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456話 ナイトオーシャン

前回のあらすじ「夜国ナイトリーフでお泊り!」

ー「夜国ナイトリーフ・商業地区」-


「さっきのあれ……私もハニーラスのお店でやったよ」


「泡拭いて大変だったッスね」


「そうだったのか……ほら、アレって凄く珍しい品だからさ。すぐにでも買い取ってくれると思ってたんだけどね……」


「珍し過ぎるんだ……あれほどの品を扱う店はこの王都にも無い。アレらを使った品を買うとしたら上位貴族か女王様ぐらいだろうな」


「となると……あの後、加工されてフロリア女王の献上品として送られるのかな?」


「間違いないだろうな……あの店主、俺のことを知っていたみたいだしな。そうじゃなければ、あんな直ぐに買い取ってくれることは無かっただろう」


 先ほどのお店で起きた出来事を説明してくれるトラニアさん。確かに、鑑定係の店員が困り果てた所に、店の奥から出て来た店主さんがやって来て、トラニアさんの方を見たと思ったら、すぐに僕が出した素材の買取を決めてくれていた気がする。


「しかし……あれらの品々も貰って良かったのかな?」


 すると、父さんが足りない買い取り金額と引き換えに貰った照明などの魔道具のことを話題に出す。どれもこれも意匠を感じられる品々であり、そんな物を15品もいただいたのだからそう思ってもしょうがないだろう。


「伝説の素材だからな……一生遊んで暮らせる金額なのだから当然だ……と思ってるのだが、まさか、そちらの大陸はこれらが普通に流通しているのか?」


 自信満々に言ったかと思ったら、トラニアさんはすぐさまユノとカーターの2人の方を向いて恐る恐る自分の価値観があっているのかを尋ねてきた。2人は一度顔を見合わせてから、その質問に答えていく。


「珍しい品は変わりませんね。ただ、こちらほど手に入りにくいかと言われたら……」


「そうですね……オリハルコンのインゴットは各国の協議の元で流通しているので、一部の商人でも入手可能……ドラゴンの鱗も少ないながら流通してますね。まあ……それの管理は薫達が行っているので、薫達に聞いた方がいいでしょうが……」


「……どうなんだ?」


「えーと……グリーンとかブルーとかはそこそこの数を卸してるけど。それ以上のランクであるレッドからゴールドに関しては卸してないです。というか……止められてます」


「さっき売ったのは?」


「ブラックですね。まあ、上から3番目ですから……」


「……いいのか?」


「まあ……それらの権限は薫達が持ってますから、他の人達がどうこうできる問題では無いですね」


 そう言って、トラニアさんに笑顔を見せるユノ。それを見たトラニアさんは頭を抱えている。


「女王様にすぐさまご報告しないと……あんな物を他の者に渡ってしまったら……」


「薫! アレって食べられるかな!」


「お姉ちゃん! 面白いものがあるよ!」


 トラニアさんが困っている中、街探索を楽しんでいる母さんたちが僕たちを手招きしながら呼んでいる。


「呼ばれてますね……難しい話はここまでにして探索を楽しみましょう!」


「そうッスね! ユノの言う通り楽しむッス!」


「そうと決まれば……レッツゴーなのです!」


 そう言って、女性陣は走って母さんたちのところまで行ってしまった。


「トラニア……とりあえず、今は俺達の案内を優先しといた方がいいんじゃないか?」


「ああ……そうしておく。ちなみにだが……経験済みか?」


「……当たり前だろう?」


 そう言って、微笑むカーター。すると2人は謎の握手をしてお互いを労い始める。僕はその2人に申し訳なさを感じつつ、母さんたちと合流するのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから2時間後「フロリア女王が住む屋敷・エントランスホール」―


「ようこそ我が屋敷へ……ふぁ~」


 屋敷に到着すると、そこには眠たそうな顔をしたフロリア女王がいた。衣装もいつもの神官のような服ではなく、白のノースリーブワンピース姿だった。


「おまねきいただきありがとうございます!」


「おお……元気な子ね。この子が話してた妹ちゃんか。ようこそヴァンパイアが住む屋敷へ。歓迎するわ」


「女王様ってヴァンパイアなの? やっぱり血を吸うの?」


「ええ。飲むわよ。まあ……人の生き血を吸うような真似はしないけどね」


「へえー……」


 親切にヴァンパイアがどんな存在なのかを教えてくれるフロリア女王。その姿に後ろに控えている配下の方々もほっこりしている。


「さて……と。それじゃあ早速、親睦会を始めましょうか……女性は私の後に付いて来てもらうとして、男性はトラニアに任せるわ」


「仰せのままに……あ、その前にご報告が1つありまして……」


 そう言って、トラニアさんがフロリア女王に先ほどの件を報告する。それを聞いたフロリア女王が少しだけ驚きの表情をするも、すぐさま笑顔で返事をする。「ちょうどいいわ」とも聞こえたので、何に使用するかは決まっているようだ。


