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408話 食事会

前回のあらすじ「決戦前の一幕」

―その日の夜「魔国ハニーラス・王城 食堂」―


「なるほど……常識外れの力をお持ちという事か」


「私達より強いとなれば……マクベスに竜人、後はマグナ・フェンリルでしょうか」


「そんな奴らと知り合いって……よく仲間に引き入れられたわね」


「質問なんッスけど……こっちに竜人とマグナ・フェンリルって住んでいないんじゃないッスか。強さって分かるんッスか?」


「その血を色濃く継いでいる連中がいるのよ。私達、ヴァンパイアや魔人と同程度の強さを持つ連中がね……それの始祖が弱いわけが無いでしょ」


「へえー……」


 話し終えたフロリアさんは、ワイングラスに入った血を飲み干す。ヴァンパイアである彼女の食事はこれであり、他の物は一切不要らしい。血はどうやって手に入れているのか尋ねると、ヴァンパイアに仕えるしもべたちから採血しているそうだ。ちなみに本人たちから直接飲むのはマナーが悪いとのことだった。


「ふふ……こうやって血を飲むのは恐ろしいかしら?」


「いえ! まさか、生きているうちにこうやってヴァンパイアに会えるなんて思っていなかったので……本当に血を飲むんだなって感動しちゃって」


「あらあら! 珍しいわね……どう? 私に吸われてみる?」


「……吸われた人物がヴァンパイアになるとかあります?」


「無いわ。私達ヴァンパイアは子供が出来にくい体質だけど……繁殖方法は変わらないわ。ちなみにだけど、異世界では私達はどんな風に伝えられているのかしら」


「そうですね……後は……」


 そのまま、泉とフロリア女王の話が盛り上がっていく。血を飲んでいた姿を凝視していた泉を、最初は自分を恐れているのだと思っていたようだが、それが違うと分かると途端に年頃の女の子同士のような感じで話をしていく。今は吸血鬼のファッションなんかに話が移っており、そこにレイスとフィーロも混ざって話をしている。


「なるほど……このようにして竜人とマグナ・フェンリルを魅了したのか」


「後は、薫の作る料理ですね……マグナ・フェンリルなんてよく彼のところに遊びに来ているみたいですから」


「週1くらいで通っているみたいですからね……」


「え? シルバードラゴンのハクさんもその位だった気が……」


「はは……よく鉢合わせして、一触即発なんてよくある話だよ」


 苦笑いしながら僕はそう答える。イスペリアル国の王都の危機が週一で起きていると知ったら、コンジャク大司教はどう思うだろうな……。その都度、手料理で鎮めているんだけど。


「何か……魔族より大変な奴らを相手していないか?」


「薫は様々な王から信頼されてますからね。そんな彼らと付き合うとなると致し方ないんだと思いますよ。彼を間に挟む事で、話し合いが上手く行くなんて、よくある話ですし」


「だから、彼らが代表として来たという訳か」


「はい。一番損のない相手だと思われますので……リーリア様ならこの意味がよくお分かりかと」


「そうだな。他の代表が一癖は必ずある中、彼は無欲過ぎるからな……」


「そこまでの人畜無害だとは思ってないんだけどな」


 そんな話をしつつ、食事会が続く。こんな他愛のない話でいいのかと思うが、互いを知るという意味ではこの位のノリが一番なのだろう。そして、食事も終わりお茶を飲みながら、いよいよ本命の話になる。


「それで、そちらの作戦をお聞きしたいのだが……」


「魔王アンドロニカスの拠点に僕たちが乗り込む形を取ろうかと……それ以外は、前線の維持や僕たちに向かって来る敵の露払いをしてもらう予定です。そちらと協力したいところなのですが……私たちは魔石の気配が読めないので、とっさの時に味方か敵なのかが判別つかないずにやられる可能性があるので」


「ふむふむ……我々、魔人なら区別は付くだろうか?」


「そうですね……後は鬼人なら区別が付きます。オラインさんとも知り合いなので」


「そういえばそうだったな……第5番隊隊長である彼女も戻って来るとは思っていなかったな」


「ご家族の方もビックリされていましたね……」


 謁見の後、リーリア姫の計らいで、オラインさんの両親と面会して、預かっていた手紙を渡すことが出来た。オラインさんが無事だと知った時は酷く驚いた表情を見せ、その後、娘の手紙を読み終えると、安堵しきったお母さんがその場で泣き出し、お父さんが慰めるという事態になってしまった。


「およそ1年もいなくなっていた娘……しかも、切られた片腕だけが家に帰ってくればそうなっても仕方ないだろう。それで話を戻すが……そうなると、オラインが一番君達と合わせやすいのか」


