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401話 帰って来たアレ

前回のあらすじ「アークロス・コンドルを一網打尽!」

―夜「飛空艇1番艦シグルーン・甲板」―


 アークロス・コンドルを退けた僕たち。しかし……その後も魔獣による妨害が続いており、気付けば夜になっていた。そして現在……。


「次! どんどん弾を補充して!」


「交代です! 状況を……」


「ケガ人を下がらせて! そこ! ぼさっとしないで!」


 甲板上を行き来する多くの船員たち。それは隣を飛んでいる2番艦エルダ、3番艦ブリュンヒルデの2隻も同じで、飛空艇の横から攻めてきたナイト・イーグルの対処に追われている。


(各飛空艇は現状の配置のまま、同じ速度を維持して下さい……現在……)


「ファイヤー・アロー!」


 スピーカーから流れる現在の状況、魔石使いが魔法を使っての遠距離攻撃……甲板上は騒然としている。そして僕たちは……。


「はーーい! 夜食をお持ちしましたーー! 必要な人いますか?」


「こっち! 飲み物ちょうだい!」


「ついでに飯もくれ!」


 僕の呼びかけに答えてくれた2人の傍に近付き、アイテムボックスから夜食のおにぎりと冷たいお茶を手渡していく。


「喉カラカラだったのよ……夜になったから冷えていらないと思ってたのに……」


「全くだ。まあ……こんな高所で甲板の上を走り回って戦いをするなんて普通は無いから仕方ないだろう……」


 2人がお茶で喉を潤しながら、この戦闘の反省を行う。


「私達が前に出なくていいのです?」


「レイスの言う通りで、手助けしますよ?」


「いやいや! ここは俺達に任せて、夜食を配り終えたら君達はしっかり休んでくれ……本当にヤバくなったら叩き起こすから」


「そうそう。これは前哨戦……秘密兵器は温存する時なの。明日の朝には目的地に着いているから、安心してちょうだい」


「ということで……お休みなさいだ。いい夢見ろよ」


 そう言って、2人が再び武器を構えて次の襲撃に備える。その状態で片手を上げて『じゃあね』と手振りでこちらに伝える。僕たちもこれ以上は邪魔になるので、別の夜食が必要な人たちを探し始める。


 今、ここにいる人たちはビシャータテア王国の騎士団の人たちとレルンティシア国の軍人たちの混合部隊である。他の飛空艇も2、3ヶ国の軍人や騎士団の部隊でまとめた混合部隊になっており、またいざという時のために切り札であるゴールドドラゴンのペクニアさんが3番艦ブリュンヒルデで待機している。


「こっちお願いしまーーす!」


「はーい!」


「どうぞなのです!」


「こっちにも!」


 甲板上を移動しながら呼びかけると、船員の人たちからすぐに注文が入り、近くにいる人から手当たり次第に配っていく。その間にも1度襲撃が起こるが、船員たちの手によって飛空艇に近付くことなく全滅させていく。


 1人が甲板上に取り付けられた機関銃を使って、飛んでくる魔獣の群れを蹴散らしていると、別の場所では魔石使いがアイス・ランスで魔獣の群れの統率を乱したりと、銃撃と魔法の集中砲火を浴びせていく。


「持って来た分が無くなったので、撤収しまーす!」


「了解!! ゆっくり休んでくださいね!」


 船内に戻る前に、一声掛けたらそんな返事を1人の船員からされてしまう。もう少しだけ、手伝うつもりだったが……これ以上は、逆に彼らに失礼に値するだろう。


「今日はこれでお仕舞いだね」


「皆が戦っているのに、何か悪い気がするのです」


「気にしなくていいと思うよ。ほら」


 レイスと会話をしながら船内の廊下を歩いていると、明らかに戦闘向けの格好では無く、少しリラックスした服装の隊員が、僕たちに挨拶をしてから横を通り過ぎていった。


「ああやって、適度に交代していくはずだから……魔獣がどれだけ襲撃するか分からないけど、一晩中、常に襲撃し続けるというのも無理だろうし……うん?」


 ふと、ある事に気付く。あの魔獣たちはどうやってここに目掛けて来ているのだろう? 魔獣の持つセンサーで、飛空艇の魔力を捉えているという可能性もあるが……それにしても多い気がする。


「魔獣の襲撃は常に一定方向……魔国ハニーラスのある東の大陸から……」


 魔獣たちは飛空艇の前方からやって来ている。つまり、東の大陸から真っ直ぐここに向かって飛んできている事になる。


「レイス。一度、操舵室に行っていい?」


「大丈夫なのです」


 僕たちは自室へと行く足を操舵室に向ける。あの魔獣を誘導する何か……どこかで僕たちを監視する奴がいて、そいつが誘導している。それとも、3隻の飛空艇に何かしらの誘導装置みたいな魔道具が取り付けられているか、魔獣が飛空艇内の何かを察知するように改造を受けているか……。