「じゃあ、私に付いて来て」


 そう言って、女性陣がフロリア女王と一緒に行くので、僕たちはトラニアさんの後を付いて行こうとする。


「……あれ? 薫はこっちじゃないの?」


「僕、男ですから!?」


 僕はフロリア女王のその言葉に素早く女だと否定する。それを聞いた周りの配下の方々はやや驚きの表情をしていた。


「僕のような男が来ると話してないんですか?」


「話したわよ? それでも、あなたがその男だと思わなかっただけよ」


 そう言って、フロリア女王は女性陣と一緒に行ってしまった。


「薫……ちなみにお前用に別室を用意してるからそこで着替えてくれ」


「男……」


「「心臓に悪いから……」」


 カーターとトラニアさんが僕と一緒に同じ部屋で着替えるのは嫌だと否定する。


「茂殿は否定しないんですね……」


「まあ……この子の父親ですから。慣れっこですよ」


 父さんのその言葉に感嘆する2人。そんな3人の姿を見て、僕はどこか釈然としないのであった。その後、トラニアさんに案内された部屋で僕は1人着替え始める。上にパーカーを羽織り、下はサーフパンツを履く。そして、地球から持って来た遊び道具や飲料にお菓子などが入っているアイテムボックスを指に嵌めたところで部屋を後にする。すると、ちょうど父さんたちも着替え終わったようで、部屋から出てきたところだった。


「……その姿なのに何故か女性特有の色気を感じるのは何故だろうか」


「薫だからな……」


「男なのに女性特有の色気とか言わないでよ……」


 僕を女として見る2人に注意しつつ、屋敷の裏にあるビーチへと出る。すると、砂浜にはすでにパラソルの下にビーチチェアとテーブルがいくつもセットされており、それらをオシャレな照明が照らしている。海の方を見ると、海の中に立つ外灯が海を明るく照らしており、ナイトプールならぬナイトオーシャンとしてまるでリゾート地に来たかのような気分にさせる。


「そう言えば……そこまで暑くないけど、このまま海に入ってもいいのかな?」


 この夜国ナイトリーフの季節は夏のはずなのだが、汗が噴き出るような暑さという訳では無く、むしろこのままビーチチェアでお昼寝するのに最適位の温度である。僕は気になったので、海の水に触れるとその水はまるで温水プールの水のように温かった。


「この夜国ナイトリーフの海水はどうしてか他の所より温かいみたいでな。それだから、体を冷やし過ぎることは無いと思うぞ」


 トラニアさんの説明に僕たちは感心しつつ、女性陣が来るまでの間に、アイテムボックスからレジャーシートを取り出し砂浜に敷いたところで、ドリンク入りのクーラーボックスやタオル、後は浮き輪などの遊び道具を出しておく。


「これは浮き輪と言ってね……泳ぐ際の補助道具だったり、これの上に乗ったりして海の波を楽しんだりする道具なんだ」


「ほお……あっちの世界にはそんな遊び道具があるのだな。そっちは?」


「これは水鉄砲で……」


 父さんがトラニアさんに僕が出した遊び道具の説明を始める。予想はしていたが、どうやらこのような遊び道具は夜国ナイトリーフにも無いようだ。トラニアさんと父さんの話を聞いていると、ビーチチェアでゆっくりしたり、時折、海で泳いだりするのがこちらでの海水浴とのことらしい。


「ふむふむ……砂浜で造形物を作るための道具か。これは子供も喜びそうだな」


 トラニアさんが感心しつつ、これらの道具類をこちらでどうにか手配できないか考え始める。そんなのは商人とかが考えるような内容の気もするのだが……。


「うわ~……すごーい!」


「まるでナイトプールね」


 泉とミリーさんの声が聞こえたのでそちらを振り向くと、女性陣が屋敷から砂浜へと歩いてくる最中だった。そして、2人の水着姿も見ることになるのだが、ミリーさんはシンプルな黒のビキニであり、泉は中にシンプルな紺色のビキニを着ており、その上に肩紐なしでアクセントとして多少のフリルの付いたピンク色の水着を着ていた。


「泉のあの水着……カーターのために選んだのかな?」


「おい。ちゃかすな……」


「至って真面目だよ。当初の目的だった魔王討伐が終わった以上、僕たちもそろそろ身を固めないとね」


「……そうだな」


「おおーー!! これ凄いね!! あかねもそう思うよね?」


「うん!」


 すると、前にいた泉たちを走り抜いて、母さんとあかねちゃんが一番に僕たちの所にやって来た。オレンジ色のビキニを着た母さん。その幼い見た目には良く似合っているとは思うが、年齢からしたらかなり派手である。そして、その隣にいるあかねちゃんはまるでスカートを履いているような見た目のピンクを基調としたワンピースを着ていた。


「にあってる?」


「うん。ねえ、父さん?」


「ああ。2人ともかわいいよ」


「いやーん! 茂に褒められた!」


 父さんに水着を褒められて喜ぶ母さん。それを真似してあかねちゃんも同じように恥ずかしがるようなポーズを取る。そんな姿に父さんは朗らかな笑顔で2人に先ほど聞いたこの海の説明をするのであった。

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