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447話 最後の激闘

前回のあらすじ「最終フォームに変身!」

―その頃「旧ユグラシル連邦第一研究所 野外実験場」―


「hjtrljk!!!!」


 奇声を上げながら光線が出っぱなしの触手を振り回すアンドロニカス。僕はそれを潜り抜け、ほんのわずかな隙を狙って四葩を上に掲げる。


「我が剣の輝きの元に集え! 星旄電戟(せいぼうでんげき)!」


 四葩の纏っている青い電撃が紫電へと変わり、それと同時に無数の光輝く矛が現れる。そして剣を前に向けると、前方に向かって矛が全て発射される。そして矛はアンドロニカスを貫通するわけでもなく、そのまま突き刺さる。そして四葩が纏ってる紫電を斬撃としてアンドロニカスに飛ばすと、飛んでいった斬撃が無数の斬撃となって拡散し、アンドロニカスに刺さった矛に目掛けて飛んでいく。そしてそれが矛にぶつかると同時に矛が激しい帯電を始め、しばらくすると爆発を引き起こしていく。


「凄いのです……」


「これも通常攻撃なんだけどね」


 この『天魔波旬』の状態ではどんな魔法も使える訳では無く、召喚魔法と同じで7つの専用の魔法になっている。状況に応じて複数の魔法を使えないのは不便なところだが、先程から放つ魔法はどれもこれも強力な物である。


「jとrsks……!!」


 爆発で起きた煙が晴れると、光線が出ていた触手が地面に垂れ落ちた状態で肉塊が震えている。すると、今度は口角を引き裂きながら、その口を大きく開こうとする。すると、その口の中から骨が剥き出しで、全身が赤く染まったゾンビのような姿が現れる。その胴体は肉塊と繋がっているため、肉塊と別れて行動することは無さそうである。すると、そのゾンビは肉塊に手を突っ込み、先ほどまで使用していた槍を引っ張り出す。


「じお;kp!!」


 先ほどとは違って、しっかりと両手で槍を構えるゾンビ。アンドロニカスでの失敗を教訓にでもしたのだろう。すると、ゾンビの胴体と肉塊が繋がる部分が触手のように自由自在に動き、ゾンビがこちらへと向かってくる。


「えrうぇえfv!」


 ゾンビのその動きは早く、さらに槍は真っ黒なオーラを纏っていた。そして、そのまま突撃してくるので、僕は四葩でそれを弾く。攻撃を弾かれたゾンビは弾かれた衝撃で吹き飛ばされるが、すぐさま体勢を戻し、槍を床に突き刺した。


「hろjpとk!!」


 ゾンビが叫ぶと同時に、床にひびが入り、床が魔法によって波打ち、その勢いを利用して床の破片とその上にあった瓦礫を飛ばしてくる。


「効かないよ」


 僕は鵺を前にして『烏集之交(うしゅうのまじわり)』を再び発動させ、僕に向かって飛んでくる瓦礫の軌道を鵺へと変更させ、黒い球体状にひとまとめにする。そして『鴉巣生鳳(あそうせいほう)』によって、瓦礫で出来た大型の鳥の群れとなってゾンビへと目掛けて飛んでいく。だが、ゾンビは纏っているオーラをさらに放出させた槍を振り回して、鳥の群れを撃墜させる。


「強いのです!!」


「そうだね」


 先ほどの広範囲で高威力の魔法も手強かったが、今のゾンビのような戦い方も厄介である。


「だけど……相手が悪いかな」


 僕は四葩を鞘にした鵺に仕舞いそれを腰に佩く。そして、『鴉巣生鳳(あそうせいほう)』によって作り出した最後の1匹の鳥を落とすため、ゾンビの意識がそちらに向いているこのタイミングで一気に近付く。その際、腕に装着した蓮華躑躅から放出されるオーラを拳へと集中させる。


「lmkじょ!!」


 すると、ゾンビがこちらに気付いて、鳥を一突きで倒し、すぐさまこちらを迎え撃つため槍を構える。


「神へと昇華せし霊猪よ! その力を持って全てを打ち砕け!! 獣神撃!!」


「じょへりえあghjこおr!!!!」


 ゾンビの持つ槍の射程圏内に入った瞬間、ゾンビは手に持った槍の矛先にオーラを集中させて、突撃する僕へと向けて鋭い突きを放つ。それに対し、僕は渾身の一撃を繰り出す。ゾンビの槍と僕の拳がぶつかると同時に、ゾンビの持っていた槍が粉々に砕け散り、突進の勢いのままゾンビの顔面を思いっきり叩く。それによって勢いよく後ろへと飛ばされ、口を開けっぱなしだった肉塊の中へと入っていく。僕はそのままもう一方の腕を後ろへと下げ、もう一発放つ体勢を取る。それを見た肉塊は口を閉じて防御態勢を取り始める。さらに、その瞳を大きく開いて何かをしようとしている。


