隊が突入したが、全部隊全滅しており、それをやったであろう存在と先ほどまで戦闘を行っていたのだが、それに銃器による攻撃が効かず、またドクターによる毒も効かなかったため、私は形勢不利と判断し、ボマーによる爆弾攻撃でどうにかそれの注意を逸らし、脱出することに成功した。


「ボマー……逃げ遅れたら置いていくからな?」


「おいおい! 俺の爆弾で助かったんだぞ? 少しは労えよ?」


「それだけ、口が利けるなら問題無いかもね」


「お前達……あいつから逃げている最中だからな? 無駄口を叩いている暇があるなら警戒を怠るな」


 収容施設内の通路を走って逃げる私達。この先に階段があり、屋上へと行けばヘリコプターがあるはず……。


「リーダー、上に行かないの?」


「下に向かう。車を使って逃げるぞ」


「何で車だ?」


「……勘だ」


 私達は1階まで下りて、そこからジープに乗って収容施設から脱出する。すると、生き残りがいたのだろう収納施設の屋上からヘリコプター2機が私達とは別方向に飛び立っていった。


「やっぱりヘリの方が……」


 ベクターがそう言うと同時に、ヘリコプターに火球のような物が物凄い勢いでぶつかり2機とも大爆発を起こして墜落していった。


「……やっぱり車でいいや」


「だろう?」


 私はそう言って、車のアクセルを強く踏み、猛スピードで収容施設から距離を取る。


「ベクター。緊急連絡……ヘルメスのリーダーであるゴストラ・レーヴェリンが異常な姿となって収容施設を破壊したとな」


「通常の武器が利かないも付け足しとくね」


「ああ、頼んだ」


 私はポケットから煙草を取り出し、運転しながら煙草を加え煙を吹かす。とりあえずはボマーの治療、それと壊された武器の調達……色々、痛手だったが、まあ生きているだけでも良しとしておこう。


 この後、異形化したゴストラに追跡される事なく、私達は戦闘区域から無事に脱出することに成功したのであった。

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