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44話 異世界の工房へ行こう!

前回のあらすじ「異世界でお菓子が作れるようになった!」

―翌日「カーター邸宅・庭」―


「今日はいよいよこちらの世界の工房か……楽しみだな!」


「直哉にとってはこれが一番の目的だもんね」


 お城での夕食会後、僕たちは一度帰宅して、翌日に今度はこちらの工房を覗かせてもらうことになった。


「でも……紗江さんと榊さんは来なくて良かったの?」


「ああ。話し合ったんだが、すぐには実現出来ない技術になるから、今回は私が見ればいいだろうってことになってな。まあ、会社のこともあるしな……」


 という訳で……紗江さんと榊さんは今日は来てない。その替わりに……。


「でも、何で私達も工房に来て欲しいのかな?」


「なんなんッスかね?」


 最近、シークさんのお店で作業をするのが日課になりつつある泉たちがいる。


「工房に呼ばれるってことは何かあるとは思うんだけど……思いつかないなかな」


「あたいもッス。何か特別な事あったッスかね?」


「皆、来たわね」


 泉とフィーロが呼ばれた理由について話し合っていると、カシーさんとワブーの2人がやって来た。


「それじゃあ、工房へ案内するわ……って何で距離を取るのかしら?」


「昨日のあんな変態的な動き見た後なら警戒するからね!?」


 まるでホラー映画のような姿で登場し、2階から魔法を使わずにして平然と飛び下りて、僕に襲い掛かかてっきた狂人……そんなカシーさんから間合いを取るのは当然だと思っている。

 

「それなら安心しろ薫。今日は研究に思いっきり没入できるからって事で平常になってるからな」


「……本当に? いきなり背後から襲われない?」


「本当だ。俺が保証する。だから安心しろ」


 ワブーの言葉に少々不安だが、警戒を解く。


「そもそも、あなた達が呪縛で押さえつけたのが原因なんだけど……まあいいわ。それじゃあ行きましょうか」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―しばらくして「ビシャータテア王国・学業地区」―


「この地区に来るのは初めて」


「僕もだね」


「ここは学業地区だからな。学生や学者とか一部のやつらしか来ることはないだろう。そして工房もここにある」


「商業地区じゃないの?」


「売り買いを目的とした施設ではないからな。普通は一般人が来ないという地区もあって警備のしやすさからここにある」


 辺りを見ると、確かに商業地区に比べて歩いている人は少ない。それに皆がオシャレな学生服だったり、カシーさんが来てるような魔法陣が描かれている白衣なんかを来ている。


「こちらの学者は何の研究をしているのだ?」


「歴史や文化、農業に薬草に武器や防具、インフラなどなどって感じかしら。魔法が関わる研究以外ってところかしら」


「ふーむ……なるほどな。そこは地球と変わらないのか」


「でも、キカイコウガクというのは無いわね」


「武器とか防具……それに魔石というエネルギーがあるのだから、そのような研究があってもいいと思うんだけど……?」


 泉の意見に賛成である。馬車もあるくらいだし動力に魔石を使うという発想はなかったのだろうか?


「わざわざ、そのような物が要らなかったというのがあるのだろう。車やトラックというのもアイテムボックスに速度を上げる魔石を使ったブーツを使えばいいからな。ただ、そちらみたく大量生産は無理だがな」


「魔石って魔獣を倒すと落とすんだよね?」


「ああ。そういえば詳しい説明をしてなかったか……」


「じゃあ薫兄。説明をお願いします。白衣と眼鏡を掛けて。」


「ワブーかカシーさんの役目だよ? というか僕知らないし」


「まあ、とりあえずはスケッチブックを出してくれ、歩きながら説明しよう」


 という事で、アイテムボックスからスケッチブックを出し、いやいや白衣を着て眼鏡を掛ける。


「最初にだが……魔石は魔獣の体内にできる石だ。これを加工することで魔法を使えるようになる」


「加工とは?」


「これから行く工房でやる。加工には3つ方法があってな。1つは魔法使いが魔石に直接魔法をかける方法。もう2つ目は魔法陣を使って大量の魔石に魔法を施す方法だ。前者は高出力で複雑な物を作ることが出来るが大量生産が出来ない。後者は大量に作れるが複雑な物は出来ないって所だ。最後に魔石に魔法陣を彫るというのがあるのだが……彫るというのがなかなか手間でな。手間暇が掛かるんだ」


 ワブーが話しながら、スケッチブックに絵を描いていく。


「なるほど。それで具体的にはどういう物を作るんだ?」


「最初に大量生産して作る物だがこれはインフラだな。火をつけるや水を出す。灯りを燈すに温度を上げる。人々の生活に欠かせない物がこれで作られる」


「私達の国も同じですね」


「あれ? そうなんッスかレイス?」


「そうなのですよ」


「へえ~。精霊の国の事情も同じなのね。というかフィーロは知らなかったの?」


「知らなかったッス」


「普通は知らないはずよ。というか国の情勢や指針で変わるはずの内容だし……レイスの両親は国に従事しているのかしら?」


「あ、はいそうなのです」


「そう。なら知ってても仕方が無いわね」


「はいなのです」


 ……レイスが笑顔で答えるがどこか固い。フィーロも微妙な笑顔をしているし……何か隠しているのがバレバレである。2人とも隠し事出来ないタイプなんだな……無理には訊くことはしないが。


