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39話 社長。異世界に行く。

前回のあらすじ「色々あった」

―「薫宅・庭」―


「やあ!」


「おはようございます。今日はよろしくお願いします」


「2人ともおはよう。で、榊さんも含めた3人が行くってことでいいのかな?」


「ああ。もう少しで来ると思うんだが……来たな」


 2人と話をしていると車が一台敷地内に入ってきて、僕たちの前に停まる。


「皆さんおはようございます! それで車ここに置いて大丈夫ですか?」


「そこで大丈夫ですよ」


 車のエンジンを止めて、出てきた人物は榊 竜也さん。歳は35歳で直哉の会社の従業員である。他の従業員からも信頼の厚い人。役職とかは無いが副社長的なポジションと言っても過言では無い人物である。


「よいしょっと」


 榊さんが後部座席からショルダバックにカメラと撮影機材を出していく。


「カメラですか?」


「ええ。今回は色々記憶しといた方がいいと思ってバッテリーと予備のカメラを持ってきたんですよ」


「榊さん。カメラでの撮影よろしくお願いします」


「任せといて下さい紗江さん。映して欲しい物があったら言ってもらえれば撮りますから」


「うんうん。そしたら後はこれも運ぶとするか! 薫! 君のアイテムボックスというやつにこれを入れてくれないか?」


 ワゴン車のトランク回り何があるか確認する。それは今回、王様に事前に頼まれていた物である。


「もちろんいいよ。榊さんもどうですか?」


「それなら大丈夫です。むしろこうやって背負いながら撮影しているのが落ち着くので」


「必要なら言って下さいね」


「分かりました」


 それならと直哉の持ってきたそれだけをアイテムボックスに収納する。


「不思議ですね。これ購入できないですかね? 我が社にとって大変有益なんですが……」


「そうですね。これがあれば重たい荷物を短時間で速やかに運べますし……社長の意味不明な発明品も……」


「2人とも酷いな!」


「そう思うなら、自粛して下さい。全く……」


「おはようございます」


 玄関からレイスが飛んでくる。


「おはようございます。意外と力があるんですね。開き戸を1人で開け閉めできるなんて」


「そうなのですか? 皆、普通にやっていますよ?」


「確かに普通に引き戸も開けたりしていたから、僕としてはそれが普通になっていたかも」


「あの……これも魔法ですかね?」


「あ、それとは別です」


 魔法が使えなかった時のレイスを見ていたので分かる。なんせ自分より大きい道具を持ち上げて興味津々で眺めていたのだから。ゲームのコントローラーやらリモコンやらケトルとか……。


「人は見た目によらずとはこのことですね」


「おかげ様でリフォームせずに済んで良かったんだけどね」


「そうなんですね。あ、榊さんさっそくですがカメラを回して下さい」


「そうですね。精霊とコミュニケーションを取るなんて、これまでに無かったこと。ちゃんと撮影しときましょう」


「薫? あれって何なのです?」


「あれはカメラだよ。でも写真を撮るためじゃなくて、テレビみたいに動画を撮るため用のビデオカメラっていうものなんだけどね」


「その言い方は少し古いですね。これだとデジタルビデオカメラですね。今じゃビデオじゃなくてハードディスクやSDメモリーとかに保存しますから」


「ビデオ? ディスク?」


「ああ、そちらだとこのような機械は無いんでしたね。そうですね……カメラをペンと例えたら、ビデオやディスクは本だと思ってくれればいいですかね……それでディスクの方がビデオより沢山の絵が描けて、しかも持ち運びしやすいと思ってくれればいいかと」


