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462話 ナイトリーフの鉱山調査

前回のあらすじ「死者の声が聞ける魔石の登場」

―2日後「夜国ナイトリーフ・グラテック鉱山」―


 直哉から調査の同行を頼まれた日から2日後、予定通り僕たちは夜国ナイトリーフの王都からほど近い鉱山へとやって来た。僕たちとカーターたちはそれぞれの契約獣の背中に乗って移動してきたのだが、直哉とトラニアさんは試作型ホバーバイクに乗って移動している。


「あれがあちらの大陸での普通なのか?」


 トラニアさんはそう言って、自分が乗ったホバーバイクのシートに手を触れる。最初は車輪も何にもないそれを見て本当に移動できるのかと疑っていたが、実際に乗ってその心地よさを知ると、まるで子供のように無邪気な笑顔を浮かべていた。かくいう僕もこのホバーバイクを1台欲しいとは思っており、映画で見たあのホバーボートみたく、水上をこれで移動してみたかったりする。


「いや、この乗り物は開発中でな。まだ一般には広がっていない最先端の乗り物だ。こんなの私達が住む地球にも無いぞ」


「そうなのか。これはレアメタルというのを使用してるのか?」


「これには使用していない。だが……これに使用したとしたら、さらにグレードの高い物にはなるな」


 直哉は乗って来たホバーバイク2台をアイテムボックスへと仕舞う。ホバーバイクを片付けられてしまったトラニアさんはとても名残惜しそうな表情をするのだが、直哉が鉱山の説明を頼むと、気を取り直してここの鉱山の説明を始めてくれた。


「国内にある鉱山の中で、一番の規模を誇る鉱山だ。この国で採れる鉱石なら、ここですべて賄えるぞ」


「……ほほう。ここがレアメタルが大量に眠る鉱山か。辺りが暗いだけで見た目は普通の鉱山というところか……」


 そう言って鉱夫たちが働く姿を上から見下ろす直哉。鉱山は鉱石を採掘するために大地を下に掘り進めたことによって、大きな窪地となっており、さらに横へと続く坑道があっちこっちに見られる。


「よーし! 運べ!!」


「いくぞ! せーの!!」


 大きな掛け声を上げ、鉱夫達が採掘した巨大な鉱石を運び出す。


「おお!! コバルトじゃないか!! しかも、大人数人で運び出さないといけない特大サイズとは……」


 それを見た直哉はその大きなコボルトの鉱石を見て大はしゃぎする。そして、すぐさまその鉱石の元へと移動を始めてしまうので、僕たちもその後を付いていく。そして、そのコバルトの巨石までやって来くると、直哉はさっそくそのコバルトの巨石を観察し始める。


「直哉。鉱石ってこんな特大サイズの物ってある?」


「見たことも聞いた事も無いな! ここまでの特大サイズがあるとは予想外だ! これはどの位の頻度で採れるんだ?」


「他の鉱山がどうなっているのかは知らないが、ここではそこそこ採掘されるサイズだな。それと……これもレアメタルか?」


 トラニアさんがそう言って、足元に転がっていた石ころを持ち上げる。直哉はそれを受け取り、持って来ていたハンマーでそれを砕いてその断面を確認する。


「……黄銅鉱だな。銅が取れるな」


「この辺り一帯、そんな色の石ばっかりなのです」


 レイスが特注のライトで地面を照らす。言われて見ると、確かに直哉の持った石と似たような石がそこら中に転がっていた。


「こっちにこんな石があったわよ」


 サキが持って来た石を見た直哉は、今度はその石が鉄鉱石だと判断する。そして、サキにどこで取ったのかを訊いて、そちらへと向かうとその辺りの地面を調べ始める。


「うむ……ここは鉄鉱石ばっかりだな。ふふ……これほどの鉱床があるとはなかなか期待できそうだな」


「こんな地表近くに鉱石が転がってるんだね」


「あれだけの大きな鉱石が採れるなら、この位のサイズはいらないんだろうな」


 視線を手に持ってる鉱石に向けたまま話をする直哉。真剣な眼差しでそれらを観察し続けるのだが、時折、唸り声を上げている。

 

「どうかしたの?」


「鉄に銅……ここは採掘場だ。だから、これらも採掘されていておかしくないのだが……」


 そう言って、あっちこっちの地面を調べ始める直哉。


「こっちはタングステン……これはコバルト……うーーむ……」


「やっぱり変?」


「そうだな……そういう場所と言えばそこまでなんだが、こんな風にいくつものレアメタルの鉱石があって、そのサイズが先ほどのアレが普通というのと………」


「もっと不純物が混ざっているはずだよね?」


 あっちこっちの鉱石を見て思ったことを僕は口にする。あの後、自分なりに調べてみたが、鉱石というのは様々な不純物が混ざった状態で採掘される。ところが、ここにある鉱石の中には、すでに精錬されたかと勘違いするような鉱石も転がっていたりする。


