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414話 動き出す魔王軍

前回のあらすじ「決戦前のチョットした一時」

―泉達が王都散策を行っている同時刻「旧ユグラシル連邦第一研究所・玉座の間」シェムル視点―


「魔王様……何でローブで顔を隠したまんまなの?」


 今日の夜、今までこの建物の1室で何かをしていた魔王様が俺達四天王を招集した。ネルの話では不完全な体を、ここで完全体にするはずだったんだけど……いつもの格好で全く姿が見えない。ネルとエイルが鋭い目でこちらを見ている気がする……まあ、視線を外しているから見えていないけど。


「うむ……目覚めたばかりでな。肌が外気に触れる感覚に慣れていないため、少々、居心地悪くてな……しばらくはこのままだな」


「ふーーん……」


「魔王様……真のご復活おめでとうございます! 不肖ネル、この時をどれほど待ちわびたか……!」


「魔王様魔王様! 私も同じくです~♪ 是非とも私と2人で……きゃあ!」


 いつも通りの俺に対して、ネルとエイルは超大喜びしている。それに対して、魔王様は……上機嫌なのかな? イマイチ分からない。


「さて……いよいよ魔国ハニーラスと夜国ナイトリーフを攻め落とす事になるのだが……魔国ハニーラスで何か起きているようだな?」


「ははっ! 実は……」


 ネルは魔王様が部屋に籠っていた時にあった出来事を順序を立てて話をする。魔王様の表情はローブのせいで(うかが)い知る事は出来ないが、座っている椅子の肘掛けを指で『トントン……』と一定のリズムで叩いている所からして全く気にしていない様子である。しかし……マクベスの名前が出た所で、その音が止まった。


「……それは本当か」


「魔王様がおっしゃられていた特徴と一致しておりますので……間違いないかと」


「ふむ……なるほど。勇者の活躍の裏にはマクベスがいたのか。それならば、色々辻褄が合うな」


「と、言いますと?」


「マクベスなら、イレーレ時代の技術を使用できるからな……あちらの大陸に散らばった古代の施設の所在も知っているだろうから、それらを使って勇者達を強化したのだろう」


「なるほど……アクヌムがやられたのは、その古代技術にやられたと……」


「だろうな」


 薫達の強さ……それはマクベスとかいう奴のお陰だと推測する魔王様。しかし……果たしてそうだろうか? 薫達は強さはそれだけではなく、別の要因もあるような気がしてならない。


「魔王様! すでに敵は魔国の王都に戦力を集中させております! 如何されますか?」


「うむ……エイルの考えはどうだ?」


「敵の戦力が集中しているなら、手薄になっている拠点を襲撃し、集まった敵の戦力を分散させる方法を提案します」


「なるほど……ネルはどうだ?」


「私は王都に集結している戦力を叩くべきかと。こちらの被害も相当なものになるでしょうが、王都を陥落させることが出来れば、我々の侵略に羽振りが付くかと」


「うむ……それでだが」


「多分、ここに来るんじゃないかな……あっちの目的は魔王様を倒す事だろうし。それならここで迎え撃つのもアリだと思う」


「ふははは!!!! 見事に三者三様の意見だな! まあ……あちらも想定しているだろうがな」


 魔王様はそう言って足を組み、椅子の背もたれに背中を預ける。この後の作戦を考えているのだろう。少しの沈黙が続き、その口を開いた。


「此度はネルとシェムルの案を採用しよう。エイルの案も悪くは無いが……マクベスがいる以上、他のところに戦力を分散させるのは危険だろう」


「魔王様……マクベスというのはそこまで危険なのですか?」


「転移を妨害する結界を無視して、ここに直接転移することが出来る可能性がある者……と言えば、分かるのではないか?」


「……なるほど。寝首を搔くことが出来る相手なら、下手に戦力を分散させるのは危険かもしれませんわね」


「納得したようだな……王都への侵略はニケイルスに努めてもらう。お前達にはここに来るであろう者共の始末をしてもらうとしよう……シェムルもその方がいいだろう?」


「あ……なるほど」


 再戦したいと思っている薫が『王都の防衛』と『魔王討伐』のどちらに就くかと考えた場合、最高戦力であるアイツなら、後者の可能性が高いだろう。


「それまでは、使役している使い魔達に王都の今の状況を逐一監視。何かあれば報告させよ。ネルにはここの防衛の指示を頼む。エイルにはこの建物の周囲に罠を張る許可を出す。至急、設置するように」