「その3つかな……」


「考えはまとまったのです?」


「うん。やっぱり気になる事があるから、少しだけ相談してからかな」


 操舵室の前にやって来た僕たちは、そのまま室内へと入っていく。中では船員が慌ただしく働いており、その中央でカイトさんとミリーさんが持って来たパソコンのディスプレイと睨めっこして何か話していた。


「何かありました?」


「ああ……薫とレイスね。そっちこそどうかしたのかしら?」


「薫が襲って来る魔獣について、チョット気になることがあるから話をしたいそうなのです」


「気になる事……それって魔獣がこの飛空艇をどうやって捉えているかの事かな?」


 カイトさんが僕の気になっていた事をピンポイントで当てる。僕は頷いて、自分の考えていた内容を話する。


「……うん。僕も同意見だ! いくら何でも都合よすぎなんだよね……見てくれ」


 カイトさんはそう言って、僕たちに2人が先ほどまで見ていたディスプレイを見せてくれる。そこに映っていたのは、グージャンパマの世界地図、そしてこの飛空艇がどの辺りを飛んでいるのかを赤い点で表示された物だった。それ以外にも、速度計や方角、現在の風向などなども地図の端に映し出されていた。


「現在、この飛空艇は西の大陸を出発して、この大海原の中間ほどに位置している。で、魔獣達は東の大陸から次々にやって来ている……この星は地球より小さいとはいえ、それでも広大な大海原で遭遇するのは困難のはずなんだ。すなわち……何かしらの仕掛けがある」


「何か見つかりましたか?」


「うーーん……これといった物はまだだね。最初に来たアークロス・コンドルから、それらしいのは見つかっていなくてね……今、各艦に指示を出して、船内に不審物が無いかを……」


「カイトさん! 2番艦から通信があり謎の装置を発見したそうです!」


 そこにタイミングよく発見の知らせが入って来る。発見したのは3番艦にいるペクニアさんで、2番艦から微弱な魔力を察知し、ペクニアさんが3番艦の甲板から2番艦の船底を確認すると、それらしい物があったそうだ。


「よし……そうしたら、すぐにでもその不審物を……」


「失礼する」


 すると、ペクニアさんが右手に謎の魔道具を手に持ち操舵室にやって来る。恐らく、それが発見された不審物なのだろう。見た目は、水晶の玉とそれを固定する土台。そしてその土台の足は吸盤のような物が付いていた。


「これが船の底に付いていた。今も稼働中だ」


「ありがとう。壊さずに持って来てくれて助かるよ!」


 カイトさんは、ペクニアさんからその魔道具を受け取って、その構造を確認していく。


「ちなみになんだが……ペクニアさんはこの魔道具から、不審な魔力以外にも何か感じる物があるかい?」


「いや、無い。それだけだ」


「そうか……うーーん……」


 ペクニアさんへの質問が終わると、再度、魔道具の確認に戻るカイトさん。


「魔力による感知……それとも特定の周波数……いや、こちらにそんな知識が無いとすれば音とか……」


「壊さないのか?」


「ペクニアさんの言う通りなのです。これが魔獣を引き付けているなら、すぐにでも壊すべきなのです」


 すると、黙ってカイトさんの様子を見ていたペクニアさんとレイスの2人から壊すべきじゃないかと話が出る。それが一番手っ取り早い方法ではある……が。


「ここは有効活用だよ。カイトさんもそうですよね?」


「そうだね。これが魔獣を誘導しているというなら、これを全く関係の無い場所に移動させたら……でも、もう少しだけ調べていたい……」


「さっさとやる! そんなのどうせ魔王の拠点にいくつか残ってるでしょうが!」


「はい! すぐ持ってきます!」


 ミリーさんに尻を叩かれたカイトさんは、魔道具を持って操舵室を後にする。それから数分後、カイトさんは魔道具の他に手にアタッシュケースのような物を持って戻って来て、アタッシュケースを近くにあった台の上に乗せてからケースを開ける。その中に入っていたのはドローンであり、怪しい魔道具をそのドローンにくっつけてしまった。


「ふふ……魔石のエネルギーで動く最新のドローン。最高速度、旋回能力……どれもパワーアップして帰って来たよ!」


 そう言って、僕たちに笑顔を見せるカイトさんなのであった。

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