「ああ。精錬することで不純物を取り除かないといけないのだが、ここの鉱山の鉱石の中にはかなり純度の高い状態でその辺りに転がっている鉱石もある。下手すると、クロノスのような大型の魔石の作用によって、あのような鉱石が短い年月でポンポン作られている可能性があるな」


「そうなるとここに何かあるってこと?」


「あるかもしれないな……」


 不敵な笑みを浮かべながら立ち上がる直哉。現在、直哉は魔石による周辺環境への影響を研究しており、既に論文として発表もしている。今回ここの調査に同行したのは、レアメタルの埋蔵量についての事前調査よりも、自身の研究のためにここに来ているのだろう。


「恐らくだが……生きた遺跡があるのかもしれないな。一応、火山の噴火や大規模火災、もしくは地殻の変動などの自然災害によって多くの魔石が外的要因を受けたことによる要因も考えられるが……それらしい魔石は無さそうだな」


「今日はその施設も探すの?」


「しない。あるかどうか分からない物だしな。当初の予定通り、事前調査と例の死者と会話が出来る魔石の確保だけだ……って何だその顔は?」


「いや……てっきり探すかと思ってた」


「まあ実際に探してみたい気持ちはあるが……探すなら、しっかりとしたそれにふさわしい道具を持ってくるさ」


 そう言って、直哉は鉱山の調査を本格的に始める。トラニアさんを連れ、鉱夫から話を訊き始める。そして、その鉱夫の横にあるコバルトの巨石とは別の運び出された大きな鉱石を測りだす。


「薫! お前達は適当にそこらの石を採取してくれないか。試料はこの中に入れてくれ」


 見ていた僕たちに直哉は周辺に転がっている鉱石を試料袋に入れて欲しいと頼まれる。僕は手のひらサイズの試料袋を受け取り、僕たちは地面に転がる鉱石を回収していく。なるべく種類が偏らないように注意しつつ、4人で手分けして集めていく。


「薫。これはどうなのです?」


「多分、見たことの無いタイプの鉱石だから、念のために回収しておこうか」


「これ……ダイヤかしら?」


「そうかもしれないな……」


 僕たちは宝探しををするかのように、様々な鉱石を見つけては試料袋に回収していく。この後、アザーワルドリィか笹木クリエイティブカンパニーのどちらかで鉱石の詳しい鑑定を行う予定とのことだ。


「おーーい4人共! こっちに来てくれ!!」


 鉱石の回収に精を出していると直哉に呼ばれる。僕たちは作業を止めて直哉の元へと向かうと、いくつかある坑道の内、一際大きな坑道前に立っていた。


「今度は内部の調査をするのか?」


「それもそうだなんだが……」


 直哉はそう言って、視線をトラニアさんに向ける。すると、その視線に気付いたトラニアさんは一度咳払いしてからこの坑道の調査をする理由を説明していく。


「この坑道はカマソッソが生息する場所に繋がっているんだ。カマソッソは基本的には洞窟内で住んでいてな、そこで寝ていると思うぞ」


「寝てるのか?」


「ああ、寝てる。基本的にこちらからちょっかいを出さなければ、ずっと寝てるな」


「へえー……そうなんだ」


 ずっと寝ている夜国ナイトリーフの聖獣。かなり物騒な名前に反して、聖獣自体はのんびりした性格なのかもしれない。僕がそう思っていると、皆が坑道内へと入るので、僕も坑道内へと入っていく。


「よいっしょ……っと!!」


「ふうー! ここいらで一休みするか……」


 坑道内に入ると、さらにいくつもの横穴が広がっており、その横穴では鉱夫たちがつるはしなどの道具を使って掘削をしていた。


「あっちこっちで掘削する音が聞こえるのです」


「結構、五月蠅いわね」


 レイスとサキが坑道内に響く『カーン、カーン……』という音があっちこっちから聞こえる。そこで、僕は雑音を消せる魔道具を取り出し、完全に雑音を消すと危ないので、少しだけ聞こえる程度に調整して使用する。


「これでどう?」


「皆の声が聞きやすくなったのです」


「助かるな」


 皆の声が聞こえやすくなったことに感謝されていると、僕はそこであることに気付く。


「カマソッソ……五月蠅くないのかな?」


「恐らくは大丈夫のはずだ。特にいざこざは起きていないからな」


 そう言って、前へと進むトラニアさん。ここまでの規模の鉱山なのだから、この鉱山が開かれてからかなり長い年月は経っていると思われる。その間に、カマソッソが居着いたのかは知らないが、その間に大きな問題が起きていないなら問題無いだろう。


「まあ……かなり前に一度死者も出るようないざこざはあったようだが、俺達がそんなことをする事は無いからな。そんな危険は起きないだろう」


 トラニアさんのその余計な一言に、トラニアさんの除いた僕たちはこう思うのであった……。「それ、フラグだぞ」と。


 カマソッソ……その名前の意味は『死のコウモリ』。その死が僕たちに向けられないことを心から願うのであった。

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