「うーん……なんとなくですけど分かりました」


「まあ、詳しい事は追々知っていってもらえればと……それじゃあ、撮っていきますよ」


 そう言って、榊さんがレイスにカメラを向ける。すると、カメラを向けられたレイスはその体を強張らせてしまった。


「……なんか緊張するのです」


「気にしなくて大丈夫ですよ。自然な状態でいてもらえれば構いません」


「わ、分かりました。でもなんか意識しちゃいますね」


「それなら、2人でカメラに向かってポーズしてみませんか? こう……基本のピースマークで私も記念になりますし」


「君。ただ記念に撮りたいだけでしょ?」


「はい」


 直哉の問いに紗江さんが素直に答える。


「ははは……それなら」


 レイスが紗江さんの近くに行き、カメラに向かってポーズを撮る。


「撮れてますか」


「ええ。大丈夫です」


「後で私にデータを下さいね。SNSに……」


「載せないでくださいね!?」


 情報漏洩ダメ、禁止。作り物って思われてバレることは無いかもしれないけど止めて欲しい。


「冗談ですよ♪」


「なあ~。早く行きたいのだが……」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「薫宅・蔵」―


「おお~。これは」


「こんなものが身近にあったんですね……」


 榊さんがカメラを向けて魔法陣の撮影をする。


「これが異世界への扉か……ワクワクするな!」


「それじゃあ、魔法陣の中に入って下さいなのです」


「うむ。よろしく頼む。魔法少女、薫」


「直哉はお留守番かな?」


「おいおい。いつもの冗談じゃないか!」


「全く……じゃあ、いくよ!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「カーター邸宅・庭」―


「綺麗ですね……」


「おお。あの蔵からこんな場所に繋がるなんて……凄い! 実に魔法という物に興味を魅かれるな!」


「凄いですね~。しかもこんな寒空の中でこんな色とりどりの花が咲いているなんて。撮る側からして映えていいです」


「この花ローゼリウスっていう名前らしいですよ。通年で花が咲いていて薬草にも使えるそうです」


「……薫。サンプリングしていいかな?」


「この庭の所有者に聞いてよ。目の前にいるから」


 こちらに鎧を着たカーターたちがやってくる。


「すっ、凄いイケメンですね……!!」


「泉も同じような事を言っていたよ」


「おはよう。薫。レイス。そして、ようこそおいで下さいました異世界のお客人。ここからは私たちが城までご案内致します。この国の騎士団の副隊長のカーターといいます。こちらは相棒のサキです」


 カーターとサキの2人が胸に手を当てて、直哉たちに挨拶をする。


「く、楠木 紗江です。よろしくお願いします」


「笹木クリエイティブカンパニー社長、笹木 直哉だ。よろしく頼む!」


「その会社の従業員の榊 竜也です。よろしくお願いします。精霊が相棒という事はあなたも魔法使いで?」


「はい。とはいってもすっかり薫たちに追い抜かれてしまいましたがね」


「そうね」


 2人がこちらを見てくる。いやいや、そっちの方が魔法使いの先輩だからね?


「ああ……君。また何かやらかしたのか?」


「さも当然のように言わないでくれないかな?」


「じゃあ、こちらで何を?」


「最近だと、ワイバーンを……えーと。泉の言葉を借りるとメテオを使ったかしら」


「……」


「薫さん……」


「まさか、隕石を降らせるとは……」


「上空から持ち込んだ巨石を相手に落としただけだからね? 決して、宇宙からとかじゃないからね?」


「それでも、大惨事なのでは……?」


「馬車を待たせているので中で話しましょうか。立ち話もなんですから」


「それじゃあ、君が何をやらかしたか聞くとしようか……」


 何で異世界同士の情報交流じゃなくて、僕の異世界での活動を聞こうとするのだろう? そう思いながら馬車に向かうのだが……。


「カシーさんは?」


「……シーエが止めた」


「なるほどなのです」


 シーエさん……お疲れ様です。するとカーターが近づいて顔を近づかせて小声で話す。


「(薫。レイス。いざという時は頼む)」


「(分かった。打ち合わせ通りね)」


「(なのです)」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「馬車」―


 馬車はカーターの家を出て、街中を走っていく。


「まさに、中世ヨーロッパの街中ですな」


 榊さんがカメラを回しながら、車窓越しに撮影をする。


「でも近代になって出来た街灯があったり、人が武器を持っていたり、それと多種多様な種族が歩いているので異世界感が半端ないですけどね。あ、あの羊の獣人でしょうか? モフモフしてそう……触りたい」


「やっぱり凄いな。こんな世界あるわけが無いと思ていたが……過去の自分に注意したいぐらいだ」


「いや。それは私達3人同じだと思いますよ。こう撮影しながら見ていますが、まだ夢の世界に迷い込んでるのではと錯覚を覚えるぐらいですから」


「あ、あのエルフの人。キトンを着てる! 凄いですね。本当にお伽噺みたいです」


「あれはそちらの世界から来たわよ」


「「「え?」」」


 そう言ってサキがこちらに目線を変える。いや、見ないで欲しいんだけど。


「薫……やっぱり君、女としての自覚が……」


「しょうがないですよね。これだけの美人ならきっとキトンも似合っていたでしょうね」


「女神と崇められたからな……」


「崇拝されている!!?? いや、まさかそこまでとは……」


「事故だから」


「なんで事故でキトンを……ああ。先ほどのワイバーンの時に服が破けて着ることになったって所か……」


「その通りなのです。良く分かりましたね?」


「なんとなくだがな。こいつとは小さい頃からの付き合いでな。この中では一番長いぞ」


「直哉とは幼稚園の頃からの付き合いだからね」


「そもそも君がいい加減に諦めて、女として生きれば問題解決なんじゃないか?」


「い・や・だ!」


「そうやって怒るところが女性らしいですね」


「分かるわ。これで天然なんだもの。時々、女性扱いしてしまうわ」


「僕、男なんだけどな」


「諦めろ。それとアレが目的の城か?」


 走っていると、目の前にお城が見えてきた。そして馬車は城門をくぐっていく。


「あれ? なんか、赤い髪をした女性が立っていらっしゃいますね?」


「どこか喜々していますね?」


「「「「ああ……」」」」


 カシーさんすでに復活していたか……。

0話~38話まで以下の点を変更しました。


・場所や時間の説明

・ストーリーの追加(特に28話)と一部表記の変更

・薫の髪の色(黒から亜麻色へ)


今後、変更する場合は前書きか後書きで事前にお知らせします。

これからもご愛読の程よろしくお願いします。

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