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45話 魔法研究施設カーンラモニタ

前回のあらすじ「直哉がフルボッコされた」

―「魔法研究施設カーンラモニタ・第一研究区画」―


「まずはここだ」


 案内された部屋に入ると、五芒星型の魔法陣に囲まれた真実の口みたいな物があり、そして、その頂点には色違いの魔石が5個設置されていた。


「この部屋はなんなんだ?」


「ここは魔法の相性を調べる所よ」


「相性?」


「ええ。どの魔法使いにも得意、不得意な属性があるの。それを調べるのがこれなの」


「全ての属性が使えるけど?」


「ええ。でもより高度な魔法を習得したりするのには知っといたほうがいいわ」


「高度って、何でそんな魔法をこいつらに覚えさせようとしてるのだ?」


 直哉が少しトーンを落とした声で尋ねる。まともな理由を説明しないで、いきなり自分と相性のいい属性を調べようなんて、少しばかりおかしな話だろう。


「それは、この子達の安全を考えてよ。魔法使いで異世界の住人。変な奴等に狙われるかもしれないし……ただ、それだけ」


「あのワイバーン……やっぱり意図的な襲撃だったんですね」


「「!?」」


 僕がそう訊くと、カシーさんとワブーが少しビックリした表情をする。もしかしたらと思っていたが……ビンゴだったみたいだ。


「なるほどね……それで、僕たちが危険に晒されても、自衛が出来るようにして欲しいってところかな」


「嵌められたわ……」


「そうだな」


 2人がそう言って、ため息を吐く。ここまで来たら話すしかないと判断したのだろう。先ほどよりも、さらに真面目な顔で話を続ける。


「また、お得意の想像力かしら」


「まあね。レイスやフィーロから小説のネタでワイバーンの特徴について聞いてたからね。あり得ない事が続いたなら『全くの偶然です』って通すのは厳しいんじゃないかな?」


「ええ、その通りよ。ワイバーンが現れた場所を特定しようとしているんだけど……良く分からないの」


「それなら一番最初に目撃された場所じゃないッスか?」


「フィーロの言う通りで、一番最初に目撃された場所を見つけて調査をしたわ。山間の村で山を棲み処にするワイバーンだからそこにいたんだろうって結論付けも出来るのだけど……」


「何かあったんッスか?」


「……その村でのワイバーンが確認されたのはそれが初めてなのよ。村が出来てから初めて」


「それなら棲み処を、つい最近その近くにしたとかじゃないのですか?」


「他にも理由があってな、王都からその村まで馬で2,3日掛かる。それとその村の辺りで変な出来事が起きていなくてな……」


「えーと。つまり?」


「……山を棲み処にするワイバーンがわざわざ山から離れて、そんな速い速度で飛べないのに2,3日も掛けて、他の村々を襲わずに真っすぐ王都の方に向かって飛ぶこと自体がおかしいってことかな」


「大正解よ薫。なんの理由も無く。普段は群れないのにたまたま群れになって、これまた王都のある方向にたまたま飛んだ……いくら何でも不自然でしょ? まあ……棲み処に何かしら理由があるのかもしれないけど」


「その棲み処を見つけられないの?」


「普段は人が来ない高い山に住むからな。流石に難しい。それにあの異常な個体も気になるしな……」


 そう結論付けるカシーさんとワブー。ワイバーンの特徴からしてありえないことが連発して起きたワイバーンによる王都襲撃未遂事件。ここまでの話を聞けば、誰もがこの事件に裏があるのではないかと疑うだろう。


「だから、薫兄がさっき言ったように、私達に身に何があってもいいように、戦う力を身に付けさせようとしたんですね」


「ええ……それと、他にも変な事があるのよ」


「変って?」


「……恐らく、いつもなら魔獣がたまたま現れたで、この事件を済ませていたわ。だけど……どうしてかしら。気になるのよね」


「お前もか。実は俺もなんだが……というより王様やシーエ達もこの事件を疑っている。というよりここ最近、皆の様子がおかしい……」


「何だそのおかしいというのは?」


「心境の変化……とでも言えばいいのかしら。実は薫に会った後なんだけど……この国はより貪欲に発展を望むようになったの。新たな食材を探したり。それによって食べられるキノコも見つかって、それを栽培している農家も見つかったわ。いえ、それだけじゃないの」


「他にも何かあったんですか?」


「技術だ。今まで実験や研究ばかりしていたが、他の街にある技術や知識を調べたりするようになった」


「つまり調査や見聞を広める活動をするようになったと?」


「ええ……今までこんなことをしようと思わなかったのにね」


「だな」


 2人はそう言って不思議そうな顔を浮かべている。異世界の人々が皆そんな性格の持ち主と言えばそこまでなのだが……そんなことがあるのかな?


「まあ、とにかくそちらの事情は分かった。で、この魔道具で自分にあった属性を調べられるというこれと、高度な魔法の習得はどういう関係なんだ?」


「簡単な魔法は基本的には全属性使えるわ。でも私のエクスプロージョンは火属性に適性が無いと使えないの。他にも水属性のダイダルウェーブ、風属性のトルネードとかは適性が無い人はいくら頑張っても発動が出来ないわ」


「うーん……そうは思わないかな?」


 今のところは思った魔法、全て使えたからな……。


「私も。今まで思った魔法全部使えたから……そんな風に感じたことは無かったです」


「それは2人の使った魔法と相性が良かったのだろうな」


「2人……あれ、レイスやフィーロは?」


「精霊は全てに適性がある。問題無い」


「そうなの?」


「はいなのです」


 レイスがそう答えると、フィーロはも頷いて答える。


「だから、後は2人の属性を調べれば、どんな上級魔法が使えるか分かるって訳。まあ、薫の場合は地属性に適応在りだと思うわ。彗星というとんでもない魔法を創ったのだし」


「いや。多分空を飛べるのなら誰でも使えると思うけど?」


「出来なかったわ」


「え?」


「試しにやってみたのよ。あの時と同じようにね。でも彗星は発動しないでただ岩が落ちただけ。私は出来てもストーンバレットとフライトまでだった。だからあれは中級か上級魔法に属する魔法よ。あなた達のおかげで四属性全ての上級魔法が創られたってことになるのかもしれないわね」


「そうだな。地属性は最弱。ゆえに上級魔法はおろか中級も一つも無かったしな。という訳で地属性の上級魔法はお前の彗星で決まりだからな」


 いつの間にかメテオもどきが上級魔法に昇格されている!?