「魔法封じなのです!?」


 レイスがそう予想するのだが、肉塊との距離が近づきつつある中、一向に『天魔波旬』が解除されるような気配はない。そして、文字通り肉塊の目の前までやって来る。


「はぁああああーーーー!!!!」


 僕はそこで渾身の一撃を、2つある目の内の1つに放つ。腕に装着した蓮華躑躅が目に減り込むと、目が破裂し、そして『獣神撃』の斥力の力が解放されて、その目からすさまじい衝撃となって肉塊の内部を破壊する。肉塊はその衝撃に耐えきれずに、人だったら背中の方から「パン!!」と破裂させた。


「hrslkg……」


 『獣神撃』によって中を粉々にされた肉塊が、弱弱しい奇声を放ちながら体を崩壊させていく。そこで、死骸となって残らずに消えていくその体が生物の肉体とは別物だと知ることになった。そんな間にも、徐々に肉塊は消えていき、そして残ったのは先ほどのゾンビだった。胴体が触手と一体化していた時とは違い、普通の人型を保っており、骨が剥き出しだったところにもちゃんと肉が付いていた。


「……」


 こちらへと無言で目を向けてくるゾンビ。いや……。


「これで最後……覚悟はいいかなアンドロニカス?」


「……」


 無言のまま頷くアンドロニカス。どうやら意識は戻っているようで決着を付ける意思を示す。ただし、ただでやられる訳ではなく、自身が放てる最大の魔法を使おうとしている。僕もそれに敬意を示し、佩いていた四葩と鵺を再度手にする。そこで一度、マクベスの方へと視線を向けると、マクベスは離れた場所で静かにこちらの様子を見守っていた。すると、こちらの視線に気付いたようで、僕に向けて頭を下げ、アンドロニカスのトドメを頼まれた。


「万物を切り裂く二振りの霊剣よ。その力を持って終焉をもたらせ……」


 僕がそう言うと、黒剣状態の鵺と四葩の刀身に青い閃光と紫電、それに黒雷が走り始める。そして静かにそれらを構える。対して、アンドロニカスは無数の魔法を周囲に展開させてそれを放とうとしている。


「……」


「……」


 アンドロニカスに目線を向け、攻撃を仕掛けるタイミングを計る。ただし、そう悠長にもしていられない……アンドロニカスが自身を保っていられるこの一時の間にケリを付けなければならない。別に今が勝機という訳では無い。単に……アンドロニカスの意思を尊重しているだけだ。

 

「……い、くぞ」


 何とかして声を出すアンドロニカスが展開した魔法をこちらへと放つ。無数のトルネードに大量のアイス・ランス。そして全てを燃やし尽くそうかとするたくさんの巨大な火球……そのどれもが強力であり、まともに喰らえばタダじゃすまないだろう。


「薫!」


「星光雷牙斬!!」


 構えていた2刀を渾身の力で振り抜く。刀身から放たれる巨大で3色の雷を纏った2つの斬撃が全てを飲み込み……最後にアンドロニカスに直撃する。直撃の瞬間……アンドロニカスから何か声が聞こえたような気がした。


「サンダー・ボルト!!」


「ピキィーー!!」


 すると、マクベスが突如として雷魔法を放つ。それはアンドロニカスに向けてではなく、別の方向にいた何かに向けてであり、雷魔法が直撃したその何かから悲鳴が上がる。僕はすぐさまそちらへと視線を向けると、目玉に四つの歪な羽が付いたヘンテコな生き物が、煙を上げ床に転がっていた。それが何かは分からないが……消しておいた方がいいのだろう。僕はもう一度斬撃を放つために剣を構える。


「ピキィ!!」


 すると、それの真下に魔法陣が現れて眩い閃光が起きる。すぐさま、僕は斬撃を飛ばしてその何かを阻止しようとする。その瞬間さらに魔法陣の閃光が強くなり、それと同時に斬撃がその場を通過する。


「やったのです……?」


「マクベス!」


「分かりません。斬撃によって跡形もなく消し飛んだのか……それとも逃げおおせたのか……」


「……あれは何? マクベスは知ってるんだよね?」


「分からないです。ただ……」


 マクベスはそう言って、ヘンテコな生物がいた場所に向けていた視線をこちらへと向ける。


「薫さんの攻撃と同時にアンドロニカスからアレは出てきました」


 それを聞いた僕はアンドロニカスがいた場所を見る。そこにはアンドロニカスの黒く焦げた体の一部が残っているだけだった。


 こうして、魔王アンドロニカスは討伐された。しかし……その終わりは何とも後味の悪く、まだ何か悪い事が起きそうな不安を煽るような終わり方になるのであった。

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