「父上。彼らと同伴する者ですが……私とコークスも加えていただけないでしょうか」


「……しかし」


 そう言って、黙り込んでしまうグロッサル陛下。本当なら王家の務めを果たすためにリーリア姫が行くのは当然なのだろう。しかし、娘の安全を考えるとなると、この王城で後方から戦場を支援していて欲しいのだろう。


「この戦いの最後を見届ける者が必要です。そして、それは私のような王家の血筋を持つ者が相応しいでしょう。ただ、身の安全のためにオラインとコークスを同伴、後は……これから来るであろう勇者マクベスにもご同伴願おうと思います」


「それは……」


「私はいい考えだと思うわ。リーリア姫の言う通り、魔国ハニーラスか夜国ナイトリーフと深い関わりのある誰かがいかないといけないわ。仮に、こちらから誰も派遣せずに、この子達が倒して終わりましたという事態になれば、一部の貴族連中が納得しないでしょうし……」


「それはそうだが……」


 グロッサル陛下とフロリア女王がそこで意見を交わし合う。僕たちの世界のように映像や音声を記録として残す魔道具は無いため、グージャンパマでは確固たる証拠を直接持ってくるか、信頼できる人の証言が全てとなる。今回の規模になると、王家の者やそれに準ずる者が直接見聞きする必要があるのだろう。


「私からも側近の1人を同行させるわ。こちらとしてもいざという時の証人が欲しいし。私やあなたはここを指揮する必要があるでしょ?」


「それはそうだが……」


「それと……あなた達は空飛ぶ船と勇者マクベスがこちらに来たら、彼と一緒にすぐにでも魔王アンドロニカスの元へと向かうわよね?」


 フロリア女王の意見に、僕たちは頷いて返答する。本来なら時間を掛けて、しっかりとした情報を集め、それ相応の準備をこの王都で整えるべきなのだが、いつ地球に被害が出てもおかしくない状況である以上、すぐにでも行動しなければならないのだ。


「それなら、魔王の対処は彼らに頼みましょう。私達は今こちらに向かって来ている魔王軍の相手をするべきよ」


「魔王軍……こちらに向かって来てるんですか?」


「近くの街を襲った後、こちらに向かって侵攻してるそうよ。後はあなた達がここに来る間に見つけた複数の魔族のグループの位置からして、徐々に集まって来ているみたいよ……本腰を入れて、ここを攻め落とすつもりね」


「それなら……夜国の王都は平気なのです? まさかここだけを狙うなんて……」


「夜国はこのユーグラシア大陸の最北端に位置していてね。魔族の拠点からだと、移動だけに大分時間を取られてしまうんだよ。魔族で自由に空を飛べる悪魔とかが主に進攻の要になっていたのだが……」


「ここ最近、それが無いのよね……きっと、この戦いで出てくるでしょうけど」


 その2人の話を聞いて、察した僕は他の皆の表情を伺う。すると、皆も何かを察したようで『恐らくアイツらのことだよね?』と無言でも伝わって来る。


「どうしたんだ? 何か変な表情を浮かべているが……」


「いえ。ちなみにですけど……悪魔ってどれくらいの数が魔王軍にいるんですか?」


「そこまでの数はいないはずだが……確認されているのは10人ぐらいか?」


「こちらとしても同意見……で、あなた達の知っている悪魔の名前は?」


 フロリア女王がそのまま間髪をいれずに、僕たちに訊いてくる。先ほどの反応で、悪魔たちと何かしらのやり取りがあったと判断したようだ。


「私たちが知っているのは、ロロックという悪魔でして……そいつの黒い魔石はこの3人の魔道具の素材として利用していますが……」


 『ロロックもか……』と呆れた表情を浮かべるグロッサル陛下とフロリア女王。リーリア姫は知らなかったのだが、夜国ナイトリーフでは、ロロックの名前はかなり知られた名前であり、夜国ナイトリーフの王都襲撃のリーダー役だったらしい。そのため、夜国ナイトリーフでは最重要警戒人物であり、魔国では一部の人に知られている警戒人物との事だった。


「リーダー役が変わっていたから何があったのかと思っていたけど……そう言う事だったのね……」


「ロロックとつるんでいたいた連中を倒していたとは……君達がどれほどこちらの国に貢献しているのか改めて理解したよ」


 苦笑いしながら話をする2人。意外な理由で、僕たちの強さを2人に理解してもらえたようだった。その後、少しだけ話を詰めた所で、この夕食会はお開きになるのであった。

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