「じゃあ、私も出来ないのかな?」


「適応があれば泉ちゃんも使えると思うわ。とにかく調べてみましょ?」


「じゃあ……薫兄。私が最初にやっていい?」


 泉が元気よく訊いてくるので、先行を譲る。


「そうしたら、そこの穴に手を入れてもらって、そして魔法を使うイメージをしてちょうだい」


「まずは俺がお手本をやろう」


 するとワブーが穴の中に手を入れる。すると設置されていた5個全ての魔石が光る。


「こんな感じだ。簡単だろう? 適性があればその魔石が光る。やってみろ」


「分かりました」


 泉が中に手を入れて、目を閉じて念じる。すると石が3つ強く光り出す。


「青と緑、それにオレンジの魔石が光ってるッス」


「……凄いわ。3色使いの魔法使いなんて」


「そういえば、レイスが僕たちがバリエーション豊富に魔法が使えるのは珍しいって言ってたな……」


「ええ。戦闘メインの魔法使いは普通は基礎の魔法で4つか5つ。そして相性のいい魔法で中級と上級を合わせて3つほどっていうのが普通よ。ちなみにだけど、これはあくまで4属性の話だからね? 転移魔法とかは入れてないから注意してね」


「青は水属性。緑は風属性でオレンジは地属性の魔法と相性がいいってことだ。それぞれの上級魔法を習得できるぞ」


「やったーー!! 私もメテオを撃てるってことだよね!!」


「でも、あんな魔法、使う所あまり無いと思うんッスけど?」


 フィーロの言う通りで、あんなのを街中で使ったら大惨事である。


「ゲームでも強い魔法に入るからね。それが使えるっていうのがいいのよ!!」


 泉はそう言って、自分の得意な属性で再現できそうなゲームの魔法名を上げていく。その中に、町を1つ消し飛ばすほどの威力を持つ魔法名が混じっていたのだが……気のせいだろう。


「そしたら次は薫ね」


「うん」


 カシーさんに言われて、僕も魔道具の中に手を入れる。僕は何が光るのだろうか? ワクワクしながら目をつぶり念じる。


「えーと。青にオレンジと……白ね」


 泉の声が聞こえたので目を開けて確認する。青は水属性でオレンジは地属性で……白は何だろう。火属性は赤色の魔石だろうし……白という色から連想する属性なんて思いつかない。


「は!?」


「まさか……」


 カシーさんとワブーが僕の結果に驚いている。


「白の魔石って何属性なの?」


「分からないッス。実は初めて見たッス」


「私もです。だから、白の魔石ってなんなんだろうな? ってずっと思っていたのです」


「そんな珍しいの?」


「ええ。魔石は何もしなければ虹色なのです。そして属性のある魔法で加工すれば赤、青、緑、オレンジに光ります。いずれにも属さない魔法は基本的に紫となるのです」


「レイスの言う通りだ。この白の魔石はたまたまこの魔石に落雷が落ちて出来た物で雷の力を宿している」


「雷?」


「薫。あなた神霊魔法に適応があるわ」


 2人が慎重な面持ちで僕を見る。


「電気とは便利じゃないか! 頑張ればスマホの充電を魔法で出来るのではないのか?」


 『あはは!』と直哉が笑っている。それはかなり便利かもしれない。


「待って! 今スマホに充電できるってどういうこと?」


「うん? 何もって……あちらの機械っていわれている物の多くは雷と同じ電気で動いているぞ?」


「え?」


「というより薫? 確かお前『雷撃を撃てる』とか言ってなかったか?」


 直哉の言葉を聞いたカシーさんが僕との間合いを一瞬に詰めて、僕の肩を強く掴む。痛い……肩がミシミシと音を立てている。


「あなた……黙ってたわね!!!!」


「えーと……『雷を落とせるって言うな』ってカーターからアドバイスがありまして……」


「機械が電気で動いているっていうのは?」


「ごめん……言ってなかったけ?」


「言ってないわよ!! どういうことなの!! あっちではそれが普通なの!!」


 体を前後に高速で揺さぶられる……気持ち悪くなりそう。


「あの……カシーさんごめんなさい。私も撃てます……」


「適性がなくても撃てるの!? その魔法!?」


 さらに強く揺さぶられる。止めて……何か出そう……。


「おい。そこまでにしとけ。薫の顔色がヤバくなっている」


 ここでやっとワブーが注意する。するとカシーさんが体を揺らすのを止めてくれたのだが……頭がぐらぐらする。


「だ、大丈夫なのですか?」


「何か目がグルグルしてるッス!!」


「だいじょうぶ~……たぶんだけど~……」


「あ、ダメだわ。これ」


「で!? どういう物か説明しなさい!!」


 カシーさん……そんな殺生な……。


「ああー……私が説明しよう。薫。君は休んでいるといい」


「りょ~か~い~。なおや~たのんだ~…」


 そして僕はそのまま床に倒れ込むのであった。

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