「まあ、インフラを優先するのは当然だろう。国は人がいなければ成り立たないからな。それで高出力の魔石は何に使われるのだ?」


「そちらは武器関係が基本だな。カーターやシーエの武器に嵌めている魔石もこれだ。後は高級品用の魔石だが……そちらに分かりやすく言うと薫の持つアイテムボックスが当てはまる」


「まあ、そこはなんとなく察していたけど……」


「ちなみに個人で購入するとしたら王様の許可と金貨で100枚は必要ね」


「え? そんな高級なの?」


「ああ。なんせ手に入る魔石は基本大量生産向きの小さく低品質の物ばかりだ。高品質用の魔石となるとこの前のワイバーンとか強い魔獣を相手にしなければならない。それだから国だと念入りに情報を集めてからそこに魔法使いを派遣して狩ったりするというのが基本だ。だからより手に入りにくい。そもそも薫のアイテムボックスは普通なら軍事用に使われる物だからな?」


 とんでもない高級品をいただいていたとは! 今度、何かお返ししないと……。


「なるほどな。それほど薫とはお近づきになりたかったという訳か」


「ああ。それによって手に入った恩恵はだいぶ大きかったがな」


「お陰で空を飛べるようになったしね」


「習得したの?」


「ええ。ただ、まだぎこちなさがあるからまだまだ練習が必要だけど」


「飛んで迎撃出来るようになったからな、かなりの戦力増強だ。この前のようにワイバーンが来ても対処出来るぞ」


 鼻息を上げるカシーさんとワブー。カーターやシーエさんたちがまだ練習中の中、まさか既に習得していたとは……。


「流石、賢者だったわよ。私達が教えて数時間位で覚えたから」


「あら。泉ちゃん達の教え方も良かったわよ。お陰でイメージしやすかったから」


「だな」


「いえいえ。こちらこそ魔法の生地をこちらに融通してもらってるので、少しでもお礼になれば」


「あの4人ももう少しでいけそうだからな。指導を頼む」


「はい! 喜んで!」


 カーターたちが空を飛びながら連続で魔法による斬撃を加えるようになるのも近いってことか……出来るようになったら見せてもらおう。


「脱線したな。という訳で魔石は魔獣によって質が違う。そして良いもの程魔獣が強い。そして魔石に魔法を込めるには魔法使いが必要」


「なるほどな。だから大量生産は無理というわけか……しかし、魔法使いなら簡単に増やせそうな気がするのだが」


「精霊は基本的には契約したがらない。そこまでのメリットがこちらに無いからな」


「そうか? う~ん、しかしな……」


 直哉は何を思ったのか、通りでたまたまお喋りしていた精霊4人組に近づく。


「ねえ! 私と契約……」


 『契約』の言葉が出た瞬間に精霊たちが散開し、直哉に総攻撃を仕掛ける。高速で飛び回り魔法による様々な攻撃を受けて、直哉は倒れる事を許されず、その場でふらついている。


「精霊さんの攻撃カッコいい……。あ、これ小説のネタにしよ」


「呑気にしていいのか?」


「直哉だから大丈夫……多分」


 そうこうしているうちに攻撃が止み、直哉がその場に倒れる。


「おっさん……次は容赦しないからね……」


 そう言い残し、精霊たちはその場を去る。


「あ、あんな風になるほど嫌なの……?」


「そうッスね……でもあれはちょっと極端だと思うッスよ?」


「何かデメリットでもあるの?」


「いや、それはない。ただ精霊からすると契約は結婚と同格な所があるから気軽にやるものでも無い」


 僕たちの場合、だいぶ気軽だった気がするんだけど……。もしかしたら、あの時のレイスたちって大分困っていたのかもしれないな……。


「な、なるほどな。これほど拒否されるとは…」


 すると、直哉がぼろぼろになりながら戻ってくる。


「大丈夫?」


「な、何とかな。まあ、よく紗江からハリセンで叩かれるから、そのお陰で軽傷だな……」


 『あれだけの魔法による攻撃を受けて軽傷……というわりには顔が腫れてますが?』と言いたかったが、本人が軽傷というのだ。ここは黙っておこう。


「とりあえず精霊の気質上、契約はしたくないのが普通ってことは分かった」


「ということだ。それだから魔法使いは気軽に増やせないと思ってくれ」


「それでどこまで行くんッスか?」


「あの建物よ。壁に模様が細かく描かれている」


 他の建物より頭一つ分大きい建物があった。近づいていくと壁にはかなり細かく模様が施されているのが分かる。


「すごーい……」


「この模様……全部魔法陣なのです。」


「あら。分かった?この壁には壁の強度を上げるもの以外にも様々な魔法陣が描かれていて、この建物全体が巨大な一つの魔法陣になっているの」


「なるほどな。これがこちらの実験施設になるのか。」


「ええ。さあ、中に入りましょ。そして、ようこそ。魔法研究施設カーンラモニタへ」


 こうして僕たちはカーンラモニタへ足を踏み入れるのだった。

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