 『ははー!!』と3人揃って返事をする。その後、俺達は退出して、指示された仕事をこなそうとするところで、何かを思い出した魔王様から声を掛けられる。


「すまないがニケイルスをここに来るように伝えておくれ」


「はーーい」


 俺はそのどこにいるのか分からないニケイルスの場所を探すために、使い魔達に頼んで調べてもらうのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―翌日「魔国ハニーラス・王城 会議室」―


 魔王の根城へと出発の準備を始めて、次の日のお昼頃に、リーリアさんから呼ばれて王城の会議室に来た僕たち。そこで魔王軍の状況を監視している兵士からの報告を一緒に聞いている最中である。


「魔王軍の部隊がこちらに侵攻中! その数……100万はいるかと!」


「100万!? ほぼ全戦力じゃないのよ!?」


「指揮しているのは誰か判明しているのか」


「まだ特定していませんが……現段階ではニケイルスかと」


「ニケイルスか……」


 『ニケイルス』という名前を聞いて、渋い表情を浮かべるグロッサル陛下とフロリア女王。他にもここにいる方々の多くが嫌な表情をしている。


「(リーリアさん……ニケイルスって誰?)」


「(ロロックと同じ悪魔型の魔族だ。強さはロロックと同格かそれ以上……狙った相手は徹底的に叩き潰す残忍な奴だ)」


 あのロロックと同格……そこに魔族の大軍が付いているとなると、かなり厳しい戦いになるだろう。


「ここを攻め落とす気満々ね……あちらに攻め入らずに、防衛戦に注力しましょうか」


「それもそうだな……」


 あまりの勢力に、防御に徹することを決めようとする2人。周りの臣下もそれに賛成の意見である。


「はて……そういえば、そちらはどうする気ですかね?」


 すると、嫌な笑みを浮かべて、こちらの意見を尋ねる1人の臣下。どうやら僕たちを卑しめる貴族たちの1人のようで、『魔王の居城に攻め入ると言っていたが、この状況でも言えるのか?』と馬鹿にしている所だろうか……よくまあ、こんな緊急事態でそんな考えが出来るものだ。まあ、こちらも防御に徹するべきと何人かは思っているだろうが……。


「僕は攻めるかな。多分、それが狙いだろうから」


 その発言に、グロッサル陛下とフロリア女王、そして臣下の方々が驚いた表情で僕を見る。


「敵の狙いは時間を稼いで、居城周辺の防衛を整える事。時間を与えれば与える程、こちらが攻め入るるのは難しくなる……一方、魔王アンドロニカスは安全地帯となった居城から、転移魔法で部隊を送り強襲したり、それこそ一度は世界を滅ぼした魔法で、一気に敵対勢力を一掃したり……ここにいるマクベス同等の古代の知識を有している以上、全くの不可能とは言い切れないはず……」


「防衛……そうなると、あの四天王エイルとかいう奴が仕掛けた罠がわんさか待ち受けるのか。それは面倒だな……」


「そうね……真っ向から立ち向かった訳じゃないけど、襲わせた魔獣の強さや、聖獣といわれる存在を毒で弱らせる薬の調合技術……そんな奴に時間を与えるのは愚策よね」


 僕の意見に、カーターとサキの2人が同意する。一度だけエイルと戦った事のある2人。あの時は、偶然が重なって、その強さよりお笑い芸人感が強かったが、その後の、毒を魔法で飛ばしてきたり、自身が改造した魔獣を、謎の魔石から繰り出してきたりと多彩な攻撃方法を持っており、かなりの強敵だったのは間違いない。


「ついでですが……恐らくアンドロニカスも強くなりますよ? 今は新しい体に慣れていないでしょうから、叩くのなら今の内ですかね」


 そこに、マクベスが話に加わる。その際に、グロッサル陛下の表情がムスッとした顔になっていたのだが、何か文句を言う事は無く、静かにマクベスの話を聞くことにしたのだろう。テーブルの上に両肘を付いて手を重ねる姿勢を取っていた。


「それ以外にも、魔王アンドロニカスがこれ以上の力を持つと、その配下である魔族達の力も増加します。下手すると、四天王1人でこの僕と渡り合える実力を持ってしまうかもしれないですね」


 その話に、僕はとんてもない危機感を覚える。マクベスの具体的な強さは不明だが、竜の王であるゴルドさんが警戒するような相手である。残りの四天王がその強さになられてしまっては、もう対処の仕様がないかもしれない。


「となると……『王都の防衛』と『魔王討伐』は同時にやらないといけないという訳か」


「そうなりますね」


 マクベスがそう言って、話を終える。その後、予定していた3日後の出発を明日に早まり、さらにこちらの状況を、西の大陸と地球に連絡して、物資のさらなる供給と戦力を送れないか相談することになるのであった。

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